整理回収機構の買取価格

改正金融再生法成立

債権回収機構(RCC)の機能拡充を盛り込んだ改正金融再生法が成立した。主な内容は、

  • 回収機構は不良債権を現行より高めの「時価」で買い取れるようになる
  • 回収機構の買取入札への参加を認める
  • 回収機構の購入債権のうち、再生可能な債務者については「速やかな再生に努めることを明記
  • 弁護士、公認会計士などで構成する「企業再生検討委員会」を設置。 再生が決まった企業には、同機構が債権放棄、支援先企業への企業合併・買収(M&A)の仲介などをする
  • 購入債権について「可能な限り3年をメド」に処分することを規定

時価の買取

時価の定義は、曖昧、抽象的であるが、要約すると債務者の状況から判断して一定期間のキャッシュフローからの弁済が見込まれる債権については、一般に時価を算出する際に行なわれている手法と同様に、将来期待されるキャッシュフローを予測し、その総額の内弁済充当相当額を一定の割引率を用いて現在価値に割り戻す手法(ディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法=以下「DCF法」という)により価格算定を行なう。

つまり金融庁は賃料収入などキャッシュフロー(現金収支)をもとに適正な価格を導く収益還元法を導入する方針。債権流動化市場で普及しているというのが理由だが、将来見通しを織り込んだ予測利用価値判断は高度なノウハウを要する。

これまでの価格算定方法は先ず、不良債権の不動産担保を不動産鑑定士が評価。これを40%引き、さらに暴力団関係者が不法占拠した土地などは最大35%引く。債権1件ごとに損失が発生しないようにして、国民負担を回避する狙いだ。

回収機構による不良債権の買い取り価格は現在、債権簿価の4%程度。公的資金に損失が発生しないようにするためだが、反対に銀行は売却時の損失が大きくなるため、買い取り制度の活用が進まない一因にもなっていた。また回収機構が不良債権をまとめて買い取る際の価格は債権元本の3~5%で10~20%とされる買い取り価格の相場と比べ「著しく低い」との不満が銀行界に強かった。

銀行に不良債権最終処理を促すため、回収機構による買い取り価格を引き上げようとすると国民負担が増える可能性が出てくる。逆に国民負担を回避しようと買い取り価格を安く抑えれば、最終処理が進まないというジレンマを抱えていた。
 
改正法後は、個々の債権を値決めせずに、複数の債権をまとめて売る「バルクセール」も可能になる。「買い取りか買う次第では活用できる」(都市銀行)との声もある。銀行は外資へのバルクセールに加え回収機構への売却という選択肢も増える。 

簿価の買取への動き

時価買取では不良債権処理がそれほど進まないため実質簿価での買取に変更しようという動きが出ている。

  1. 簿価買取案は、回収機構の鬼追明夫社長が自民党の山崎拓幹事長に示したことから始まった。鬼追氏によると改正金融再生法による時価買取では不良債権処理がそれほど進まないという認識から実質簿価での買取を軸とするRCC試案を山崎氏に示した。例えば不良債権100億円を買い取る場合、引当金を15億円積んであれば85億円で買い取る。買い取り資金は預金保険機構の金融再生勘定から賄う。同勘定は政府保証による借り入れ十兆円が原資となっており、実質的な公的資金の投入となる。回収機構は企業再生を支援したり担保不動産を処分したりして85億円全額の回収をめざすが、仮に50億円しか回収できなかった場合、35億円は損失になる。その一部は回収機構が負担するので公的資金に損失が発生する。実質的な簿価で買い取る場合、銀行は相対的に軽い負担で不良債権を試算から切り離される。しかしこの試案は国民負担の増大の可能性を理由に見送られた
  2. 今年にはいり、2月19日与党3幹事長はRCCによる不良債権の買取を現在の時価から実質簿価に変更する制度改正を検討していくことで一致した。実質簿価は銀行が積んでいる貸し倒れ引当金を債権額から差し引いた価格で時価に比べ高額になるため不良債権処理が加速する効果がある。買取後に発生する二次損失を誰が負担するかという調整課題については二次損失の処理は当該銀行が負担するという案が浮上した
  3. 2月21日小泉総理は記者団に「時価買取が基本だ。法律もそうなっている」と慎重姿勢を示し、与党3幹事長が求めている実質簿価方式への移行は見送られる見通しになった

以上が現在までの動きである。

元米連邦預金保険公社(FDIC)総裁のウィリアム・シードマン氏は24日、都内で日本経済新聞記者と会い、「銀行から不良債権を簿価で買い取るのは非常に悪いアイデアだ」と批判した。まず銀行は引き当ての積み増しをしなくなる。なぜなら引き当てが低くても簿価で買い取ってもらえるからだ。第2に、これは銀行に反対して裏口から補助金を与える道につながる。そうではなく、当該債権のキャッシュフローを基に推計される市場価格で買い取るべきだ。さらに大事な点は、機構の役割を債権回収機構から、買い取った資産を民間に売却する機関に改組する点だ。売却に際しては、企業再生の機能を身につける必要がある。買い取りと同時に、整理回収機構が迅速に売却する機関となれば、民間機関や市場の協力を得て、処理を促すことができる」とコメントした。
 
いずれにしても二次損失に公的資金を投与し国民負担の増大は避けねばならない。メインバンクと債務者企業とが容易に身動きの取れない状態にあるとか、法的整理の結果、失業難を避けたいなどの市場以外の事情が少なくない。不良債権処理は金融再生、産業構造改革が進行し、雇用問題が改善しないとなかなか進行しない。これは整理回収機構の外部問題であるが、整理回収機構内部において債務者企業を再生する能力は、今のRCCに不足している。この面での人材強化などがコスト要因なら、コスト削減のために、再生機能は民間に委託するアウトソーシング型などを検討する必要がある。

■関連記事
  多くの問題を抱える産業再生機構