土地の有効利用 / 事業受託方式活用のポイント

●事業受託方式とは

土地所有者が、自分の所有地を有効利用することを考えた場合、例えば自らが事業主となって賃貸マンションを建てようとしても建築計画、建物の企画、設計、建築工事の監理、竣工に加え事業資金の調達、業者の選定、テナントの募集、完成後の管理などすべて自分でしなければならず、事業経験のない個人などの場合、多大なリスクを負う可能性があります。

事業受託方式とは、こうした事業計画から運営・管理までをすべて専門業者(コンサルタント、デベロッパー等)が総合的に企画を請け負い、専門家集団のノウハウを活用していく方法です。

●事業受託方式の代表的事業手法

事業受託方式の事業手法は各種ありますが代表的手法としては以下の2手法があります。

  1. 総合受託方式
  2. 事業主からコンサルタント、デベロッパーが企画、建築、管理まで一括して引き受け、各業務を設計事務所、建設会社、管理会社などに発注、委託する方式

  3. 総合企画方式
  4. コンサルタント、デベロッパーは総合企画のみ受託し、コーディネーターとして事業主をサポートする方式

●事業受託方式による節税効果

①所得税効果

事業受託方式で建物を建築し、当該建物を賃貸した場合、所得は家賃等の収入から必要経費等を控除し計算される。必要経費等は、維持修繕費、当該不動産の公租公課、火災保険料、支払利息、減価償却費等からなる。初期の段階において不動産事業は投資金額が大きいため、一般に支払利息、減価償却費が多額になるので税務計算上は損失を生じることになるが、減価償却費は実際の支払いを伴う費用でないため資金が不足するということには必ずしもならない。個人で他の所得がある場合は、不動産事業による損失は他の所得との損益通算によって、全体としての税金を減らす効果がある。個人の所得税は、超過累進税率になっているので、所得が多いほど損益通算による所得税節税メリットが大きい。

②相続税対策

土地に建築された建物を賃貸することによって自用地に比べ貸家建付地となり評価額が下がる。小規模宅地の特例を適用した場合には、大幅に土地の相続税評価額を引き下げることができる。また、建物の相続時における課税価格となる固定資産税評価額は、その程度は地域差があるが一般には現実の建築費より低額で評価されている。さらに、その建物を賃貸した場合には借家権割合相当分を控除されるので、建物の相続税評価額は実際の建築費よりも相当低い金額になる。それに対して、建築資金を借り入れた場合の借入金残額は、そのままの金額を相続財産の価格から債務控除することができる。以上の諸点から有効な相続税対策となる。

●事業受託方式活用上の留意点

開発事業は、コンサルタント、デベロッパーのほうで行ってくれるため専門知識を有していない場合でも有効活用がはかれるが、コンサルタントなどの資質などで事業のパフォーマンスが変わってくるので事業家として留意すべき点を以下に述べる。

①周辺の賃料水準よりみて事業化が可能か

事業収支は、投下する建築費などの総額と賃料の収支バランスで決まります。オーナーとしての見込み賃料があっても周辺賃料水準と乖離した額では事業として成立しません。市場調査、周辺環境調査などを十分に検討したうえで、事業フレームを検証する必要があります。

②有効利用形態の検討

賃貸ビジネスとして土地を有効利用できるものは何か。運営までも含めて、オフィスビル、マンション、商業施設、スポーツ施設など下表の特性などを考慮しプランを検討することが必要です。必要に応じ設計事務所・デザイン事務所・不動産鑑定士・税理士・ゼネコン・コンサルティング会社・店舗開発会社・管理会社・メンテナンス会社等の意見を参考にするべきでしょう。

③事業収支の具体的検証

建築しての不動産賃貸事業は通常10年以上になるため①の設定賃料の可能性、賃料改定の期間、上昇率、空室率を考慮にいれた稼働率、借入金の相対比率と金利、諸経費などで事業収支、借入金の返済などを様々にシュミレーションしてみることが必要です。この場合、無理な設定条件を排除し、できるだけ保守的観点から検証することが重要です。

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