アンコ業者の消滅

アンコ力士は聞いたことあるけどアンコ業者って何?と質問されそうだが、不動産業界用語で直訳すると「なかに業者が詰まっている」と言う意味だ。つまり、売主、買主が不動産契約の段階になると予定外の不動産業者が数人出現する。買主から頼まれたのはA業者だけと思ってると、A業者の先にB業者がおりBが買主から委託を受けた業者だったという実態で、同様なことが売主側にもあったりする。その結果、業者にとっては予定していた手数料の分け前が減るといういまいましい事態になる。

最近は専任媒介契約などであまり見られなくなったが、不動産ブローカーが活躍していた時代は、よくある話であった。筆者も司法書士として契約、登記の段階で業者、売主、買主の金銭の授受に立会したが、バブルの頃はその手数料の巨大さに比べ自分の報酬のあまりの少なさを実感したものだ。時代は変遷しインターネットが社会、経済形態を根底から変革する世の中になった。流通の中抜きによる淘汰は不動産仲介業を直撃している。アンコ業者どころか買主サイドの業者も壊滅しかねない状況だ。

しかし不動産業者の中抜きには楽感的見方がある。車や本などの定型品と違い不動産は個別性が強く、取り巻く法制も複雑であり素人間で取引するにはリスクが大きいし、金額も数千万はする。買主は専門業者に任せて円滑迅速に取引をするという選択をするだろうという理屈である。

この見方は一面当っているが、事態はそう甘くない。求められる専門性のレベルが格段にシビアになり、取引金額の3%の現行手数料は無理で、我々専門業務業者並の報酬になると思われる(米国の不動産業界では手数料相場は下落している)。反面、専門的能力(投資判断、不動産デューデリジェンス業務など)に優れた業者はビジネス拡大のチャンスとなる。

今、ネット市場でインフォメディアリ(情報仲介業者)の存在が注目されてきている。情報と仲介を合体したこのビジネスは、インターネットでの商取引で売買当事者の取引リスクを補完し有益な情報を提供することに特化したサービスである。不動産仲介のバイヤーズエージェント制も同範疇の業態であり、先進的業者は積極的に参入し対応すると思われる。

IT化は、その業態でインターネットにより何が淘汰され如何なるニーズが新たに発生するかを見極める分析力が勝ち組み、負け組みを峻別する。

■関連記事
  不動産仲介業者がITで存亡危機
      

おすすめ記事