米国のインターネット不動産仲介の現状

国土交通省総合政策局不動産業課不動産市場整備室による米国の不動産情報化状況調査が「月刊不動産フォーラム」に連載された。その内容と日本の不動仲介業の将来について述べる。

米国における不動産物件情報提供サイトで最大のものはNAR(全米リアルター協会)が主体のリアルター・ドット・コムである。1996年スタートしてから1年も経たずに物件掲載数100万件を超え全米総物件数の85%をカバーする。特徴としては①不動産業者が扱っている不動産物件の殆んどが掲載されている②不動産業者が主体のネットワークである③不動産物件情報だけでなく住宅ローンや火災保険、リフォーム等幅広く掲載されている。

2001年3月で総ヒットページ数は2億6千万ヒットで前年同月比48%増、リスティング(物件登録)は159万件で前年同月比20%増、リスティング物件検索総数は5億1,040万件で前年同月比71%増と大幅に増加している。日本におけるレインズを不動産の総合ポータルサイトとして発展させたような状況だが、注目すべきは加盟業者が主体のネットワークとしての機能を堅持していることである。

また、物件情報がインターネットで洪水のようにエンドユーザーに流れたとき買い主担当仲介業者は終焉し、バイヤーズエージェントとしてしか生き残れないのではないか。さらにネット化が進みユーザーがネットで様々な情報を学習するようになるとバイヤーズエージェントも終焉するのではないかという懸念が日本国内で増幅しているが、米国の先進的現状の調査内容は意外にもバイヤーズエージェントは以前から存在していたのであるが、どちらかというと売り主に対してのサービス(リスティング契約をもらっているという意味で)が主体で、意外とないがしろにされていたきらいがある。

本来ならば買い主、バイヤーが物件購入の費用を支払う訳であるのでそれなりのプロのアドバイスが必要なものであるが、その必要性はつい最近まであまり重視されていなかったというのが正直なところであろう。インターネットの普及によりバイヤーズエージェンシーが必要なくなるのではないかというように思われる向きもあるようだが、アメリカでもインターネットが勢いよく広がり始めた頃はそのように良く巷では噂されていたものでもあったが、その存在は増すけれどもその逆の傾向は見受けられない。

確かにアメリカでも物件を実地見学する物件数とそれにかかる時間は大幅に短縮されてきているし、その契約に関するプロセスも電子化へと進んでいる事も事実である。しかし、それが直接バイヤーズ・エージェントの存在自体を否定する方向に働くというのは論理的でない。

その理由としては、

  1. どんなに物件視察の時間が短縮しても、結果的にはバイヤー自身が自分の目で見て最終判断を下さなければならないこと
  2. 一般消費者用の物件検索は、その詳細までは記載されていない。仮に記載されてあるとしても、その正しい解釈は不可能であること
  3. 売買をするには、オファーを書面で提出しなければならない。日に日に難しく複雑になっていく不動産書式、消費者の側からは理解できない点が多いこと
  4. 地方条例、コード等は地元に住んでいて仕事をしていなければ、つい見逃すポイントが多いものであること
  5. エージェントが入れば何かの時に、彼等に依頼することも出来るし、委任して調査することも出来るし、コミッション以上の利点があること
  6. 知らなかったがために失う物は時としてコミッション額以上の場合が多いこと

と、上記の理由だけでもバイヤーズ・エージェントは必要になってくるのである。つまり日本国内の不動産取引の場合、不動産個々の個別性が強く価格の妥当性が検証し難く、取り巻く法律も民法、建築基準法、都市計画法など多岐にわたり税制、建築土木などの知識も広範に要求される。また不十分な知識からもたらされる将来の紛争などを考えたときは当事者間のみの取引はリスクが多いという業者が売買当事者をサポートする必要性は、米国においても同様で、さらに国内法、税制などの複雑さを考えると米国以上に業者の介在が求められると言えよう。しかしネットで情報武装したユーザー以上のノウハウを持たない業者は当然に淘汰される。

■関連記事
  米国不動産市場の明暗
      

おすすめ記事