なんでマンション建設費が上昇?
住宅新報紙によると「昨年春以降、分譲マンションの建築費がじわじわ高騰している。業界関係者の話を総合すると、1年前に比べ10%以上も上昇、なかには20%以上もアップしているケースもあるという。背景には、銀行主導もあり、受注高に力点を置き採算を度外視してきたことに対するゼネコンの軌道修正がある。デベロッパーは、建築費のコストアップをそのままエンドユーザーに転嫁するのは難しい情勢で、従来にもまして用地の厳選、ゼネコンの見直し、ゼネコンや建築設計事務所との密な情報交換、諸経費の抑制などが課題となっている。」
マンション会社の営業マンから「建築費も上がってきたことだし、この辺で…」と言われると、ゼネコンが一時のどん底状態を脱し仕事も増えてきて受注に強気になったのかな…この分では土地値の底も近いのでは?と思い込みがちだが、建築費上昇の背景はそういうことではない。鹿島、大成など大手ゼネコン4社の経営状態は2002年9月中間連結決算は、完成工事の減少や、工事採算の悪化で4社全てが前年同期比減収となり、経常損益が悪化した。
日本経済新聞11月20日記事によると「工事の採算を示す完成工事総利益率(単独ベース)は大成建設以外の3社はともに悪化、特に大林組は主力の建築工事の利益率が4.8%と同1.6ポイント低下、販売費、一般管理費をまかなえず営業損益段階から赤字になった。(中略)大手4社の完成工事総利益率悪化の元凶は建築部門の不振にある。ゼネコン各社は、汐留や六本木など東京都心で来年にかけ相次ぎ開業する大型ビルの激しい受注競争による低採算工事やマンション工事の安値受注が反映されるためでここ数年のつけが重くのしかかる」
なんのことはないゼネコンが1-2年前に安値受注したマンションが続々と完成しているが、締めてみると大幅赤字だったことが判明したという訳だ。利益率が高い公共工事が削減され急減しているため、残された成長市場ということでマンション工事になだれ込み、激しい受注価格競争を繰り広げた結果なのだ。さらなる業績悪化の進行となると銀行による赤字受注の監視が厳しくなり、その結果、建築費が上昇したという顛末である。
マンションデベロッパーは、建築費上昇分を販売価格にオンすることはしないだろう。首都圏のマンション売れ行きに陰りがでてきたと言われる状況に加え1次取得者の購入意欲は雇用不安、賃金デフレで厳しいため、用地仕入れ段階で設計事務所とコストマネジメントを駆使し、設計VEで経済設計を徹底し、建築コスト低下で乗り切るか、最悪の場合、品質に問題がある欠陥マンションを販売することになるだろう。
ゼネコンの立場はますます苦しい。信用不安が増幅され、下請けの手形支払期限短縮、現金取引の要求が増え、住設機器メーカーの納入価格も上げられる。能力のある専門業者は、ゼネコンの協力会の枠を超え独自に分離発注などに流出する。日本的ゼネコン一式発注も解体の危機さえ指摘されている。
官民の建設工事が急減するなか、前年実積比で建設業者は2.5%、就業者数は3.3%しか減少していない。明らかな供給過剰。債務棒引きをした債務免除ゼネコンが借金がなくなり身軽になって入札に参加してくる。市場競争の不公平感が広がっているうえ、公共工事は地方自冶体の予定価格の事前公表の普及で採算度外視のダンピング入札をしてくる業者も多い。
ゼネコンをめぐる混乱と経営環境の悪化は増幅されるばかり、最後は、政府が唱える都市再生による大型工事頼みというのがゼネコンの現実なのだ。
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