地価二極分化の変質

民間調査機関の地価動向速報では相次ぎ地価下落が強まっている。

●ミサワホーム系のMRD全国不動産情報センターは1月の不動産流通市場調査をまとめた。

首都圏では宅地、戸建住宅、中古マンションともに引き合い件数が前月に比べ落ち込んでおり不動産市況は全般的に悪化している結果となった。首都圏では引き合い件数が前月に比べ「減少した」との回答が宅地で7.1ポイント増の38.9%、戸建住宅が3.1ポイント増の39.5%、中古マンションが7.8ポイント増の42.9%となった。今後の価格見通しについても「下降する」との答えが宅地で67.6%、戸建住宅で71.3%、中古マンションで73.3%と過半数をしめている。

●三井不動産販売は23日、首都圏の不動産価格動向をまとめた。

成約、売り出し事例を基に割り出した平均実勢価格は前回調査(昨年10月1日時点)に比べ住宅地は2.4%減、中古マンションは1.5%減となった。前回調査に比べ下落幅は住宅地0.6ポイント拡大したが、中古マンションは0.1ポイント縮小した。住宅地価格は都心部の一部地域では安定的に推移しているが全体では景気低迷や大量供給が続く新築マンションとの競合で先行き不透明感が強まっている。中古マンションは価格下落傾向に一服感がでているが新築マンションの大量供給が響き、当面価格調整局面が続く(日経産業01.24)

全国のオフィスビルの賃料も外資系企業、IT関連企業の需要が急速に縮小し下げ圧力が増してきた。東京もオフィス空室率も上昇している。都心5区平均で12月末で4.03%。前月末比0.16ポイント高く、前年同月末比では0.86ポイント上昇している。特に築1年以内の新築ビルの空室増加が目立ち現在の空室率は11.23%と直近の底だった昨年9月末比で4.81ポイント高い。

地価の二極分化が語られだして久しいが、これからの地価は下落という一極に向かい強弱の斑文様を描きながら奈落に沈んでいくのではなかろうか。地価二極分化を背景とする政策が都市再生であるが、東京の都市基盤を整備し、職住近接を実現する都市再生構想は、超高層のオフィスビルやマンションを林立させるだろう。が、果たして巨大なコンクリートの人工的箱を埋めるほど企業活動や人々の住空間が増殖するのだろうか…。

まずオフィスは2003年問題を抱え、これまでオフィス需要を牽引してきたITや外資の進出、増床の動きが鈍化している。これらに代わり医薬、バイオ、経営コンサルタント企業のオフィス需要が伸びているがオフィスの膨大な供給を支えるほどのパイではない。オフィス需要はいままでOA機器によるスペース増という側面により企業は増床を進めてきたが、ITの高度化はオフィススペースを次第に縮小しオフィスの枠が変容するというのが作者の予測だ。まずIDCなどへサーバー、ネットワーク機器などをアウトソーシングすることにより企業のITの物理的スペースは縮小する。刻々と変化する経営環境に対応が遅れた企業は生き残れないため、企業の規模や適性人員も可変的、流動的になる。従来の司令塔としてのオフィスの概念は大きく変化する。極論すれば米国のシリコンバレーのITベンチャーのオフィスのように伸縮自在なテント小屋でも成り立つ。司令塔にはシステムが応答するCRMやBtoBのリアルタイムデータを経営判断に迅速にシュミレーションし置換できるセンスを持つ少数の勝ち組み社員が働く。オフィスは企業のコア以外は省スペース化し、20世紀に見慣れたオフィス風景はそこにはない。

いま、供給されている巨大戦艦の高層オフィスがいつまでITの進化に対応可能か誰も予測ができない。サーバー主体のシステムから個々のクライアントPCの繋がる情報交換のPtoPの突然の出現などITは、革命的システムがいつ起こるか誰も予測できないからだ。超高層オフィスは下手すれば21世紀の遺跡になるリスクを負っている。

都心周辺に大量に供給されている超高層マンションであるが、国内の人口の減少が想像以上に深刻な事態である点などを考えると膨大な供給量を支えきれる需要がいつまでも続くとは考え難い。オフィスと同様に2003年問題が懸念されている。さらに眺望の持つ希少性は超高層マンションの増加で希薄になってゆく。超高層マンション居住という日本人が体験したことのない生活空間は、眺望がよいだけでは済まされない人間の根源的対応性において予測のつかない問題が発生する可能性がある。

いま、過熱している超高層マンションに象徴される都心回帰は、都心近接という利便性の高さを重視した現在の仕事や生活スタイルを前提にしているが、ITの急速な進化は、都心(=仕事をする空間・オフィス)と居住空間を規定している基本概念も変えてしまうかもしれない。電子政府化、Eラーニング、IT遠隔医療、ネット通販などは自宅と役所、学校、医療施設、買い物を距離空間を越え直接繋いだ。オフィスと居住空間も緩やかに融合し1時間以上の時間を要して通勤するという馬鹿げた無駄な時間を生産的な時間に変えてしまう。日本IBMは、業務効率の向上に有益と判断し、現在300人の在宅勤務社員を7倍近い2,000人に拡大する方針だ。00年の在宅勤務などの就業者数は246万人、5年後には445万人なると予測されている。

都心から郊外へ距離と時間軸をキーとする二極分化型地価形成は、都心一極の工業化社会からブロードバンドのネットワーク社会が熟成する21世紀には変質するのではないだろうか。

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