ブロードバンド時代の不動産ウェブサイトのコンテンツ戦略

ADSL 、CATV 、光IP通信網などの高速大容量のサービスラインアップの拡充により、ブロードバンド・ユーザーの急激に増加している。ADSLやCATVを使って数百k~数Mビット/秒でインターネットに接続するユーザーである。ADSLユーザーは8月末で50万人強で、CATVユーザーと合わせると150万人を超えている。

ADSLの伝送速度は8Mビット/秒に向上し、NTT東日本/西日本の光ファイバー接続サービス「Bフレッツ」は10Mビット/秒、100Mビット/秒とさらに速い。数百kビット/秒以上の帯域を使う今後、ブロードバンドサービス時代の到来に伴い、不動産関連業界でもリッチコンテンツを利用した配信ビジネスやウェブサイト開発が本格化することが予想される。

動画やアニメーション、高解像度の写真やブラウザ上の3次元空間を作り出すWeb3Dなどのリッチ・コンテンツを活用したウェブサイトの開発が不動産関連サイトでも進んでいる。これらのコンテンツを活用することで従来の平面的で静態的サイトに比べ格段に情報が解りやすくユーザーのアクセス数にも差が出てくる。ユーザーが実際に現地を訪れ営業マンと物件をさまざまな角度から見たり説明を受けたりするのと近い環境を、ウェブ上で提供できる。

ある不動産サイトでは3次元空間にマンションの物件情報ページが並ぶ。3本座標軸があり、ある方向に進むと、ページに掲載された物件の家賃が徐々に高くなっていく。別の方向に進むと通勤時間が変化、残りの方向は間取り(広さ)である。「もう少し家賃が安く手間取りが狭い物件はどんなものがあるのか」、「通勤時間がもっと短い物件は」という検索も感覚的な操作で可能。物件情報ページの集散状況から、相場などを把握することもともできる。

これは、NTT情報プラットホーム研究所が開発した「InfoLead」で想定されるアプリケーションの一例である。InfoLeadは、多数のウェブページを仮想的な3次元空間上に配置して、目的や方向といった位置関係がそのページの概要を示し,その中を移動するという感覚的な操作で目的のページを探し出せる。ただし、このシステムを効果的に利用するためには、あらかじめXML(拡張可能マークアップ言語)などを利用して,座標に用いる値などを指定しておく必要がある。NTT研はInfoLeadを、FTTH(ファイバー・ツー・ザ・ホーム)サービスなど10Mビット/秒以上の高速大容量ネットワーク向けのシステムと位置付けている。数多くのウェブページを表示するために、大容量のデータをダウンロードする必要があるからだ。(日経インターネットテクノロジ)

平和不動産のサイトは各部屋からの眺望をその部分をクリックすることでパノラマ表示する。三井不動産販売住宅マンション情報サイト「Homewith.net」は、パノラマ技術を使って建物の内部を表示ブラウザ上でマンションの内部を移動でき、360度を見渡すことが可能 単に写真を見るだけよりは建物の様子を実感できる。

米国で普及しているネット内覧が日本でも進みそうだ。パノラマ写真がデジタルカメラに専用機器を装着するだけで簡単にできるツール「パノラマストリームBasic」をディー・リンクが開発した。パノラマストリームは,周囲360度を撮影できる特殊レンズとオーサリングツールをパッケージ化したもので,市販のデジタルカメラやビデオカメラにレンズを装着するだけで,手軽にパノラマ映像を作成できる。撮影された円形の画像をコンバータで加工すれば、帯状のパノラマ写真が出来上がる。この画像を間取り図と組み合わせることで物件のパノラマ画像が作れる。「パノラマストリームPro」は物件周辺の地図と組み合わせた画像が作成でき動画にも対応しているため物件紹介のビデオ映像も作成することも可能だ。

自社の不動産販売用チラシをそのままウェブページに広告として配信する。チラシの場合、そのままウェブページに公開すると大容量になりブロードバンド・ユーザーといえども実用に耐えられない。Flashpixのズーム機能を使えばダウンロードが速くなりユーザーを逃がさずに済む。まずチラシ全体を表示し、ユーザーが見たい部分をズームする。ズームするたびに拡大したコンテンツをダウンロードして表示する。1回の操作でダウンロードするサイズを1Mバイト以下に抑えるようにすればブロードバンド・ユーザーはそれほどストレスを感じない。

ウェブブラウザ上でアニメーションを使ったインターフェースを提供するにはマクロメディアの「Macromedia Flash」が利用されることが多くなった。物件紹介で動的ページを作るには有効なツールである。動画を活用する際にSMIL(同期マルチメディア統合言語)で動画、音楽、HTMLなどの複数のリソースの同期をとることができる。例えば動画の特定部分の静止画をインデックスにしてユーザーが画面を選択し、動画をそこから再生することができる。

ナローバンドの環境下ではウェブデザイナーはいかに軽いコンテンツで8秒ルールを実現するかに心血を注いできたが、高速大容量回線が普及すれば物件に応じたコンテンツをユーザーにいかに快適で魅力的に見せるかの勝負になってくる。

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