近未来IT住宅

ADSL、光ファイバーなどのブロードバンド(大容量高速通信)の普及とインターネットの常時接続環境は、「住」を中心とするライフスタイルを大きく変える。IPV6になりほぼ無限大に近いアドレスを振ることができるようになると家電製品もIPアドレスが取得できるためインターネット家電が実現し住まいは快適、効率をキーとしてIT制御できる。今でも、屋外からインターネット経由で接続し、電源のオン・オフの切り替えや、温度設定が可能なインターネット対応エアコンや冷蔵庫が登場しているが、この整備と普及が進むと、玄関のドアの開閉、冷蔵庫にストックしている食材の品質期限、風呂の給湯と温度変更などあらゆるものが屋外からコントロール可能になる。

マイクロソフトの「eホーム構想」

マイクロソフトは家庭向けネット戦略は「eホーム構想」を明らかにし、2月に事業戦略の立案・遂行を担う新組織「eホーム」を発足した。ウインドウズを軸に家庭内ネットを構築すれば、パソコンやテレビの画面上で様々な家電端末を一括して予約・操作することが可能になる。

例えば、パソコンで取り込んだデジタル音楽を居間に設置したステレオで再生することができるようになる。就寝前にテレビ画面で、エアコンや洗濯機が翌朝、自動的に動き出すよう時刻をあらかじめセットするといった使い方ができる。「WindowsXP」に組み込まれた自動認証システム「パスポート」に氏名や住所、クレジットカード番号などユーザー情報をいったん登録すると、各家電・機器ごとに自分の情報を再入力する必要がなくなる。居間や台所、書斎、寝室、浴室など家庭内のどこからでも手軽に電子商取引が利用できる。

MSホーム

マイクロソフト本社にはネットワークでつながれた近未来の家「MSホーム」がある。玄関に立つと、液晶表示の表札が目に飛び込む。鳥のさえずりをBGMで聞きながら「呼び鈴」のパネルに触れると、ピンポーンと家人に訪問を知らせる。不在時には画像とともにメッセージも残せる。宅配便を届けに来た人は、ネットワークを通じて家人からあらかじめ「承認」をダウンロードしたICカードを差し込めば、宅配便専用のボックスが開く仕組みになっている。扉には鍵穴がない。表札の上にあるカメラが虹彩を読み取り、自動的に開閉する。一歩入ると、壁面の右手には家の端末を全てコントロールできるパネルがあり、室温からステレオ、テレビの音量、警備などの稼動状況をチェックできる。キッチンには3ヶ所のマイクロフォンが壁と天井に埋め込まれている。「セットライト!」と声に出せば、照明を自動的につけ、「レシピ!」と命じれば、キッチン備え付けのパソコンが立ち上がり、レシピを映し出す。電子レンジは商品についているバーコードを読み取り、調理時間を自動的に設定。電子レンジに放り込んでおけば、居間でテレビを見ていても、部屋で仕事をしていても「調理が完了しました」とメッセージを伝えてくれる。(日経産業11・28)

ミサワホームの試み

ミサワホームはリモコンに付けたマイクを通じて、テレビや窓のシャッター、照明を自動操作する装置を開発した。今年度をめどにこの装置を採用した1戸建住宅を売り出す計画だ。「だれもが身の回りの機器を簡単に制御できるバリアフリーの家づくり」が狙いだ。主な対象は高齢者や障害者。発売前にもかかわらず問い合わせが相次いでいるという。リモコンに触れるだけで操作できるタッチパネル式液晶を取り付け、簡単にインターネットに接続できるようにした。今後は家電メーカーとの連携を深め、デジタルテレビを使った銀行振込なども利用できるようにする。音声認識付きのリモコンを「家庭における情報の集約・発信装置にする。」音声認識技術がパソコンの入力用途などにとどまっていたのは、コスト増に加えて雑音耐性の問題もあったからだ。想定外の言葉が吹き込まれてしまうと、機器に誤った指示をしてしまいかねない。住宅内には操作対象となる機器の数も多い。大和ハウス工業も声で操作できる家づくりに着手している。商品化には二の足を踏んでいる。こうした雑音耐性や操作対象機器の特定問題を克服するために、音声認識ソフトの開発を進める電機メーカーなどが目をつけているのが携帯電話やインターネットとの連携だ。「携帯電話にいったん操作内容を吹き込んでからインターネットを通じて家庭内の機器に動作指示を送る形にすれば、雑音を拾うことはないし、操作対象機器も特定しやすい」と、松下電器産業の研究開発者は話す。(日経産業7・11)

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