地方の土地価格は構造改革でさらに下落
熊本地裁のハンセン病国家賠償訴訟判決に対する政府の控訴断念で小泉人気はますます加熱しそうだ。官の論理を打破した勇気を権力に辛口の筑紫哲也も賛辞した。同時に出された政府声明には官の呪縛を引きずっている部分もあるが…
官の論理といえばこの国の財政配分の構造も変革の兆しがでてきた。総理が参議院選挙の公約にすると明言した道路特定財源の見直し、さらには都市再生本部の設置、政府経済財政諮問審議会による地方交付税の配分見直しの着手である。いずれも公共事業予算を投資効率面から見直し、バラマキと批判され無駄が多かった地方の公共事業を抑制し東京や大阪など大都市の再開発により多く配分しようとする試みだ。
不良債権処理により懸念される地価下落を抑止するには東京や大阪など大都市の再生が欠かせないという認識である。この背景には自民党が大都市で選挙に勝てないという現実もある。土木建設の利権につながる族議員が多い橋本派の凋落(参院選まで寝たふりしているという説もある)という事実も押さえねばならない。
地方都市の地価下落率は平成13年地価公示でさらに大幅になっている。地方都市の地価低迷は伝統産業の衰退、ユニクロに象徴される開発輸入方式による工場の海外移転、連結会計の影響などによる子会社廃止、支店統合などがあげられるが、公共事業の縮小による影響も大きい。「クルマが通らない道路」などバラマキと批判され無駄といわれた地方の公共事業もある部分、地価を下支えしていた側面があることは否定できない。
財政構造改革で地方の公共事業がさらに削減されると不良債権処理の地銀レベルでの進行と相俟って為政者の予測を超えて地方の地価が下落する可能性が高い。
経済構造改革で国内の低収益、低生産の地方型産業、業種から高収益、高生産性の都市型産業に資本移動が加速するなかで、大都市再生は重要課題だが、政府は大都市にだけにとらわれずに地方を含めた地価対策の国家的グランドデザインを早急に描く必要があるのではないだろうか。
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