賃貸住宅の革命
デフレにリストラ、賃金低下が重なり、家計の実質債務はここ数年急速に膨らんでいるため多額のローンを抱えてマイホームを購入するより、賃貸を志向する層が増えている。一方、富裕層は、低金利下で資産の運用を不動産投資にシフトしており、大手のハウスメーカーはリフォームと並び賃貸住宅部門へ傾注している。このような背景はあるが、賃貸アパートやマンションなど不動産投資をするには不透明な環境である。まず過剰供給による家賃低下、空室率の増加、さらに地価下落が恒常化しているため資産価値の劣化も速い。不動産投資になかなか踏み切れない投資家が多いのではないだろうか
このような不動産投資のリスクを回避する手法として、大手ハウスメーカーやゼネコンにより、革新的商品が創り出されている。基本的コンセプトはアパートから自宅への転換、自宅とアパートの併存である。アパートから自宅への転換を予め想定し、対応した建築技術は殆ど前例がない。また自宅とアパートの併存形態については、従来からあったし、それ自体は珍しくないが、これも独創的な建築技術で自宅専用から自宅とアパートの併存を予め想定している点が新しい。
■不動産の動産化(アパートをそっくり移設)
大和工商リースが9月から販売する「ユニ・フレックス」は不動産が動産になる画期的なアパートである。つまり、建物自体をそっくり別の場所へ移設できる。部屋を繋ぎ合わせて作るユニット式建物のため、接合部を簡単に解体して別の場所へ運び、原型に復旧できる。具体的に言うと「ユニ・フレックス」は、1住居が4ボックスから構成される独立型ユニット工法を採用した。水廻りなどの設備を1つのボックスに集中させ、外部廊下・階段を取り付けないメゾネットタイプである。施工を簡略化し、現場でボルトを用いて接合する。同時に、解体も容易なため、将来のコスト負担が軽減され、建物そのものの移設も可能となる。移設時は4つのユニットを分離、内装設備を残したままクレーンで吊り上げ、大型トラックで移送後、再びボルトで接合し、原型に復旧する。建物の基礎は現場打ちコンクリートでなく工場生産のプレキャストコンクリートを使用しているため再利用が可能である。
ターゲットとなる顧客は、定期借家などで一定期間アパート経営後、自らが居住する戸建てとしての利用を考えている土地保有者になる。価格は3.3平米当たり27万円、移送費用は100キロで約45万円、建築投資額が安価であるため大和工商リースによれば投資利回りは通常より5~6%向上するという。
■3層住宅を提案 マンション建築柔軟に
大林組は分譲マンション開発業者に、1つの住戸が3階にまたがっている「3層メゾネット」の提案を始めた。個性派マンション作りの手助けをし、建設受注の上積をねらう。商品名は「ダイナミック アセット ハウジング(DAH)」。3層メゾネットを1つの箱にすることで高層マンションの一部に自由に組み込めるようにした。可変式の階段や扉、開閉床を採用しており、生活スタイルの変化に合わせたリフォーム工事も可能。「子供が巣立った後で2層メゾネットと一般住戸の2戸に区分けすれば、賃貸収入も期待できる」と見ている。施工価格は仕様によって異なるため明らかにしていない。まず1戸当たり1億円超の採用を呼びかけていく考えだ。大林組は大手ゼネコンの中でも建築事業に強い。2003年3月期は約80物件のマンション建設を受諾している(日経産業07.24)。
「ダイナミック アセット ハウジング(DAH)」は、ライフスタイルの変化に対応し、 居住空間を増減できるため将来はその一部を賃貸に転用可能な資産活用型多世代・高耐久SI住戸形式集合住宅といえる。
これらの併用型の場合、賃貸収入をローン返済資金に充てられ少ない自己資金で住宅建設ができるほか賃貸⇔自用と使用を転換できるオプションを持つことでリスクヘッジできるというメリットが大きい。
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