高層マンションと伝統住宅が共生する上海住宅事情
中国最大の経済都市上海、浦東地区には日米欧のハイテクメーカー7,000社が集積する。外資系企業の進出で高層マンションなどの開発が進んでいる。上海の分譲マンションはスケルトン売りなので内装材やインテリア市場が拡大している。
90年代の外国人を対象としたマンションの価格は物件の絶対数が足りなかった92、3年頃がピークとして上り続けた。台湾や香港の富裕層が投資対象に購入したケースが多い。その後、供給が増え価格上昇も一段落した。
今年4~6月、中国都市部のマンション価格は前年同期に比べ2.4%値上がりした。事情通は「人気物件を青田買いして転売し利ざやを稼ぐ上海人が後を絶たない」と解説する。上海の不動産価格は今後大幅に上昇するのではないかという見方もあるが現地で住宅事業を手がける丸紅の林照男・中国副総代表は「バブルでなく実需、中国では住宅に土地代が含まれないので投機対象にならないと指摘する(週間ダイヤモンド11.03)。
中国では住宅は国有企業から支給されるもので所有という概念はない。市場経済化、経済開放で国有企業改革が始まり政府は国民に持ち家を取得することを奨励するようになった。住宅減税を導入し住宅購入者に所得税を全額還付するようにした。外国人用と国内用の不動産規制を廃止し外国人が住宅取得可能とした。
高層マンションが増えるとその街の伝統住宅が姿を消していくのは寂しいものだが上海も例外でない。
揚子江の南、江南地方の伝統住宅石庫門里弄は周囲を煉瓦の高い壁で囲み中庭を設ける様式で19世紀に租界が上海に設けられたとき、中国人難民のために英国人が集合住宅に改良して急速に広まった。20-30年前まで市民の半数以上が石庫門に住んでいたが改革開放路線以降の開発で急速に姿を消しつつある。香港、上海の大手デベロッパーが政府と組んで伝統住宅石庫門を外観を補修し内部を改造して古いレンガ住宅の中に高級ブティックや欧米の洒落たレストランを入居させた再開発地域「新天地広場」を開発している(日経産業08.24)。
古い中国の外観に欧米風の洒落たレストランが入居するミスマッチがなかなか好評で観光客も7月には1ヶ月で84,000人訪れた。上海の商業ビルにはエリクソン、GE、UBSウォーバーグが入居し低階層の店舗にはシャネル、ルイヴィトンなど高級ブランド軒を連ねる。多様な側面を見せる上海の横顔はいま輝いている。
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