軟弱地盤と建物不同沈下

建物の不同沈下はなぜ起きるのか、例えば、産炭地では、石炭採掘の坑道が地下に縦横に張り巡らされており、広範囲にわたり地表の農地や家屋などに様々な地盤沈下などの鉱害を発生させている。また造成団地が軟弱地盤上にあって現に複数の家が建っており、各家が不同沈下しているのが外観で明確に認識できる場合もある。雛段式の造成で切土と盛土が交錯して存在するため盛土部分の区画上の家が不同沈下した例もある。

1、建物の不同沈下

福岡県内では上記のような事例が多いため、家の新築などの際は、地盤面の検証がより重要となる。軟弱地盤上の建物に見られる不同沈下は、本来、水平・垂直を保たれている建物の構造材が、不同沈下によってバランスを崩し平行四辺形や台形状に歪み、その結果、一ヵ所に荷重が集中して一方向に斜めに傾くという状態になることである。不同沈下の建物に与える損傷、劣化は大きい。念願のマイホームが傾いたら施主は耐えられない深刻な事態となる。

建物が不同沈下している時は、日常生活で以下の兆候が発生する。

  • 窓から雨が吹き込む
  • モルタル外壁・コンクリート犬走り、ブロック塀や基礎に亀裂が入る
  • ドアやサッシの鍵が掛けられない
  • 気密性が失われてエアコンの効きが悪くなる
  • 床鳴りがし、畳がくぼむ
  • 柱が傾き、床が傾斜して支障を生じる
  • 球体が床を転がる
  • 寝ている姿勢が不自然になる

建物の耐用年数は、雨仕舞いなど防水性能が悪化するため躯体が腐食しやすくなり相当の悪影響を受ける。不同沈下が進むと柱の傾斜が著しくなり終には倒壊の危険性がでてくる。

2、軟弱地盤

建物の不同沈下を起こす軟弱地盤を土地購入前に見分け、調査する方法や軟弱地盤対策は以下になる。

  1. 軟弱地盤の判別
  2. 軟弱地盤には以下のような類型がある。

    • 自然に形成された軟弱地盤
    • いわゆる低地がこれに該当する。低地はその地形的特性から雨水や地下水が自然に集結し易い。雨水は微粒泥を背後からを運び堆積させ軟弱層を形成する。地図を見て水路、川、池の付近であればこの低地に該当し、軟弱地盤であることが多いため要注意である。また地名から低地を判別することも可能だ。泉、谷、池、流、田などは低地に該当する場合がある。

    • 人工的に形成された軟弱地盤

    例えば切土、盛土が精度が悪くなされた造成地、盛土地、擁壁裏の埋め戻しが不十分な土地、埋設物除去後の埋め戻しが不十分な土地などがこれに該当する。埋め戻しに腐敗分解する有機物(紙、布切れ、木片、木の葉など)やコンクリートブロック、塩ビパイプ、空缶などの穴や空隙のあるものを使用し後日土砂が目減りし沈下する例もある。

  3. 軟弱地盤の調査
  4. 戸建住宅で最も広く行なわれているのがスウェーデン式サウンディング試験(SS式試験)である(住宅建築会社が見積書に地盤調査と記載しているのがこの試験)。地面に鉄の棒(ロッド)を突き立て、重りを乗せたり、回転させたりして地中に貫入させ、ねじ状になった先端部を回転させながら押し込んで、そのときの半回転数(Nsw)を測定することで地盤の強弱を判定する。本来、支持層を見つけられる地盤調査はボーリング標準貫入試験とされているが、費用が高く調査に広いスペースを要するため戸建住宅には適していない。スウェーデン式サウンディング試験では地盤を断定的に判定できないため不同沈下に対する安全性は業者判断にある部分なってしまう。

  5. 軟弱地盤対策
  • 布基礎・ベタ基礎
  • 良好地盤の場合(地盤調査判定で1㎡当たり5トン以上まで「地耐力」がある場合)、標準の布基礎を使う。やや軟弱な地盤の場合(3トン以上5トン未満)、基礎形状を変える必要がある。この場合、布基礎の裾を広げることで沈下を防ぐ。つまり、基礎が地盤と接する面積を大きくすることで荷重を分散する。軟弱地盤の場合(2~3トンまで)、床下全面にコンクリートを打つベタ基礎にして不同沈下を均等化させる。ベタ基礎は、沈下が起きた場合、それを修正するように均等に沈むため、不同沈下にはなりにくい。

  • 地盤改良
  • 軟弱な度合いが大きい場合(地耐力1㎡当たり2トン以下)、地盤を固める地盤改良を行う。戸建住宅の場合、セメント系固化材による混合撹拌工法が多い。柱状改良工法とも呼ばれる。

  • 杭基礎

軟弱層が厚く8mを超える場合や敷地の状況によっては小口径鋼管杭打設工法を用いる。ボーリング試験で地中深くにある頑丈な地盤(支持層)を見つけ、そこまで杭を打ち込んでその上に建物を構築する。支持層が相当深い場合、技術的、費用的に難しくなる。

3、不同沈下した場合の修正工事など

沈下した場合の修正工事として一般的に鋼管杭圧入工法が用いられる。建物の荷重を反力に鋼管杭を支持地盤までジャッキを使って圧入し、建物全体を支持させ修正する工法で、連動式油圧ジャッキと手動ジャッキを併用してジャッキアップし建物全体を元の状態に修正する。

以上、軟弱地盤とそれによりもたらされる建物の不同沈下につき述べたが、もたらされる被害が予想外の多額の費用負担となる割には、一般の土地購入者の知識が乏しいのが現状である。建築費の交渉の際、業者によつてはこの地盤調査を削るケースもあり恐ろしい限りである。間取りやデザインに関心がいきがちだが足元の敷地地盤をよく調べてみることが肝心だ。

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