今後の住宅需要

国土交通省が発表した新設住宅着工戸数は前年度比2.5%増の約117万3千戸と4年ぶりに増加した。住宅大手8社の2003年度連結決算も経営再建中のミサワは減収減益となったが三井ホームを除く6社が増収を確保した。金利先高懸念が追い風となっており、さらに利益面では各社のコスト削減努力が功を奏している。例えば住友林業は屋根工事の発注方法や外壁パネルの施工方法変更で年間72億円削減、三井ホームは資材調達コストなどで年間35億円の製造コストを削減し、いずれも営業利益の向上に貢献した。

大手銀行による住宅ローンも顧客の争奪戦に激しさを増している。大手行の前年度末住宅ローン残高は5行合計で38兆円弱と前年度比3兆円増えた。これは企業向け資金需要が低迷しており、個人向け業務の収益拡大をめざしているという各行の事情と住宅金融公庫の業務縮小で公庫から民間融資へ移行している実態を反映したものといえる。

住宅建設の主役は団塊ジュニア世代に絞られてきた。リクルート調査によれば首都圏分譲1戸建購入者に占める1971~74年生まれの比率は、2003年で22%。2年間で約15ポイント上昇している。団塊ジュニア世代の特徴は家賃よりローンで持ち家が得という計算に加え、親の家には戻らず1戸建の持ち家指向が強い。親である団塊世代からの資金支援が豊富で夫婦共稼ぎで収入が比較的多いともいわれている。この世代の住宅購入のポリシーは値ごろ感の追求だ。値ごろ感追求のポリシーは、首都圏では東京都心から1時間程度のエリアで価格も2千万-3千万円台の物件が多く、大手業者より事業地域を絞り込み、値ごろ価格で提供する中堅業者が活躍する場が多い。

団塊ジュニア世代に支えられた住宅建設であるが、金利上昇、団塊ジュニア世代による需要一巡後の住宅需要の中期展望となると悲観論が多くなる。最近の資材高騰もマイナス要因だ。

明海大学伊豆 宏教授は金利上昇で2004年度の新設住宅着工戸数は前年度より500戸程度少ない116万9千戸となり、再び減少に転じると見ている。「シミュレーションによると金利が1%上昇した場合、着工戸数は約3万戸減少する。金利が上昇すると、世帯の資金調達可能額が低下し住宅取得能力が下がるためだ(日経産業04.05.25)」

日本総合研究所経済研究センター所長山田久氏は団塊ジュニア層の下支え効果が剥落した後は、中古住宅やリフォームへ需要が移行し、住宅市場が変化すると予測する。「新築が買った瞬間に2割価値が落ちるなどと言われるのに比べ中古は流通市場も確立し価値が安定している。割安感もある。その分新築が抑えられ、新設住宅着工戸数の水準が切り下がる可能性がある(中略)足元の新設着工戸数の下げ止まりで今、住宅会社の目は新築に目が行っている。しかし、中古住宅やそのリフォームに一定の需要があることを意識しないと、将来、経営が後手に回ることになる(日経産業04.07.20)」と指摘する。

欧米に比較し、短命だといわれる日本の住宅の寿命、市場価値の急激な低下は中古住宅市場の健全な育成を阻んでいる。また金利上昇時には低所得層の購買力を上げ、需要を下支えする施策必要となる。融資面での優遇や公庫に代わる政策金融の充実などが解決されなければ本格的な人口減少時代を迎え住宅需要は冷え込んでいくだろう。

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