不動産投資ファンドは活況
住信基礎研究所によると大手も含めた不動産私募ファンドの市場規模は昨年10月時点で約5120億円(運用資産ベース)、公表されている実積ベースでも市場規模は1兆円を超えているといわれている。国内の不動産投資ファンドの投資先はオフィスビルや賃貸マンションと決まっていたが、ここにきて米国のように投資先が倉庫、ホテル、学生マンションと多様化し、市場規模も急速に拡大を続けている。
2003年10月11日の日本経済新聞によると学生マンション企画管理大手学生情報センターはUFJグループと組み学生マンション専用ファンドを組成した。機関投資家中心に一口数億円規模で投資を募り、家賃収入などで配当に当て利回りは年7-8%を想定している。不動産賃貸の幸洋コーポレーションは日立製作所グループで生活関連事業の日立ライフと共同で全国の倉庫を対象としたファンドを組成する。倉庫は維持コストがかからないため10%以上の利回りが見込めるという。キャピタルアドバイザーズは経営破たんした地産が保有していた都内のホテルなど数棟を取得した。 不動産投資ファンド活況の背景に銀行が個別不動産のキャッシュフローや収益力を重視し、ノンリコースローンを増加しており、不良債権処理や国内大手企業が保有不動産など固定資産の売却を減損会計導入を控え地価下落リスクを避けオフバランスするため盛んに売却しているなどの追い風が吹いている現実がある。
話は変わるが、不動産私募ファンドなどが活用している証券化という金融技術は、映画、ゲームソフト、イベントなどのアミューズメント業界も「コンテンツファンド」という形で導入されている。制作費や開発費を投資家から広く募り、興行や作品の成功であげるであろう利益を出資金に応じて配当するというわけだ。 投資資金の出し手であるが、当初の海外投資家から国内投資家に移行している。新興上場企業のダビンチやケネディウイルソンジャパンなどが不良債権処理やリストラで処分されるオフィスビルなどに投資するファンドを盛んに組成しているが、年金基金のマネーが流入している。
日経産業新聞によると埼玉県トラック厚生年金基金と税制適格年金はダビンチに計50億円分の運用を委託した。取得物件の選定や売却などの投資ファンドに全面委託する一任勘定方式を採用している。機関投資家の投資スタンスとしては従来に比べ踏み込んできているのが特徴だ。ケネディ・ウィルソン・ジャパンは投資家を企業年金基金に限定したファンドを立ち上げ、120億円強を調達する。
不良債権処理も峠を越えたと言われるが、ハゲタカといわれた短期売買型の米系不動産ファンドに代わって、米国の不動産大手が日本の不動産投資信託の上場を狙いJ-REIT市場に相次ぎ参入してきている。世界最大手米シービー・リチャードエリス・グループ1000億円規模の投資法人を作り賃貸マンション4,000戸を運用する予定で利回りは年5%前後を想定し、来年5月の上場を狙っている。さらに米GM傘下の不動産金融会社、日本GMACコマーシャル・モーゲージは近鉄、明治生命と資産運用会社を設立。1,000億円弱のオフィスビルを今秋に上場予定である。
国内勢、海外勢の参入で不動産投資信託市場も一時の低迷から米国の時価総額20兆円市場を目標に活況を呈していく気配も出てきたが、まだ今後の地価動向や国内景気は予断を許さず不透明。不動産市場がさらに盛り上げるには信基礎研究所の調査によると80兆円超の国内企業年金のうち不動産投資に振り向けている額は僅か0.1%程度という機関投資家のさらなる不動産市場への参入や富裕個人投資家などの幅広い投資層の参入が必要になるが、いずれは優良物件の取得コストの高騰、枯渇の果てに中小ファンドの吸収、淘汰も進むと言われている。
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