発行ダイオード(LED)が変える住宅の未来照明
発光ダイオード(LED)は、研究者が特許をめぐり、発明の対価として200億円を請求した訴訟で有名になったが、LEDは、すでに実用的な使用例として道路交通表示板や携帯電話、デジタルビデオカメラ、PDAなどの電子機器のバックライト、屋外大型用デイスプレイ表示などに用いられている。またその神秘的、未来的な発光が、装飾用などに使われている。汐留ビルディングのエントランス前にあるアートワーク「光の庭園」では、ガラス柱下に埋め込まれたLEDでライトアップがなされ、千葉県柏駅前の複合商業施設システムランドビルのファサード壁面にはLEDが埋め込まれ、ピュアな美しいカラーライティングを演出している。地球博(愛知万博)会場の水のドーム「ミズノバ」でもLEDが効果的に使われていた。
白熱灯や蛍光灯に替わる「第4世代のあかり」とよばれるLEDは、半導体であるLEDチップが半永久的に使えるため、白熱灯や蛍光灯に比べて長寿命であり、小電力でも点灯可能なため、省エネや環境面でメリットが大きい。さらに熱線や紫外線が微量で調光、点滅が自在などの優れた特性を数多く持つのだが、明るさが蛍光灯や白熱灯に劣り、コストが現状で他照明に比べ割高なため、売上高の9割以上は業務用で、家庭で普及するネックとなっていた。
LEDのあかりに魅せられた筆者は、かねてより住宅用に使えないかと思っていた。LEDは、長寿命でコンパクトなため、取替え困難で施工が難しい天井、壁、柱に直組み込みができるので従来までの家庭用照明では実現できなかった高級感溢れる空間演出が住宅にも広がることになるからだ。浴槽や壁に埋め込まれたLEDで非日常的な表情を見せる癒しの浴室、壁面や天井に組み込まれたLEDのカラーライティング・調光が闇と光、暗と明のグラデーションで織り成す幻想的な居間やホームシアター、さらには人間工学に基づいたLEDの照明効果により快眠が得られる寝室など考えるだけで楽しい個性的な空間が次々に実現してしまう。またLEDは発熱が殆どないのでインテリアのグリーンや絵画などを至近でライトアップしても傷みや劣化が少ない。
ここにきてメーカー各社が、家庭への本格的な導入に向けて始動した。例えば、業界最大手の松下電工は、昨年チップを多数搭載した「NNN20623」を発売した。課題であった明るさを白熱灯相当に近づけ樹脂製のカバーの工夫で柔らかく落ち着いた感じの光が出るようにした。LEDで明るさを出すには電流の量を増やす必要があるが、発熱量が増加し、パッケージの樹脂の劣化が進むので、明るさアップと長寿命維持を両立することは難しいのだが松下電工は、耐熱性や発光効率向上が可能なシリコン樹脂系の素材を開発してパッケージに採用し、寿命4万時間を実現した。
さらに今秋頃、60Wで店舗の主照明にも利用できる「MFORCE」を発売予定。LED照明器具で世界最薄サイズ・業界最高の明るさを可能にした。さらに青色LEDチップと赤と緑を混ぜた蛍光体を組み合わせて使用することで、優れた演色性も実現。メンテナンスが困難な場所、長時間点灯が必要とされる場所など、従来の照明器具では設置しにくかった場所や店舗以外の用途、例えば一般家庭の廊下、階段、トイレなどの採用を手始めに住宅向けの道筋を探る狙いもあるようだ。
いずれにせよLEDメーカーは、2010年頃に蛍光灯と同等の100ml/Wの発光効率のLEDの実現を目標にしており、2015年頃には急激に普及すると予測している。LED照明をお手軽値段で家庭に取り付けできるようになるのはまだかなりの時間がかかるが、住宅の購入や建て替えを検討する際には、従来の照明概念と異なる異次元の照明効果の実現に備えた設計を頭の片隅にでも置いておくと夢のような住空間が誕生するかもしれない。
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