不動産コラム
地価下落の構造分析
(中期地価動向予測2001年~2005年)

㈱日本システム評価研究所 不動産鑑定士・(社)不動産証券化協会認定マスター・司法書士
山田 毅 2001.05.10



1、地価下落の現状
国土交通省が3月22日発表した2001年1月1日時点の公示価格は10年連続で下落した。首都圏、大阪圏の商業地はバブル期以前の水準になつた。住宅地、商業地ともに全体としては下落している。地方圏の地価は、地域ごとの経済動向等を反映した動きとなっているが、特に、人口10万人以上の地方都市の中心商業地では、消費の低迷に加え、大規模商業施設の撤退や郊外型量販店の進出も相まって、大きな下落が続いている。地方圏の地価下落は地方の公共事業の削減や長期にわたる地価下落などで財務内容が疲弊している地場産業が多いことなども原因とされている。
現在、進行している地価下落は、いままでの経済学によるGDPなどマクロの指標の動向や景気循環で説明ができない底の見えない長期的地価下落である。政府も企業も96年頃まではバブルの清算的地価下落で景気の回復などで地価下落も落ち着くであろうという予測をしていた。しかし地価はバブルの清算を終えてもさらに下落を続けている。今回地価公示ではバブルとは無縁であつた地方都市の住宅地でも地価下落が進行している。
長期にわたりなぜ地価下落は止まらないのか、地価はいつ底をうつのか、これらの疑問に答えるべく本論を構成した。

2、今後の地価動向予測

2001年、マンションの販売好調に加え、都心商業地の空室率は改善されており、都内では昨年から利回り目的の外資に加え不動産投資信託を目的としたファンド間の物件取得競争が激化し一部地域はミニバブルの様相を呈している。不動産投資信託も情報開示、税制、金利上昇局面でのリスクなど課題があるが市場全般のカネ余り現象の出口戦略や大手不動産会社の連結有利子負債圧縮手法として今夏場近く離陸する。
以上、一見、底打ちが近いように見える地価だが、マンション需要も昨年秋以降、好調な数字の陰で在庫戸数が増え陰りが見える。日本経済新聞社が住宅関連大手21社を対象にした調査によると「新設着工は平均116万7千戸と前年度比4%減少する見通し。雇用不安や資産デフレを背景に戸建の主力である注文住宅の低迷が続くうえ分譲マンションも減少に転じる。」(日経4月30日)
オフィスビルも2003年に予定される新築ビルの大量供給(延床面積150万平米)で日本興業銀行の予測では、2005年に空室率は現在の3%台から5.8~7.6%に悪化し、耐震基準、IT対応をクリアしているかで厳しく選別され不動産投資信託の投資対象の優良物件と対象外の条件の劣る物件などは、立地と資金調達力の差が拡大し2極化が進むとしている。今後の地価動向に関する多くの予測は、現在、顕在化してきた不良債権処理や時価会計の導入並びに少子化などによる社会・経済的要因により地価下落が続くという悲観的見方が多い。一般に指摘されている地価下落要因と今後のあらゆる予測に欠かせない社会的、経済的変動要因であるIT化による地価動向への影響も考察し下表に列挙すると。

①地価下落の一般要因

要因 顕在化した現象・予測される現象
少子化問題:日本の人口は2007年頃から減少し、都市圏への人口流入も鈍化、ファミリー所帯数が増加しない ●ファミリータイプ住宅をはじめ住宅需要が減少する。⇒地価下落
●少子化による長男・長女化により親の資産を相続するストック世代増加で住宅地需要減。⇒地価下落 
●人口の都市集中化の鈍化による需給バランスの変化、資産を拡大する年齢層の減少。⇒地価下落
不況による企業倒産、個人破産の増加、所得の減少、先行きの不透明感 ●住宅は不動産市場に大量に放出されているが所得不安により有効需要が低下。⇒地価下落
バブル崩壊による金融機関の不良債権処理、都市銀行から地銀、ノンバンク系、生保に移行しているが、その後の景気低迷で2次的不良債権が増加している。 ●金融機関の貸し渋りによる不動産流動性の阻害⇒地価下落
●担保評価額大幅割れでの不動産処分⇒地価下落
●金融機関の競売による担保不動産の処分の増加⇒地価下落
企業、生産拠点の海外移転(人件費、土地価格、コストの安い海外に生産拠点を移し価格競争力に勝る製品を日本へ輸出するユニクロの開発輸入手法の普及など) ●工場用地の需要減、工場跡地の売却による供給増加⇒地価下落
定期借家権制度 定期借家法により賃貸市場全体のレベルアップと住みやすさが増す。その結果、無理をして持ち家を購入せず、ライフスタイルに合わせて住まいを変えていく「賃貸志向派」が増える。その結果、地価下落は促進される。
●公共事業縮小など
●財政難により公共建築物を数多く作るハード主体から建物をいかに使うかのソフト重視に移行
●公共団体による開発事業の中断、事業用代替地、国や自治体が大量に抱えこんでいる土地の放出が始まる。⇒地価下落
企業の評価基準のグローバル化 ●企業が不動産の含み益でなく、本業のキャッシュフローなど収益性・収益率で評価される時代になったため未利用不動産、低収益・低稼働の不動産の売却が増加。⇒地価下落
●土地の含み益を主体とする店舗展開はそごう、ダイエーなどの経営破たん要因となつている。
●連結会計による子会社統合、消滅により事業所需要減少⇒地価下落
従来の相続税対策など土地保有による節税効果の消失化 長期的地価低迷で路線価と時価との開差が縮小し節税効果が消失、物納の増加。
生産緑地法の改定  農地の宅地化・アパート・賃貸マンションの(空室)増加⇒地価下落
食糧輸入の自由化 宅地に転用される農地が増加⇒地価下落
時価会計原則導入 時価評価原則の導入により、企業のオフバランスによる不要土地の売却が増加し、所有より借りるケースが増える。含み損の顕在化で処分物件が増加。⇒地価下落
居住家屋の耐用年数の長期化(10年瑕疵保証の品確法や住宅性能表示制度の制定) SI住宅(構造体に100年以上の耐久性をもたせ内装・設備を改装しやすくしたRC造建築)の普及、木造住宅の耐用年数の長期化で住宅のライフサイクルが長くなるため新規購入需要は減少し、リホームが増加。⇒地価下落

②IT化の進行で予測される地価動向

EC(電子商取引)の普及 ECの普及は、無店舗販売もネットを使えば可能であることを実証した。⇒事業所、店舗などの需要減少
ECの普及⇒新たなビジネスモデルを創出⇒事務所などの需要増加
CRM CRM(ネットを介して得た顧客情報をデータベースで一括管理しデータマイニングなどを駆使して解析し、反復購入の可能性、顧客の将来価値などの予測をし、効果的マーケティングや顧客の囲い込み、新製品の開発に活用する顧客情報管理)さらに進化した顧客の希望する商品を提供するBtoMなどの進化で企業は在庫を持たず効率的販売が可能となるため従来型の店舗や事業所、在庫保管倉庫が不要若しくはコンパクト化される。⇒事業所、店舗、倉庫、工場などの需要減少⇒地価下落
ASP ASPはインターネット技術を活用し、ネットワーク経由でソフトの機能だけを月額払いで顧客企業に提供。いわばIT資産の所有から利用という発想の転換でサーバーの運用や管理はすべてASPが対応し、ソフトがバージョンアップしてもほとんど追加費用を取らない。顧客企業はWWWブラウザまたはサーバ側にアプリケーション実行用のミドルウエア、クライアント側にエミュレータを搭載すれば、常に新しい情報システムを導入できる。ASPは、現在、各ユーザーに対応したカスタマナイズが困難であるが、将来は、中堅、中小企業は、基幹業務、ECなどの構築、運用をASP業者に委託するケースが主流となる。ネットに接続した低スペッククライアントマシン(PCのライフサイクルが伸びる)があればよく、サーバーの設置スペース、システム管理者が不要になり、ECの普及と相俟って事務所等の省スペース化が進行する⇒事務所等の需要の減少⇒地価下落
PtoP 「PtoP」という言葉は,米ナプスターが提供している音楽ファイルの共有サービスで有名になった。ナプスターは、音楽データ交換用ソフトで、音楽ファイルをやり取りする際に、ユーザーにサーバーからファイルをダウンロードする方法を採らず、ユーザー同士が1対1で通信し、あるユーザーのパソコンから別のユーザーのパソコンへ直接音楽データーを転送する「PtoP」と呼ばれる技術を用いている。BtoBのECに 「PtoP」を応用しようとする動きがある。複数の異なる企業の在庫データベースを 「PtoP」で接続し、発注されるとその企業の在庫だけでなく他の企業の在庫も検索でき効率的に必要製品を集めることが可能となる。商品等のDBをバックエンドで要するサーバーが不要なこのシステムは、各クライアントマシーン間でBtoBが可能となり部品、製品などの在庫の制御可能性が高まる。⇒工場、倉庫、物流を革新的に効率化する可能性がある。⇒事業所、店舗、倉庫などの需要減少⇒地価下落

以上、地価動向に関する一般的要因とIT化がもたらす要因を考察したが、IT化が地価動向にもたらす影響は上昇要因よりその効率化の進行で従来型の事業所、店舗、物流施設をコンパクト化、不要化するため地価下落要因が多いと思われる。しかしIDC(インターネットデータセンター)施設などの需要を新規に生み出しており、IT化による環境変化スピードが速いため現時点での概念でその影響を予測するのは難しい。
地価動向に直接関わる住宅、建設業界の最新動向を以下に述べる。

③住宅、建設業界の最新動向

現在、120万戸台の新設住宅着工戸数は10年後には70万戸台、建設業界市場規模は70兆円から公共事業削減などで50兆円に減少するという予測もあり、住宅、建設業界は、需要の先細りを視野に入れた事業転換を始動している。転換のキーワードは、住宅リホーム、マンションの高速インターネット回線によるコンテンツサービス、大手ゼネコンの技術外販などである。

  • 大手住宅メーカーは、住宅リホーム事業を本格的に展開するため、リホーム営業拠点の拡大、人員の拡充を始めた各社の有する顧客データベースの有効活用によるりーホーム需要の拡大を狙い、さらに補修履歴、リホーム履歴のデータ-ベース化で中古住宅の評価、再販価格の上昇のメリットを顧客に訴えリホームや定期点検需要を掘り起こすと言う顧客囲い込みの総合的戦略を指向した動きとなつている
  • 準大手ハザマは土壌改質などの環境改善事業に力をいれている。ダイオキシン汚染が社会問題化したことを契機に環境汚染に対する自冶体が増加。市場は今後も間違いなく拡大すると見られている(日経産業05.10)
  • 清水建設は自社で保有する技術を外販する。4月までに炭素繊維シートを使つた耐震補強など計32件の特許技術の販売活動をネット上で開始、同時にコンサルテイングや大型実験施設での実験受託にも乗り出す。建設市場が長期低迷するなか技術の外販で追随する企業がでてきそうだ。(日経01.27)
  • 大京は4月発売の新築マンションから光ファイバーを活用した高速のインターネット接続を標準装備する。高速ネツトサービスの導入マンションは今年度の場合新築物件の約2割の採用にとどまる見込み。入居者は月額2800円でネットが使い放題になるほか住戸ないで音楽や映画などの受信も可能になる。(日経産業03.30)
  • 日本総合地所が5月に東京都、神奈川県の分譲マンションを皮切に今後供給する全物件について光回線を標準装備する。通信会社と提携して住戸までの回線速度は最大で毎秒100メガビットに設定する。藤和不動産は今年度に供給する分譲マンションのうち大型物件の大半に光回線を導入する。NTTコミュニケーションズなどと組んで住棟内はLANを整備する。いずれも月額2000円台の低額料金で高速ネットが使い放題になる。(日経04.30)

今までは、土地購入の大口需要家であつた上記業界は、積極的に土地購入してきたが、少子化、人口減少などの社会的環境変化を受け、各業界とも今まで蓄積してきた顧客や技術ノウハウを活用する方向へ事業転換を模索している。

④不動産仲介業界の最新動向

インターネットの急速な普及により不動産仲介業も業者の半分は消えると業界内部で言われている。売主と買主がネットオークションや米国の巨大サイトのフリーマーケットのように中抜きで直結すると業者は米国のように「バイヤーズ・エージェント」制、エスクローサービスに特化せざるを得なくなり、手数料も低額化するからだ。
大手業者間ではインターネット活用したECサイトサービスが急激に進み、一部はポータルサイト化し、成約の比率も高まつている。ECサイトサービスでの物件量、Webサイトの質で中小業者は劣勢なため本来は業者間の情報交換に特定されていたレインズの物件を一般に公開する動きもでている。
さらにインターネットの普及で不動産の物件情報ならびに取引に必要なさまざまな情報がネット上に流れ、ネットオークションなどの進行で不動産についても個人が業者抜きで参加しやすい、もしくは業者に支払う高額の手数料を考えると直接取引きを選択する環境も醸成されつつある。米国などでは直接取引は全不動産取引量の20%程度に達するといわれている。日本の場合、複雑な法規制、税制と不動産の個別性などが直接取引きの進行を制約するという見方もあるが国家戦略である電子政府化、行政のインターネットによる情報開示が進めば今後、ネットでの直接取引きが普及する可能性がある。直接取引きの普及は手数料の分地価下落を容易にする。
インターネットを介在させて広域で多量の物件が流通するマーケットは今までの閉鎖的不動産市場と異なり不動産価格水準が適正に形成されやすい環境となる。(個々の物件は個別性があるためネットのみでの売買成立は無理で現地を実見することになる)地価下落時はネットで形成されたオープンなマーケットは市場を写す鏡となり地価下落を一層加速させる。
最近の不動産流通業界では、接近性、環境条件の悪い物件は、価格を半値に落としても売れないと言われている。これまでは価格を下げれば売却できていたが今は、従来の価格相場というメカニズムが機能しない。地価下落を超え買いが存在しない静的市場も数多くある。
賃貸物件についても供給過剰で借り手市場となつているため入居者からとる住居用賃貸不動産の仲介手数料引き下げの動きが活発になつてきた。賃貸不動産業界全国最大手のエイブルが今年1月から手数料値下げに踏み切つた影響が波及している。

⑤中期地価動向予測の諸要因

2005年までの中期的視点で地価予測するとき地価動向を説明する諸理論に加え4月6日政府・与党発表の緊急経済対策に盛られた不良債権処理(主要行が抱えている破綻懸念先以下の不良債権は2年以内、新規分は3年以内にバランスシートから切り離す)、2003年導入予定の減損会計、今夏、離陸するJREITなどが地価にもたらす影響を計測することが重要となる。
理論地価
㈱三菱総研の酒井博司氏は、「月刊不動産フォーラム」で今後の地価を予測する場合、理論地価という経済学的概念が有効としている。理論地価は、地価を将来地代の割引現在価値と考えるファンダメンタルズモデルより求める。全国レベルのマクロを見る場合は、実質GDPを実質地代の代理変数として用いる。割引現在価値を求める割引率を実質利子率として算定すると理論地価が求められる。バブル崩壊後の現在の地価水準はほぼ経済動向を反映したファンダメンタルズモデルによる理論地価水準となつているため今後は経済成長に連関した動向となるが、地価下落予想が強ければ、理論地価水準を下回る動きとなると予測している。
90年代以降の経済低迷の要因は不良債権の隠蔽、先送りなどで発生したデイスオーガニゼーションによる経済萎縮(不確実性、不安の連鎖による経済萎縮)に起因すると指摘し、これが土地の期待収益率を低下させ地価下落を長期化させたとしている。地価下落対策として税制などによる土地の需要喚起、信用収縮を伴わない不良債権処理、土地の利用価値を高めるための都市再生をあげている。
収益価格
オフィスビルや賃貸マンションなどの収益物件は、DCF法による価格評価が主体となりより収益性が重視され収益に見合った価格形成が進み不動産投資信託による投資ファンドの価格などが収益物件の価格指標として機能する。DCF法自体には恣意性が高いなど問題点は多いが収益価格よりみると商業地の一部は底を打つたといえる。
地価のグローバルポジション
経済のグローバル化が進行している現在の経済環境下では、国内企業は世界的規模での競争力を問われる。 いままでは地価や賃金のような貿易できない生産要素価格が生産物が貿易されることにより国際価格に均等するという「要素価格均等化定理」は、非現実的と言われた経済学の1仮説であつた。 「野口悠紀雄著「日本経済企業からの革新」いまこの仮説が急速に現実化している。
中国の世界の生産拠点化で各国は中核部品の現地生産によるコストダウンで競争力を高めるため生産拠点や調達、市場の流動化をますます進める。国内の賃金も下がり、地価も影響が大きい。日本の地価を世界各国の地価と比べると住宅地、商業地ともにまだ高い水準にある。この視点から見ると地価の調整局面はまだ続くという見解になる。
不良債権の直接償却(政府による4月6日緊急経済対策の発表)
地価下落により、担保価値が下がり、新たな不良債権が累積されている。全国銀行ベースでは過去3年平均で7兆円の不良債権が新に発生したといわれている。最終処理を求められる主要行の破綻懸念先債権など不良債権は約13兆円、全国銀行では24兆円になる。しかし金融機関のかかえる不良債権の全体像は諸推定値があつて実際のところ明確に把握されていない。実はこれが最大の問題点である。株や不動産のマーケットは正体が不明な場合、最悪を想定して動くためより下方に振れてしまう。政府は緊急経済対策で銀行の株式保有制限の導入と株式取得機構の設立、不良債権のオフバランス化の促進策を盛り込んだ。この方策として主要行が抱えている破綻懸念先以下の不良債権は2年以内、新規分は3年以内にバランスシートから切り離すとし①不良債権売却②融資先企業の法的整理による直接償却③企業の再建計画を明確にしたうえの債権放棄などを促進する。
直接償却へのシフトは、債権放棄の対象にならない再建困難なゼネコン、不動産、流通、中小企業を中心に企業倒産を増加させ、今まで以上に雇用不安が広がる恐れがある。不動産も大量に放出されるため地価下落を加速する可能性が高い。
調整インフレ期待論
90年以降の地価下落による資産デフレのため企業倒産は増加し、個人の資産低下は個人消費や不動産の流動化を阻害しており、国内の景気回復の重石になっている。金融機関の不良債権問題解決のため経済界、政府も地価をソフトランデイングさせたい意向が強い。調整インフレ政策、円安政策期待論が政、官、民より浮上している。しかしネクタイ、木材、ニット製品、ネギ等農産物の暫定的緊急輸入制限に象徴されるように国内の物価は相対的に高く内外価格差があるため国内通貨が非常に弱くなる以外にインフレはおきにくい構造になつている。
不動産投資信託による市場活性化
不良債権の直接償却による不動産大量放出の受け皿として不動産投資信託による不動産市場の活性化が期待されている。米国のREITは株式時価総額で約1300億ドルの資産運用型商品であり、日本の不動産証券市場規模は、諸予測があるが民間調査機関が米国のREIT市場を参考にした試算では、5~10年後には10兆~20兆円となつている。米国の90年代後半のRIETの成長は、賃料上昇、不動産価格の上昇、低金利という背景があつた。現在、国内の不動産を取り巻く経済環境は厳しく長期的地価下落予測が強いため不動産投資信託による不動産市場の活性化のシナリオには懐疑的な見方が多い。
減損会計導入
減損会計は米国規準や国際会計基準(IAS)ですでに導入され日本も国内の会計基準に基いた財務諸表の国際信用力を回復するためその導入が国際的に要請されている。減損会計は企業が保有する不動産の抱える含み損を明確化しその損失処理を要求する。
減損会計は2005年3月期に導入が予定されている。導入をめぐり地価下落による影響を緩和するため「激変緩和措置」や先送りの政治的動きもあるが、減損会計が導入されるとバブル期に不動産を大量に抱え込んだ不動産、ゼネコン、商社、流通業界〔バブル4業種)に深刻な打撃を与える。他業界でもバブル期に土地を購入し本社ビルを保有した企業に影響が出る。経営破綻企業の経営内容が明らかになり一気に法的処理に追い込まれる。構造改革が進まない低収益業種は市場退場を宣告される。その結果、不動産の大量放出がおこり地価下落が増幅される。

⑥2極分化、IT化と今後の地価動向


今後の地価動向は、2極分化を鮮明にし、地域別に地価動向は異なる様相を呈する。2極分化はデジタルデバイド、勝ち組み、負け組みなどのキーワードに象徴されるように企業の優劣、個人所得の格差が拡大する社会・経済を反映してもいる。また少子化、会計ビッグバンによる企業経営の効率化、不動産所有のオフバランスなどの社会・経済の構造的変化より見て土地神話時代のような全体として土地価格は上昇するという局面は再来せず5年後を予測しても地価は底を打たないと思われる。この意味では冒頭でふれたバブルの清算としての中期的地価下落などではなく構造的・長期的地価下落と言える。
今後の社会、経済構造に大きなインパクトを持つIT化の進行により社会・経済活動は空間、距離を超え従来の枠組みを壊しよりグローバル、効率的に組変えられていくので事務所、店舗、工場などの従来の形態、機能は大きく変動する。商業地、工業地などの商業、生産空間の一部を占める地価を把握する価値基準も急激に変化し、それに連関した住宅地の従来と異なる価格形成がなされる可能性がある。
インターネット社会は、突如、1人の天才によりナプスターのような社会、経済に革命的システムを登場させるため、新たな地価上昇要因発生の可能性がないわけでない。
過去のバブルからバブル崩壊後の失われた10年に至る激動を事前に正確に予測した意見や研究資料は殆んどない。この事実を教訓にするとIT化による個人生活、政治・経済、社会の枠組みにいたるまでかつて人類が経験したこともない急速な変革の時代の入り口を迎えた現時点で地価動向予測のスパンは5年先までが合理性をもつ限界といえる。

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