不動産コラム
建物の表示登記のうち「建物認定」について
(登記可能な建物であるための認定基準)

不動産鑑定士・(社)不動産証券化協会認定マスター・司法書士
山田 毅
土地家屋調査士・行政書士
大部 眞二

最近における不動産の表示に関する登記の中でも、特に建物の表示登記については、近年の建築技術の進歩及び建築資材の質的向上並びにこれに伴う構造上の多様化に加え建物に対する志向の変化等により、建物認定は困難となっている。建物認定の問題とは、換言すれば所謂, 登記し得る建物とはいかなる不動産をいうのかの問題であるが、建物の概念が時代の推移とともに変わっている現在、登記上あるいは鑑定評価の日常業務において建物認定の問題は重要性を増しているため、本稿では、判例、法務省民事局長回答などによる具体的事例も加えこの問題について考察してみることにする。

A.建物の概念

 そこで、ここにいう建物とは何か、どういう概念なのかが問題となる。表示登記の対象となる建物の意義を明らかにするため、まず法令上、定義規定のおかれている建築物等の概念につき考察する。

(1)建築基準法における建築物

 建築基準法第2条1号は建築物とは「土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの、これに附属する門若しくはへい、観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興業場、倉庫その他これらに類する施設(鉄道及び軌道の路線敷地内の運転保安に関する施設並びに跨線橋、プラットホームの上家、貯蔵槽その他これらに類する施設を除く。)をいい、建築設備を含むものとする。」と定義している。

 建築基準法は、国民の生命、健康及び財産の保護を図ることを目的としているため、たとえば工作物のうち門とか塀について言えば、「空地に門や塀だけがある場合は建築物とはならないが建築物に附属する門とか塀は建築物となる。」というように解釈されており、不動産登記法上の建物の概念よりも広いといえる。

(2)民法法等における建物

 民法では、86条1項で「土地及びその定着物はこれを不動産とする」という旨の規定が置かれているが「いかなる土地の定着物を建物というのか」については何らの定義規定も設けていない。この点は民法の附属法といわれる建物の区分所有等に関する法律、借地借家法、建物保護に関する法律、工場抵当法等の法律においてもほぼ同様といえる。

 以上、建築基準法、民法等の建築物等の概念を概述したが、本稿の本論といえる不動産登記実務上の建物の概念について述べることにする。

B.不動産登記法における建物

 不動産登記実務上では、準則の136条第1項で、「建物とは、屋根及び周壁又はこれに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものをいう」と規定し、第2項で「建物であるかどうか定め難い建造物については、次の例示から類推し、その利用状況等を勘案して判定しなければならない」として、具体的に「建物として取り扱うもの」あるいは「建物として取り扱わないもの」についての例示規定があり、この基準に基づいて建物であるが否かの判断をしている。すなわち、不動産登記法上建物と認められるためには、第1に「屋根及び周壁などの外気を分断するものを有することが必要である」ということになり、これはもともと建物の原形というのは、人間がそこで生活するためのものであり、そのためには生活するための空間を確保することが必要であり、外気が自由に出入りしないこと、すなわち外気分断性が必要であることに起因している。第2に「土地に定着したものである」として定着性をあげ、第3に建物は、もともと当初から一定の利用目的をもって建築されるものであるから、その目的とする用途に供し得る状態にあること、すなわち用途性を有することが必要であるとしている。

 以上のほか建物の要件としては取引性も必要であるという考えもある。これは不動産登記制度というのは、経済価値の高い不動産の取引の安全と円滑を図るための制度であるという基本理念に着目したものといえる。

以上、不動産登記実務上の建物の要件を述べたが、各要件につき考察を進めることにする。

(1)外気分断性

 準則136条第1項で、「屋根および周壁又はこれに類するもの有すること」が建物の要件とされている。これは外気分断性とともに建物は材料を使用して人工的に構築されたものであることも必要としているといえる。準則がこの「屋根及び周壁等」を建物認定要件としている理由として、まず形式的には、建物の表示登記における登記事項として建物の種類、構造及び床面積を登記することとされ、構造は当該建物の主たる部分の構成材料と屋根の種類及び階数により、また床面積は壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積によりそれぞれ定めることとされていることからして、この規定は法手続き上の必然的なものであるといえる。

 法手続き上それが物理的な構成要件とされた背景には、もともと建物という概念が人間がそこで雨露をしのんで寝起きし、仕事し、物を貯蔵するなどの用に供されるために造られたものであるという背景があると思われる。

具体的事例について建物認定をする際に、屋根については、屋根を有しない建造物について建物か否かを判断する場合は稀といってよいが、周壁については、最近は建造物に対する需要が多様化するとともに、建築技術が発達し、多様な用途、構造をもった建造物が出現しているため過去の単純な建物の概念のみでは認定困難な事例が増加している。例えば経済的取引上の要請から建物として認定してしかるべきと思われる現実の建造物の中に、周壁が欠けていることにより外気分断性に欠けるが、用途的には外気が完全に分断されてないほうがかえって用途性よりみて効用があるものが存在する。例示としては流通業務団地の集団集荷場、大規模製材所における製品置場等がある、また建物の一部を車庫としている場合において3方を壁により囲まれたものは建物の一部として床面積に算入するが、2方のみ壁に囲まれたにすぎないものは建物の床面積に算入しない。(登記研究386号95頁)など、個々の具体的事案について当該建造物の果たす周壁の効用性を利用目的を加味した見地から総合的に判断する必要があると思われる。

具体的事例
〇屋根

高架道路下の自動車駐車場 高架道路の路面下に設けられた地上2層、地下2層の耐火構造で200台以上の駐車能力を有する自動車駐車場は、家屋台帳に登録し保存登記可能
空気膜屋根の建物 周壁は鉄筋コンクリート造で内部に屋根を支えるための柱や梁はなく屋根面にガラス繊維に防水加工膜材を張り巡らせてこれを外気圧より0.25%高い内部の空気圧によつて膨らませてドーム状の屋根とする新しい構法による建造物について建物の種類を体育館とする建物の表示登記をする場合の構造の表示は「鉄筋コンクリート造空気膜屋根」とする。
カプセルハウス 間口3.0m奥行7.2m高さ2.5mの鋼鉄製箱型カプセルの上に同型のカプセルを積み重ねた2階建てのいわゆるカプセルハウスは、建物として取り扱うことができる。

〇周壁

ベランダ部分、吹き抜け部分 建造物の部分であつて周壁がないため外気分断性を持たないベランダ部分、吹き抜け部分は建物の一部と言えないからその部分は床面積に算入しない
土台、支柱及び壁を欠く建物 屋根及び外界との隔壁があり、内部は天井、壁面、飾り窓、コンクリート床等の点で一般の喫茶店兼食堂の店舗と何等異なるところがない建造物は、普通建物を建築する場合に設置する土台、支柱および壁を欠きその代わりに煉瓦塀が土台、支柱兼壁として利用されていても利用の目的として建物としての効用を有すると認められるものは建物である。

(2)定着性

 準則は建物の認定基準として「~土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるもの」と規定している。定着性の概念は、土地に物理的に固着している要素と、永続性があるという要素を要件とするが、この定着性の有無の判断も用途性の判断と絡んで問題が多いところである。物理的固着性が要件でるが、基礎工事が簡易で、曳行移転が可能な日本古来の木造建物を考えると物理的に絶対不動であることまで要求しているものでなく、土地に固定的に付着して容易に移動し得ないもの、社会通念上永続的にその土地に付着させた状態で使用されるものと理解するのが妥当であろう。この点については昭和37年3月29日の最高裁判決があり、石油タンクの事例につき定着性がないと判示し、準則136条2項2号で、石油タンク、瓦斯タンク及び給水タンクは建物として取り扱わないとしている。定着性のもう一つの要件たる永続性については、建物は堅牢性、耐久性を具備して特別の事情がない限り移動せしめないものであるということであるが、この点については一定の期間だけ展示等に使用され予定期間が到来すれば撤去又は移転されることが明らかなものについて永続性が問題となる。例えば一定期間のみ、展示する目的で作られたモデルハウス、基礎工事が施されていないキャンピングハウス等がこれに該当する。即ち展示会におけるモデルハウスは、通常の建物形態を具備し、それ自体は経済価値を有するが、展示という目的のためだけに設置されたもので、モデルチェンジ等によりいずれは取り毀される性格のものであるから定着性に問題はあるが、最近はモデルハウスでも、あとで安価に売却し、家として使用されていくものであり、こういうケースについては建物として取り扱う方が妥当と言えるものもある。昭和47年12月1日東京地裁判決は大規模建造物の建設工事のため、工事期間中かなり長期にわたって使用される飯場につき、土地に相当期間継続的に附着され、使用される予定のもとに建築されたものと推認できるので、当該飯場は土地の定着物、すなわち不動産と認めることができるとしているが、通常の飯場の概念としては工事が完成すれば当然に撤去されることが予定されている簡易建物といえるが、当該事例は相当期間継続的に使用されるという永続性を重視した判示といえる。

具体的事例

土地への固着
起重機の構台を利用した工作物 造船台上の移動起重機の構台の一部および造船台隣接の溶接工事場の走行起重機の構台を利用し、移動式掩蓋を設けた工作物でその一部に外壁を有するものは全体を一個の家屋として取り扱つて差し支えない。
家畜飼料用サイロ 農業経営のためにする北海道特有の建造物で鉄筋コンクリートまたはブロック造で屋根は鋼板葺の家畜飼料用貯蔵所(サイロ)は家屋と認めて差し支えない。
セメント貯蔵用サイロ 出入り口のない全閉構造で柱もなく円筒型側壁、ドーム型天蓋をもつ鉄筋コンクリート造のセメント貯蔵用サイロは建物として取り扱うのが相当である。
農村集団電話交換所 鉄骨造鉄板葺平家建(外壁、床とも鉄板張り)で鋼製H型パイル(高さ25Cm)にボルトで締め付けコンクリート基礎上に据え付けられた農村集団電話交換所は建物として取り扱つて差し支えない。
飼料原料用サイロ 全閉構造で鋼板製円筒形主サイロ4基とベビーサイロ1基が結合しその下部が鋼管製の脚柱により土地に定着している飼料原料貯蔵用サイロは建物と認定して差し支えない。
永続性
周壁、屋根がビニールシートの温室 園芸作物の栽培を目的とするコンクリートの土台、鉄骨の柱および屋根、ビニールシート(耐用年数3年程度でその都度張替えを行う)周壁および屋根、高さは6尺程度、床面積2ないし5坪の温室は建物でない。
屋根および壁がビニール張りの温室 軽量鉄骨造で屋根および壁がビニール張りの温室は建物でない

(3)用途性

  建物は、人間がその場所で一定の生活を営む目的をもって、材料を用いて人工的に構築するものであるから、目的すなわち用途性を持たない建物はあり得ないといえる。建物の要件としての用途性とは、人工的に造り出された一定の空間を人間が社会生活を営むために利用し得る状態にあることを指すものであり、したがって用途性の概念としては、人貨の滞留性、生活空間の確保ということが出てくる。準則141条1号で天井の高さ1.5m未満の地階及び屋階は床面積に算入しないとしているのも、そのような小スペースでは人貨の滞留が確保されないという理由からと思われる。ただし、家屋の1室の一部で5尺未満の部分については、その構造及び床面積に関し、その部分を含めた全部を通じて、一室として取り扱う。(昭和31年5月8日民事甲第754号・民事局長回答)

  用途性という見地から登記が却下されたと思われる例として成田空港反対派のいわゆる「空中団結小屋に関する建物の表示登記申請事件」がある。却下決定書によると「本件申請物件は、一応風雨をしのぎ得る状態にあるが、高さ62mを有する鉄塔の地上約13mの部分に設置された面積9.14㎡、天井の高さ1.9mの極小規模の箱状工作物であって、当該鉄塔を利用して設けられた簡易な階段によらなければ出入りができない状態にあり、かつ、上記鉄塔が新東京国際空港の反対のために滑走路予定地の延長上に航空機の進入を妨害するかたちで存在するなど、その位置、構造、四辺の状況からすれば、もっぱら開港反対行動のために利用するものとして鉄塔に付置された仮設物というほかなく、建物としての用途に供し得るものとして、取引の客体となり得るものとは認められない。したがって、これを登記することはできないというべきである。」となっているが、この事例の主たる却下理由は、建物の認定基準に照らし種々の要件等を総合的に判断した結果、「いわゆる仮設物であって登記し得る建物とは認められない」というものである。ある建造物が不動産たる建物としての定着性を有するか、あるいは単なる一時の用途に供するために設置されたいわゆる仮設物か否かの判断をする場合においては、その利用目的が他要件との総合判断において重要な判断要素となった事例と思われる。

 以上不動産登記実務上の建物の各要件につき述べてきたが、時代の推移とともに建物という概念も一般的に変容している昨今、建物認定に際しては、定着性・永続性・構築性・外気分断性・用途性・人貨滞留性・取引性等の各要件が相互の絡み合った関係にあり、これらの各要件の総合判断で見ていかなければならないと言えよう。

◇C.登記手続

建物の表示登記等、不動産の表示に関する登記制度は、権利の客体である土地や建物の状況を常時登記簿のうえに明確にし、不動産取引の安全と円滑とに奉仕しようとするところにある。

不動産の表示に関する登記手続は、制度上、いかに正確且つ迅速に、不動産の客観的・物理的な現況を把握し、それを登記簿に搭載するかというところにある。そのため、報告的登記について、不動産の所有者に一定の期間を定めて登記の申請義務を課す一方、登記官は登記申請の有無に係わらず職権によりその登記をすることができるものとされるなど(不登法25ノ2)権利に関する登記とは異なった原則が適用される。

 登記官は、常時実地調査を励行し、その調査結果に基づき不動産の状況を正確に公示する職権登記主義が理想とされるが、登記には迅速かつ正確な処理が要請されているため一定の例外のほか、当該不動産の状況について最もよく事情をしつている当事者に申請義務を課し、その申請をすることができる者を法定している。

報告的登記である、土地表示の登記、地目又は地積の変更の登記、土地の滅失の登記、建物表示の登記、建物の種類、構造又は床面積の変更の登記、合体による建物表示及び合体前の建物の表示の登記抹消の登記、、建物の滅失の登記、区分建物の属する一棟の建物の表示変更の登記等の、申請適格者は、登記原因が生じた日から一か月以内に当該登記を申請する義務が課せられ、その義務を怠ったときは、10万円以下の過料に処せられる。(不登法159ノ2)。

土地、建物の滅失の場合は、土地建物が物理的に滅失した場合であるから、滅失後において所有者の変更はあり得ないのであるが、その滅失登記を申請しないうちに所有者が死亡した場合は、その相続人が滅失登記の申請義務を承継すると解すべきであり、その申請期間は相続人となった日から起算される。

なお、所有者に変更が生じた場合の登記の申請義務については、新所有者は、所有者の変更があった日から(不登法81Ⅲ及び同93ノ5Ⅲの場合は新所有者のために所有権がなされた日)から更に1か月以内に、不動産の表示に関する登記を申請しなければならないのである。


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(参考文献):
 月刊「登記研究」372号、同382号、同444号、同445号、同446号、同447号、同448号、同449号、同450号、同451号、同507号、不動産登記実務の手引

■登記関連コラム:
抵当権の効力と付属建物登記

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