21世紀のハイテク戦争

米国の同時多発テロの報復の行方に全世界の注目が集まっている。もうすでに米特殊部隊が情報収集のためアフガンに潜入しているともいわれる。報復の今後の展開、規模によってはブッシュ大統領が言う本格的な「21世紀最初の戦争」に進展しかねない様相だ。この戦争の展開によっては米国は湾岸戦争以後10年、ITを中心に蓄積してきたハイテク戦の実験を行うだろうと言われている。

ITを駆使した軍事技術がRMA(Revolution in Military Affairs 軍事における革命)である。防衛庁のサイトでは今後の軍事戦略としての研究の重要性を指摘しているが米国のRMAはいまや最先端を誇っている。

「米国はコンピュータ戦車の開発を目前に控えている。移動衛星とリンクした司令部から戦闘状況の蓄積されたデータベースを受信し自軍と敵軍の配置状況を目視にて確認することができる最先端の戦車である。マサチューセッツ工科大のリンカーン技術研究所では特殊センサーで敵軍戦車、ヘリコプターを感知しミサイルを発射する無人飛行機の開発に成功したという。」(スーパーハッカー入門 Vladimir著)

偵察衛星、無人偵察機などが新たな戦場に活用され、地雷探査ロボット、特攻自爆無人機なども出現するかもしれない。

RMAでは敵をあらゆる条件で探知し、センサーで収集した情報をネットワークで共有し、ミサイル、空爆機などとの攻撃システムが効率的に連携しリアルタイムで稼動する。テレビ「ニュースステーション」で民間の衛星から撮影されたアフガン国内ジャララバードの軍事基地の航空撮影映像が紹介されていた。紹介されたものより米軍の最新鋭偵察衛星の識別能力ははるかに高い。地上約10センチメートル四方の物体を識別できる。車両のナンバープレートレベルまで判別する。赤外線カメラを搭載し夜間撮影も可能だ。無人偵察機(UAV)は400海里の範囲を40時間以上飛行、曇天でも画像捕捉可能なSARなどで収集した画像を通信衛星でリアルタイム配信する。9月30日NHKテレビニュースはアフガン国内でタリバンにより撃墜されたUAVのなかのプレデター1機の残骸の映像を報道した。

IT革命によりもたらされた技術、システムの革新は軍事技術面にも急速な進歩をもたらした。21世紀の戦場は高度情報戦となり武器を使用する兵士を無人化する。湾岸戦争時にテレビで流されたピンポイント空爆のデジタルで無機的映像はイラク兵士の流す血の匂いを消去した。戦争がゲーム感覚で遂行されていると思われた。日本人の大半は戦争が遠い外国でおきている程度の実感しかもたなかった。

しかし世界にネットワークされたテロ組織とITを駆使した米国の最先端軍事技術の熾烈な戦争となった場合、最悪のシナリオは人類がかつて経験したことがない未曾有の恐怖に満ちた殺戮になるだろう。テロという映像的効果を狙った目に見える殺戮と報復というハイテク軍事行動による眼に見え難い殺戮の連鎖により失速中の世界経済はやがて恐慌に至る。世界中の人々から正常な平衡感覚が失なわれ民族、宗教、貧困などに起因する猜疑と憎悪が複合し増幅する悪夢の世界となる。

無垢な市民に犠牲をだすことなく早急にテロの首謀者とその一味が捕縛され、さらにテロの背景にあるといわれる中東の和平を各国の外交努力や超大国である米国がリーダーシップを発揮して前進させる。21世紀最初の戦争がなんとか回避でき、多様な価値観を持つ人間を認め合える平和な世界の実現を願うのみである。

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