痛みをともなう構造改革で病気になる人たち
小泉総理、田中真紀子、竹中平蔵の映像がテレビにでない日はない。政治家は信頼できない人種と諦めていた不幸な国民が永田町的でない普通の言葉で改革の意気込みを語る彼らに多大の期待を寄せてしまうのは無理からぬことである。
実体の知れない不良債権や国の財政赤字の重石に怯えさせ、構造改革をやらないと日本は滅びると言われれば少々の痛みがあっても構造改革を思い切りやってくれ!という世論が無責任なマスコミに扇動されて小泉内閣の80%を超える支持率をたたきだした。
そもそも今の最悪の経済状況を作ったのはほかならぬ政府自民党である。解党的出直しを訴え誰よりも自民党を批判した小泉氏が圧倒的支持を受け総裁になったとたんマスコミも国民もKSD事件や有明海沿岸漁民の不漁などを不問にしてしまった。しかし失政に寛容な国民は構造改革で悪夢を見ることになる。構造改革をやめろと筆者は言うつもりはない。構造改革は進めるべきである。しかし構造改革による痛みの程度を理解し、自分も無関係でないと覚悟ができている国民が本当にどれぐらい存在するのだろうか…
経済の構造改革は緊縮財政で公共工事バラマキをやめ国家財政を健全化し不良債権処理で低生産、低収益のゼネコン、不動産、流通などの部門からITなど将来性のある高収益の業種へ資金の流れを変え国際競争に負けないように規制緩和することである。要するに低生産業種は市場から退場し、高生産、高収益業種が生き残るわけだ。不良債権処理が進めばゼネコン、不動産、流通に多額の債権をもつ都市銀行にどまらずその影響は地銀にまで及び、地銀の大半の融資先である中小企業も広範に巻き込んで問題先企業を法的整理などへ追い込むだろう。再建可能として債権放棄を受けた企業もリストラを大量に進めないと債権者の理解が得られない。その結果200万人とも300万人ともいわれる大量の失業者を新たに増加させる。
政府はセーフティネットとして失業給付金の増加、職業訓練、人材の流動化を促進する法整備を進めるとしている。これらの応急措置では不十分なことは政府自身も認識している。政府によればITなどの新産業が育てば新たな雇用が生まれ大丈夫と楽感的な予測で言葉を濁しているが、淘汰される低生産業種の従業者は殆んどがITが不得手なデジタルデバイド組である。
業種間の競争もITにどれだけ対応できるかで勝ち負けが決まる。経済の構造改革とは競争原理と効率化、国益が優先される社会だ。極論すれば社会的、経済的弱者は緊縮財政で切り捨てられる。中高年令者、IT弱者、生活資力のない老人、障害者などの社会的弱者の生活は一時的痛みどころでなく国益と競争原理でいずれ脳死を宣告されるかもしれない。
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