境界確認・確定と地積測量図の精度

境界確認・確定で法務局に法14条地図がないときは、一筆ごとに測量された地積測量図が重要な資料となる。地積測量図は、法14条地図と同等かそれ以上の現地特定能力を持つ実測図面ということになっている。しかし後述するが作成された年次によって測量精度や特定能力にバラツキがあるため、過信は禁物である。

地積測量図は、土地の表題登記、地積変更、地積更正登記、分筆登記、地図または地図に準ずる図面等訂正の申請をする時に登記所へ提出され、登記後は登記所に備え付けられる。

地積測量図は一筆の土地ごとに作成される。適正な立会人により境界確認作業が行われ、境界標を埋設し、何らかの事情で境界標が不明になったとしても現地復元ができる手当てがなされるといったプロセスを経て作成される。境界標は、①材質が石、コンクリート、合成樹脂または不銹鉄等の耐久性があって永続性を有するもの、②埋設状況、埋設方法も容易に移動できない不動性がある、などが求められる。

地積測量図に記載される事項として、

  1. 地番区域の名称
  2. 方位
  3. 縮尺(原則として250分の1)
  4. 地番
  5. 地積及び求積方法
  6. 筆界点間の距離
  7. 基本三角点等に基づく測量の成果による筆界点の座標値
  8. 境界標があるときは境界標の表示

がある。

法14条地図に備わる「現地復元能力」は、地積測量図にも求められる。例えば分筆登記申請のため地積測量図を作成するとき、平成5年の不動産登記法改正で付近に基本三角点がない等のときは、近傍の恒久的な地物(恒久性のある鉄塔、橋梁など)に基づく測量成果の筆界点の座標値を記載しなければならなくなった。当該土地の筆界点と近傍の恒久的地物との間の距離と角度を表にした「引照点表」を記載するようになっている。この記載があるため、先で筆界点が不明になっても筆界点を復元することが可能で、対象地の位置関係を明示できることになる。

【作成時期で異なる精度】

●昭和30年代後半~昭和53年頃

昭和35年の不動産登記法の一部を改正する法律に基づく表示に関する登記制度創設で新たな表題登記や地積の変動を生じる場合、地積測量図の添付が義務付けられた。この時期に作成された地積測量図は、表示の登記が発足後、間がなく地積測量図の重要性の認識が関係者間でも十分でなかったため、精度が低いものが多い。

地積測量図に境界標を表示するように義務付けた昭和52年10月1日施行の不動産登記法施行細則改正前以前の地積測量図はどこを基準としたか明確でないものもある。

また「現地の測量をしないまま公図上に分割線を引き、スケール読みの三斜求積により作成されたものも少なくなく、求積部分は測量されていても境界立会がなされていないものがある。したがって現地と一致しないものもあれば、同一人が作成したにもかかわらず、隣接地測量の辺長と一致しないものや、関連する地積測量図辺長が全部相違するものもある(筆界特定制度一問一答と事例解説より引用)。」

●昭和53年頃~平成5年頃

昭和52年10月1日施行の不動産登記法施行細則改正で地積測量図はどこを基準としたか、設置、確認した境界標があれば地積測量図に明示するようになったが、近傍の恒久的な地物との位置関係の表示まで義務付けてなかったので現地復元力が十分でなかった。分筆時の残地部分が測量されていないものもある。

●平成5年以降

平成5年の不動産登記法改正で付近に基本三角点がない等のときは、近傍の恒久的な地物(恒久性のある鉄塔、橋梁など)に基づく測量成果の筆界点の座標値を記載しなければならなくなったため、現地復元力が強化された。永久境界標の埋設が法制化され、境界立会・確認の厳密化も進んだ。

●現行法の地積測量図

平成17年に改正不動産登記法の施行にともない関連する政省令等が改正され、この中で、旧不動産登記法事務取扱手続準則第123条のただし書きがなくなり、分筆登記における「残地」も求積することを不動産登記事務取扱手続準則第72条が定めた。

つまり、土地の分筆登記を行う場合、分筆後の全ての土地(筆)に対して、境界確定および求積を行わなければならなくなった。ただ山林など広大な土地の一部を分筆する場合など、その全体の境界を明確にするのはそれに費やす費用や時間からみて困難だし現実的でないこともある。このような「特別の事情がある場合」は法務局と相談の上、分筆する部分のみを測量し、残地部分は公図等を参照して作成した地積測量図を提出することにより、分筆を受理されることもある。分筆後の残地について地積測量図の精度が高まった。

また地積測量図の作成に当たっては、原則として基本三角点等に基づく測量の成果による筆界点測量が求められた。つまり地積および求積方法は、座標値を記載し、当該座標値を利用した面積計算を行うようになったため、現地特定能力が一層強化された。

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