地方都市の活性化策

先の公示価格の発表によるとここ数年の地方都市の商業地の地価下落はすさまじい。まず大手流通系総合スーパーの閉店が相次いでいる。最近2年間に撤退した大型店は全国で300店を越す。特に1980年前後以降の「流通革命」が叫ばれた時代に開店した店舗が目立ち、まちなかに立地しているので中心市街地の空洞化に拍車をかけている。地元老舗の呉服商などから成長したところが多い地方百貨店でも、売り上げ不振で閉店に追い込まれるところが多い。

特に人口10万人規模の地方都市のまちなかの高齢化は進行しており、高齢化、人口減少に加え、資本の絶対的な不足が地方都市衰退の原因になっている。

地方都市が自力で都市再生に挑むためには、まず定住者の確保である。他地域からの移住を促したり、地元からの流出を防ぐためのキーワードは「住宅」「就業」「出会いの場」だそうだ。さらに中心市街地の活性化が必要で、削減された地方予算を政策的にまちなかに誘導し、居住、商業機能に加えて行政投資などを効率的に配分し、地域資源を最大限活用し投資を呼び込む知恵を必要とする。

地方都市の都市再生は、制度面から後押しする行政施策の展開が求められる。投資を中心市街地に導く手法としてはまず税制の活用がある。

日本経済新聞によると福井市は2002年から10年間の暫定施策として独自に中心市街地活性化法が定める計画の対象区域(105ha)で、新築・増改築する大規模建物に対して固定資産税の減税をする。全率を現行の1.4%から、最初の3年間は0.5%その後2年間は1.0%に軽減することによって、商業施設やマンション、オフィスなどの大型投資が街中に戻って来ることを期待している。

都市計画法の活用例として、新潟県中部にある加茂市は郊外に立地する大型店との競争で中心市街地の商店が大きな打撃を受けている。そこで新たに条例を制定し、市街地の大半を「特別用途地区」や「特別用途制限地域」に指定することを検討している。土地利用規制の導入によって一定規模を超える大型店の郊外進出を抑制し、逆に開発を中心部に向かわせることをねらった都市計画である。

埼玉県は都市計画法の規制基準緩和により地域振興に役立てる政策を検討している。昨年の5月18日施行の改正都市計画法で、開発が厳しく規制されていた市街化調整区域を対象に開発許可基準を見直した。市町村の計画に応じて町制区域内でも「住宅系以外の建築物」、具体的にはスーパーや工場などの開発を認めた。

地方都市の「都市再生」は、税制、都市計画法などの弾力的運用による規制緩和路線が基調になっている。大都市圏のような潜在的開発エネルギーを顕在化するという方策は、産業の空洞化、少子化の影響をもろに受けそもそも開発エネルギーが乏しい地方都市の場合は、地域活性化の期待は膨らみにくい。

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