東京都心オフィスビル市況が変化
東京都心商業地は、地価公示価格で上昇地点を増加させた。国土交通省によると「外資系企業や国内IT関連企業の旺盛なオフィス需要」がその背景とされている。最近の東京都心の1極集中については下記要因が指摘されている。
IT関連企業は、重層化されたサーバー群、各クライアントマシン、その他ネットワーク機器などの設置で相当スペースを必要とし、ブロードバンドネットワークに対応した通信インフラ、優秀な人材確保のための都心接近などに加え会計ビッグバンによる連結会計による子会社廃止、支店の本社統合などの要因により東京都心の一極集中が加速していると思われる。
さらに大阪大学今川拓郎氏によるとITの進展は本来、距離、空間を越えどこからでもインターネットを介して必要な情報を得ることができるため都市機能を分散する方向に作用するように思われがちだが現実はITの先端企業は米国のシリコンバレーや東京渋谷のビットバレーに象徴されるように同じ場所に集まる傾向が見られる。これを氏は「集積パラドックス」と定義し、この要因として
- 高度な技術情報などは都市機能にビルトインされ外部への移動が困難であり、その結果、より大都市への集積が進む。
- ITと顔を合わせるフェースtoフェース型交流の補完性があり、経験、ノウハウを有する相互対人コミュニケーションでIT能力をより進化させる。知識を集積した大都市でこの共有コミュニケーションは可能となる。
をあげている。
不動産投資信託離陸によるファンド間の物件取得競争が過熱し、優良物件の品薄感から、ミニバブルの様相を呈し、優良物件の囲い込みが激化、価格が高騰したため利回り低下が予測された東京都心のオフィスビル市況であるが、2001年に入り先行きの賃料低下の懸念もでてきた。
米国のインターネツト革命の象徴的企業サンマイクロシステムズの業績下方修正、デルコンピュータ、ゲートウェイの大幅人員削減などここにきての米ハイテク企業総崩れによる米国景気の急減速の影響が東京都心オフィスビル市況に波及してきた。日経産業新聞報道によると金融、保険、コンピュータを中心とした外資系企業が増床計画を下方修正したり借り増しを見送るなどの動向がで始めてきた。また市場関係者によると年明け後にオフィス市場の空気が変わったと指摘する声がにわかに高まってきた。外資系企業の増床意欲の陰りだけでなく国内IT関連企業も新規需要は一服し、IT関連総じて一巡した市況感がでてきた。
さらにオフィス市場の先行き懸念材料が業界で指摘されている。2003年に予定される新築ビルの大量供給(延床面積150万平米)である。日本興業銀行の予測では、2005年に空室率は現在の3%台から5.8~7.6%に悪化するとしている。
今年は、不動産投資信託の離陸による市場変化とオフィスビル市況の行方から目が離せない。
■関連記事
市場関係者のオフィスビル市況予測