定期借家権の利用(老後の生活設計)

子供は独立し、年金で生活している郊外の一戸建に住む老夫婦の場合、家の管理や掃除が大変で、広いスペースを生活空間として必要としないため、現在の居住家屋を賃貸にして医療施設が充実した都心エリア付近のバリアフリーのマンションに移住したいと思っている人は結構多い。従来までは、賃貸にすると借家人保護で正当事由がないと貸した家は返ってこなかった。そのため子供に資産として残してやりたいという希望を叶えるのが事実上困難だった。

これらの問題を解決するのが定期借家権である。例えば、5年後に子供が居住するため建替えを予定しているとすれば自宅を5年間の定期借家契約で賃貸すればよい。定期借家権は、契約期間満了により契約が終了するため立退料に関するトラブルがない、契約期間満了による再契約時に、適正家賃への改定が容易になるなど賃貸人にメリットが大きい。

定期借家権で契約する場合は、契約を有効にするため注意が必要だ。定期借家権は、従来の借家契約と異なり、口頭では成立しないので、必ず公正証書等の書面によって契約する必要がある。また、定期借家権で契約をする場合には、貸し主は借家人に対し、定期借家権は契約の更新がなく、期間の満了により賃貸借が終了することを事前に説明し書面を公交付することが義務づけられている。期間満了については定期借家期間が1年末満の場合には、特別の条件はなく、期間が満了すれば、それだけで明渡しを請求できる。期間が1年以上の場合には、契約期間満了の1年前から6ヶ月前までの間に、期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければならない。

定期借家権の利用は定期借家の事前説明や契約が面倒ということもあって現状ではあまり進んでない。借主が法人の場合、定期借家不可のケースも多いという。現時点ではまだ従来型の借家契約が主流であるが、借家人の所有意識が変化しつつあるため良質の住宅供給が増加する定期借家権は次第に今後、普及すると思われる。

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