不動産流通業者は大手ポータルサイトに統合される
- インターネットの常時接続、高速通信の普及
- 不動産流通業のECサービス提供の急速な進行
- 不動産ASP業者の登場
これらの不動産業を取り巻く環境変化は、この業界が大手を中心に中小業者が再編され、やがては統合された巨大な不動産電子市場の出現というシナリオになりそうだ。
不動産流通市場で、インターネットによる成約率が急速に増加しており、大手業者を中心に集客のためのWebサイトが構築されている。従来は、不動産購入を考えているユーザーは、まず不動産業者の店頭を訪れ業者から出された資料を検討し案内を受ける、というのが不動産購入の常道であった。しかし現在は、家庭のパソコンの画面で各業者のWebサイトを見ながら希望物件を探す。ポータルサイトは不動産購入時の税金、引越しサービス、その他不動産に関するさまざまな情報も豊富に掲載している。
インターネットによる希望不動産探しのパターンは今後の常時接続、高速通信の普及により爆発的に増える。ユーザーサイドに立って不動産情報をインターネットで探すという作業を考えるとまず物件量が多いサイトほどよく、先進的ECサイト構築業者に人間工学、認知工学を駆使して作らせた出来の良いサイトほど希望物件の検索などでストレスを感じさせない。つまりユーザーは、物件量が豊富で洗練された大手のサイトを選んで希望物件を探す。規模と効率のメリットが最優先する。
中小の不動産業者は殆んど物件検索機能を実装したECサイトを持っていない。見られるレベルのECサイト構築は数千万円のコストが必要だからだ。激変する不動産流通市場に乗り遅れないためにはECサイトのを導入が急務だ。このような中小業者のニーズをうけて登場したのが不動産ASP業者である。不動産ASP業者は、機能にもよるが月数万円の使用料で、物件検索機能を実装したECサイトを不動産業者にレンタルする。ソフトやサーバーはASP業者が保有し、不動産業者はWebが見れるクライアントパソコンだけあればよい。手軽にECサイトを活用できるため不動産ASPによる業者の電子市場参入は可能となる。
この時点では、電子不動産市場では業者のECサイトの乱立が起きるが、先ほど触れた規模と効率の最優先利益によりユーザーが中小業者のサイトを淘汰してしまう。電子市場で淘汰された中小業者に救いの手が差し伸べられる。大手業者のポータルサイトにビルトインされた形で大手業者によるASPサービスを有料で受けるという選択だ。実はいくつかの大手業者も不動産ASPのビジネスモデルをすでに構築または構築中である。大手業者サイドでみると物件を広く集めさらに集客を高めるために中小業者を再編しビルトインするメリットがある。ユーザーにとって、効率的に希望物件が探せるシンプルな電子市場環境ができあがる。
今、レインズの60万ともいわれる物件公開の動向が注目されている。中小業者を消滅するとして会員に反対が多いが電子市場が大手業者⇔中小業者で再編、統合された環境になると公開への移行は円滑に行われる。大手業者はこのへんをすでに視野に入れているかもしれない。レインズと大手業者の物件がワンサイトでシームレスに検索できれば国内に巨大な不動産電子市場が誕生する。
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