ナスダックとITの地殻変動

コンピュータの2000年問題で幕を開けた今年3月10日、米国店頭株式市場ナスダックは5048.62の最高値をつけた。国内も情報通信関連銘柄が値を上げネットバブルをもたらした。この頃は各メディアも20~30代のベンチャー起業家をカッコ良く取り上げ、IT関連ならその企業の収益構造に関係なく無限の可能性があるかのような幻想を与えた。

11月30日現在、米国ナスダックは3月の約半分に値を下げた。米国の景気後退懸念も影響しているがネット関連株に過剰な期待をしたほど利益モデルが見えてこない反動といえる。パソコン⇒半導体⇒ネットワーク⇒光ファイバー⇒記憶装置の順でハイテク株の調整が進んできた。パソコン大手ゲートウェイの業績下方修正で調整が振り出しのパソコンに戻る懸念もでてきたという見方もある。またベンチャー企業などの資金調達手段の1つであるジャンク債市場も低迷している。米国景気減速による信用リスクの高まりや、ニューエコノミーへの過剰期待の反動から投資家が離散し、市場流動性が急低下しているためだ。(日経11.30)

米国のインターネット関連企業は、優良企業も含み人員削除を急増させている。ある資料によると昨年12月以来、383社が人員削減し、そのうち75社が破綻した。国内も米国と同様に過剰な期待の反動でナスダックは急落している。三菱商事戦略研究所の藤山知彦氏によると米国のネット関連株の動きは3パターンに分類される。シスコ・システムズ等機器の供給で実利をあげている企業はピークからの落ち込みは少ない。次にeコマースに必要なソフト、運営能力を提供するコマース・ワンのような企業群は下落率5~8割で実業を持つ既存企業との提携で生き残っている。3番目は実業と無縁の第三者企業が産業分野毎に立ち上げたマーケットプレイスである。これらは与信、物流、決済というシステム支援構造を持たなかったので購買、調達の企業間取引に参加する企業が少ないという構造的欠陥を露呈し、このグループの下落率は9割以上となっている。

所謂、ネットバブルの崩壊は、多くの教訓を残した。ここ数年で急速にニューエコノミー間で淘汰が進み、社会的、経済的ニーズに対応した明確なビジネスモデルと収益構造、競争力を有する僅かな企業しか生き残れないだろう。しかしナスダックのマネーゲームに幻惑されITを近視眼的、短絡的に捉えてはならない。現在、地殻変動がすでに起きている。電子情報関連製品部品の調達から始まったBtoBと呼ばれる企業間購買、調達の巨大な電子市場が国内から国外までまきこみ世界規模で形成されつつあり、オールドエコノミーと呼ばれる自動車、鉄鋼、建設などの基幹産業によるBtoBマーケットプレイスの構築が始まっている。マーケットプレイスは調達者には調達コストの低下と間接経費の削減を、売り手にも販売費用の低下をもたらし効率的在庫管理が可能となる。運営企業は取引高の一定割合を手数料として受領し、ほかに広告料などの収入が見込める。運営企業にはNTTを始め商社、金融などが相次ぎ参入している。この市場規模は、2003年には1999年の6倍の68兆円に成長すると予測され、ネックとなっている与信、決済、保険機能も整備が進んでいる。劇的な製品コスト削減と従来の系列取引の枠が破壊され製品マーケットのオープン化が間もなく実現する。今、起きているITの底流を見過ごさないことが重要だ。

マーケットプレイスについては、当サイトのコラム巨大電子市場の動向に詳述。

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