エキスポランドの事故 / 消え行く遊園地
大阪府吹田市の遊園地「エキスポランド」のジェットコースーター「風神雷神Ⅱ」の事故が、連日のようにマスコミに取り上げられている。筆者の追憶のなかにある遊園地の光景は、ジェットコースーターが登場する前の「観覧車」で、大きなタイヤのドラムのようなフレームにゴンドラを取り付け、ゆったりと回転して昇りつめ、眺望を楽しむ乗り物だ。巨大な風車のようなあの優雅でのどかな乗り物が思い出されるのである。ジェットコースターという乗り物は、恐怖感を安直に刺激する仕掛けのような気がしてあまり好きにはなれなかった。この乗り物は、さらなるスリルに応えようと次々と新しい仕掛けを技術革新していったが、この頃から遊園地にやがて訪れる宿命を予感していた。
エキスポランドは、関西では老舗の遊園地で、遊技機メーカーの泉陽興業が発行済み株式数の22.5%を保有し同社グループで計37.5%を出資している。「風神」は大手遊具メーカー「トーゴ」が製造したものであるが、同社は2004年に経営破たんし解散している。エキスポランドは購入後、平成4年3月から運用を開始し、導入後のメンテナンスは所有者の同社が独自で実施していた。
エキスポランドもそうだが、全国の遊園地は、入場客数が恒常的に減少し、経営的に苦しい。なかには経営難から閉鎖に追い込まれて消えていく施設も多い。遊園地に人が来場しなくなった理由は、いくつか指摘されている。少子高齢化で子供が少なくなったこと、レジャーの多様化やTVゲームの普及などが構造的な原因だが、テーマーパークが近くに開業すると客足が激減するらしい。エキスポランドも大阪市にUSJが開業後の06年はピーク時の半分に激減した。大型SCに買い物客が流出し、壊滅的な打撃を受ける既存の中小スーパーに似た資本の論理である。
5月8日の日経紙によると、「ゴールデンウィーク中に東京都心部に登場した東京ミッドタウン、新丸の内ビルなどが好調な入場者数を記録した。都心部のホテルは総客数の急増で、稼働率は前年並みであったが、客単価が高まった。東京ディズニーランドと東京ディズニーシーは新施設効果は波及せず来場者は前年並み。大阪のUSJは、前年比8%減だった。」と報じており、都心回帰がここにも見て取れる。注目すべきは、大型テーマパークも来場者に苦戦している事実である。
子供の頃の遠い記憶にある遊園地は、子供と親たちや若い恋人たちで溢れ、ゆっくりと時が流れていた。夜景にライトアップされたメリーゴーランドは、幻想的でメルヘンチックな美しさに彩られていた。近年の遊園地は、あのような情緒が消え、恐怖を人工的に演出し続ける絶叫マシーンの即物的なイメージで占めらてしまっていた。不幸な遊園地は、やがて飽きられ、訪れる人もなくいずれは消えていくのだろうか?