不動産流通の重要課題 / レインズに関する日経記事と建設省の見解
建設省は宅地建物取引業法を改正し、全国の不動産仲介業者がデータベースとして持つ不動産物件情報を消費者がインターネットで検索して不動産の購入を交渉できるようにする。物件を探す際に仲介業者を経由しなくてすむため、買い手から徴収している仲介手数料を免除する方向で調整する。(日経10.15)
日経のこの記事に、不動産業界に衝撃が走った。記事にあるように現在の不動産売買では、宅建業法により買い手は物件を探した業者に、売り手は売却先を探した業者に手数料を支払うようになっている。買い手が負担する仲介手数料を免除する簡単にいえば業界全体で収入は半減する。この記事に対し建設省は、10月15日に一部新聞で報道された「業法改正し、レインズ公開で買い手からの仲介手数料免除する方向で調整」との記事に対し、事実と異なるとして訂正記事の掲載を要求した。
同省が事実と異なるとした主なポイントは、
- インターネット時代の不動産取引のあり方については、情報化時代の指定流通機構(レインズ)のあり方も含め、基礎的な勉強を始めたところであり、宅建業法の改正の要否やその時期まで方針が決定されたという事実はない
- 媒介報酬について、買い手から徴収している媒介報酬を免除する方向で調整しているという事実はない
という2点であった。建設省の否定で一件落着したかにみえるこの騒動だが今後の不動産仲介業を見据えると下記の重大な問題を浮き彫りにした。
- レインズが保有する不動産情報データベースのネット上での一般公開の問題(背景と今後の動向)
- 建設省で検討している「バイヤーズ・エージェント」制度
■レインズが保有する不動産情報データベースのネット上での一般公開の問題(背景と今後の動向)
●レインズとは
昭和55年の宅地建物取引業法の改正により、専任媒介契約については、業界8団体の認定する「流通機構」へ売買等の情報を登録し、情報の公開による成約の促進に向け努力することとされ、全国で「認定流通機構」が設立された。
しかし、相互の機構間の情報交流は相互のシステム間連携の違いにより不可能なケースも多く、充分な成果をあげることはできなかった。建設省は、流通機構相互間の連携を可能とするため、昭和61年、(財)不動産流通近代化センターと共同して、レインズと呼ばれる不動産流通標準情報システムを開発。平成2年からの専属専任媒介契約制度の実施にあたり、この契約による取引については、宅建業者に建設大臣の指定する流通機構への登録が義務付けた。
情報システムの整備とともに、流通機構の整理・統合が必要となりレインズを採用し、需給圏域ごとに一本化された流通機構が建設大臣により新たに指定され、「認定流通機構」から役割を引き継いだ。平成9年4月に宅地建物取引業法が改正され、現行の専属専任媒介契約に加え、専任媒介契約についても指定流通機構への登録が義務付けられ、指定流通機構の指定要件として公益法人であることが明確に規定され、全国に37あった指定流通機構が4地区4機構に再編成され現在の機構となっている。
●不動産情報データベースのネット上での一般公開の問題
レインズスタート当時は、その保有する不動産データベース(売物件、賃貸物件情報など)は、業者間に限定して情報交換といった性格が濃かった。しかしこの域にとどまることが困難な状況がでてきた。インターネットの急速な普及である。例えば米国では、最新動向として、不動産の売主と買主を結ぶフリー市場を運営するWebサイトが急増している。フリー市場の登場は、仲介業者を市場から排除するものであり、排除された仲介業者はフリー市場にエージェント(高い専門スキルが要求される)として参入するという構造となっている。米国の状況は国内でも急速に進展すると思われる。
不動産流通分野において業者のインターネットの積極的活用事例は増え、今後インターネットによる物件の宣伝・成約は加速する。情報化の進展は情報産業としての不動産業に構造的変革をもたらす。個々の有力業者が直接ユーザーを対象とするWebサイトを開設、物件データベースと連携しWeb上でユーザーが物件検索が可能なものが多い。
協会団体などによる物件情報連合サイトの構築とポータルサイトとの連携も進展、(社)不動産流通経営協会がYahoo!と連携。三井不動産販売による不動産オークションの開設や、大京のマンション入居者に向けた仮想商店の開設など、新しいWebサイト構築運用の動向がある。
また米国型の不動産の売主と買主を結ぶフリー市場を運営するWebサイトも増加すると思われる。これらの状況により危機感を持つレインズ会員のなかには成約機会を増加させるためにはレインズが保有する不動産データベースをネット上で一般公開すべきではないかと言う意見があるという。しかし公開については物坦業者(基本的に売主担当)は成約機会増加のメリットがあるが客坦業者(基本的に買売主担当)主体の営業展開してきた業者はマイナスが大きい。レインズは現在、公開を未だ明確にしていない。
■建設省で検討している「バイヤーズ・エージェント」制度
建設省は、IT化による不動産情報公開の方向性、契約書の電子文書化と並んで「バイヤーズ・エージェント」制度の検討を必要としている。「バイヤーズ・エージェント」制度とはインターネットの発達により、売主、買主の直接取引や買主側業者不在の取引並びに不動産取引の電子化が進行予測されるため複雑な法律、税制、建物等の瑕疵から契約予定価格の妥当性の検討など情報不足の買主を保護するため業者が買主側の要請で不動産取引に参入するシステムである。
不動産が、個人にとっては一生のうちで最も大きな買い物で何度も行うことができないため取引の安全性、確実性を高めるには、直接取引よりもコンサルティングアドバイザーの存在が必要とされるからである。
この制度により業者側にはインターネットで情報武装した買主以上の高度な専門知識、経験に加えITの活用能力が必然的に求められる。インターネットの急速な普及は情報の独占の上に成立していき旧来のビジネスモデルを崩壊させる。不動産仲介業も変革を余儀なくされるだろう。
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