中古住宅流通活性化に向けた政府の重点施策

政府による従来の住宅供給政策は新規の建設による住宅供給に偏っていたため、01年に入り中古住宅市場の整備拡充を重点施策として打ち出している。国土交通省は居住環境の早期向上は既存住宅を有効に活用することと判断、加えて耐震性の劣る住宅修繕も急務になっているため中古住宅とリフォーム市場の整備を今後の住宅供給の柱と位置けた。

●国土交通省による02年度実施予定の具体施策

①中古住宅の性能評価制度導入

購入希望者が1件2~4万円程度の料金を支払って床や壁、設備の手入れ具合などの点検を利害関係のない検査人に依頼する仕組み。検査人は国家資格にしないが国が指定した研修を義務付ける予定。一級建築士、不動産鑑定士、土地家屋調査士などの参入を予定している。耐震性、耐久性を評価依頼し中古住宅購入の判断材料とする。この制度の導入は耐用年数を一律に建築後の経過年数で単純計算されていた中古住宅の建物価格の適正化に寄与すると期待される。

②マンションの維持管理に関する履歴情報の登録制度の導入

中古マンションの管理組合が過去の修繕実施状況などを第三者機関に登録し購入予定者に情報開示

③リフォーム市場の活性化に向けたインターネットの活用

リフォーム工事の場合、工事依頼者に工事の内容が不明確、業者選択の基準や情報が少ないなどの不満が多かったため代表的リフォーム工事や標準的費用の理解を深めるための情報開示、高齢者に対応する修繕の内容、費用などの情報もネット開示する。

民間サイドの動向として住宅メーカー各社は過去の建築データベースを整備し、リフォーム需要の拡大を目指す。大手住宅会社は修繕、定期点検などの履歴をデータとして保有し、再販の際は自社の仲介販売ネットでこれらをポイントとして建物価格に加算するなどの建物のライフサイクルに応じた中長期的ビジネス戦略をたてている。マンション各社は今後、少子化などの社会構造変化により新築需要増が見込まれないため、グループ会社などと老朽化したマンションのリフォーム需要の獲得などにつながるマンション管理業務を強化している。

野村不動産は分譲マンションのアフターサービスを強化し大規模な改修に対応するため6月に本社内に専門部署を新設したほか、長谷工コミュニティは受注で攻勢をかけるため審査機関からマンション管理業務や改修工事にかかわる品質保証の認証を取得している(日本経済新聞)。

●法務省によるマンション管理組合の要件緩和、建替え要件緩和

法務省もマンションの維持管理を充実させる方策としてマンション住人で構成する管理組合の法人格取得要件緩和を検討中だ。分譲マンションは最近、1~2階建てのテラス形式など多様化しており30人未満の管理組合が増加していることが背景にある。現行の30人以上という要件を改め2人以上にする案が有力である。法人化の利点は管理組合と個人の権利義務が明確になるため不要なトラブルを避けられ、建替えの際に金融機関からの融資や、修繕の際に工事業者の信用が得られやすい。

法制審議会は高度成長期に建てられたマンションの老朽化の進行により建替え要件緩和を検討中だ。現行法による5分の4以上の区分所有者の決議がネックで同意が得がたいためこの要件も引き下げる方針だ。これらを盛り込んだ区分所有法全体像を示す中間試案を02年3月頃提示予定である。

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