RC造建造物の劣化を再生する
建設が進んでいる住友不動産の地上37階建超高層マンション「シティタワー新宿副都心」、高さ124m、底辺24mのアスペクト比は30階建以上の通常値4以下を超え5であるが、細長く天空に向かつて聳えるこの建築物を支える工法が清水建設が開発した「SHコアウォールシステム」である。建物の芯にあたる超高強度・高耐火コンクリートを高強度鉄筋USD685がさらに補強する。柱や梁を細くし、住戸の設計自由度を上げたこの工法は鉄筋コンクリート製の柱・梁を多用し、住戸の快適性を犠牲にしてきた従来のラーメン構造の超高層マンションの常識を打ち破った。
都市再生、超高層マンションラッシュのなか新技術開発でゼネコンの受注競争も熾烈を極めているが、反面、高度成長期に建設されたビルやマンションなどの構造物は今後、老朽化を迎えるため補修、補強、維持管理にかかる費用の急増がクローズアップされてきた。コンクリートの需要も新設工事から劣化に対応した補修が主体となる時代に転換していこうとしている。
劣化コンクリートを再生するシステムが注目を集めているのもそうした背景があるからと言える。いままで破壊工法が主流だったコンクリートの補修であるが、近年、コンクリートそのものを再生する技術が注目されてきている。例えば、電気化学工業㈱はコンクリートを再生する工法としてコンクリートの劣化原因を根本的に取り除き、コンクリートが本来備える鋼材防錆機能を回復するデンカテクノクリートシステムを採用している。
山陽新幹線の高架橋補強工事にも本格採用されたこの工法は、中性化を受けたコンクリートを再生するアルカリート工法と塩害を受けたコンクリートを再生するデンリート工法からなる。同社のサイトによると
アルカリート工法
アルカリート工法は、中性化したコンクリートに電気化学的にアルカリを再付与し、再生化する補修工法で、コンクリート表面に陽極、内部鉄筋に陰極を設け、外部電極と内部鉄筋の間に所定の電流密度で、直流電流を流して、仮設電極側から特殊アルカリ溶液を浸透させ、コンクリートを再アルカリ化させる。
デソリート工法
デソリート工法は、塩害により劣化したコンクリート構造物から塩分を除去し、電気化学的に再生させる方法で、アルカリート工法と同様の電極設定を行う。電気的イオン泳動原理を利用し、コンクリート内部の塩素イオンを陽極に引きつけて除去する。
欧米に比べ、RC造の寿命が短いと言われてきた日本のマンションやオフィスビルなどの建造物であるが、このような再生技術でコンクリートに新たな生命力が蘇るとすれば、不動産投資、つまりプロパティマネージメントやアセットマネージメントなどの長期戦略も変わろうと言うものだ。
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