司法書士、土地家屋調査士制度が大きく変わる

国民生活、経済活動と密接な関わりをもち、職域としては社会的に定着した感がある両制度であるが、ここにきてその在りかたが大きく変わろうとしている。現在、社会の複雑化、国際化の状況下で経済界などの要請もあり規制緩和の動きや、司法制度改革の動きがあるが、これが司法書士制度や土地家屋調査士制度に大きく関わろうとしている。

■規制緩和に関連する動向

98年3月閣議決定された「規制緩和推進3ヶ年計画」で規制緩和の観点から公的資格制度の横断的見直しが政府の計画として取り上げられた。本年3月に閣議決定された「規制緩和推進3ヶ年計画(再改定)」では司法書士、土地家屋調査士などの業務独占資格について具体的見直しの視点、基準及びそれに対する措置内容が掲げてあり00年中に「国民生活の利便性向上、当該業務サービスに係る競争の活性化等の観点から、業務独占規定、資格要件、業務範囲等の資格制度のあり方を見直し、その結果に基き所要の措置を講じる」とされている。

司法書士制度や土地家屋調査士制度につき具体的な措置内容としては、

  • 強制入会制度のあり方の検討
  • つまり司法書士となるには、事務所を設けようとする地を管轄する法務局または地方法務局の管轄区域内に設けられた司法書士会に入会しなければならず、入会している司法書士に限定して業務を行うことができるとされているがこの面の検討がされる

  • 法人制度の検討
  • 司法書士は、個人資格者として業務を行い、法人形態で業務を行うことができない。これについては業務の継続性の面より問題があった。業務遂行中に司法書士が死亡した場合、あるいは過去の業務につき紛争等が生じた場合など依頼者に不測の損害が発生する場合があるからだ。法人形態で別の司法書士が業務の引き継ぎ等をできる体制が望ましい。この意味から司法書士1名による1人法人は認められないと考えられる。形態として株式会社、有限会社等は先に来年法人化が可能となった弁理士の例から見て考え難い。司法書士、土地家屋調査士、行政書士、税理士等からなる合同事務所に法人格を認めるかについては、各業種の主務官庁の検討、合議、調整が必要で相当将来の可能性となると思う

  • 報酬規定、広告規制の検討
  • 報酬については規定から基準に現在、変更され原則として依頼者との間で自由に設定できる。広告規制は直接法令で規制されてないが司法書士法施行規則第21条で不当な手段を用いて嘱託を誘致してはならないとされ、詳細な運営は管内司法書士会でなされていた。過去、この業界は閉鎖性が強く広告行為はかなり規制を受けていたため陰で巧妙に誘致行為が行われていたというのが実感だが、最近は会の運営も相当柔軟になってきた。これらは自由競争、経済の活性化よりみて当然の方向性と考える

■司法制度改革に関する動向

司法制度改革については99年通常国会で司法制度審議会を設置するための法案が成立し、同年7月政府に同審議会が設置され、国民がより利用しやすい司法制度の実現の観点から弁護士と隣接専門職種との関係が取り上げられ、昨年12月公表された「司法制度改革に向けて(論点整理)」の中に「弁護士と隣接法律専門職種との関係」項目が掲げられ本年8月の集中審議で司法書士等隣接法律専門職種の活用につき審議された。

審議内容は、小額事件は弁護士の関与が少ない実体、過疎地域に弁護士が少ないことや、司法書士は訴訟業務についてもある程度の知識、経験を有することからみて簡易裁判所における民事訴訟、調停、和解の代理権を一定の要件を満たす司法書士につき認めようとする見解あるが、反対意見もある。これからの動向が注目される。

※本文は「月刊登記研究」に基き、筆者の私見を加えた。筆者の職域上司法書士制度を主体とした。

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