J-REIT指数見直し買いで反転の兆し
2月21日の日本経済新聞のマーケット総合1欄の見出しをコラムのタイトルに使わせて頂いた。例のサブプライム問題などで大きく昨年から下げたJ-REIT指数であるが、ここにきて反転の兆しが見えていると同紙は報じている。価格の調整が大きく進んだ結果、市場平均の分配利回りが、上昇し、投資妙味が増したと見た個人投資家や外資系ファンドの見直し買いが増してきたためだ。
例えば、J-REITの旗艦銘柄であるオフィス系特化リートの日本ビルファンド(NBF)と株価の大幅な下落で不振が目立つレジデンシャル系のなかから比較的情報開示が進んでいる銘柄、アドバンス・レジデンス(ARI)の投資指標をみて見よう。
両投資法人の株価を本コラムを書いている2月22日の投資口価格(以下「株価」とする)とし、各投資法人がWebサイトで開示している直近「決算短信」の財務数値から投資指標を計算すると、
NAV=(期末鑑定評価額-期末簿価)+(純資産額-分配金総額)
一口NAV=NAV÷発行済み株式総数
となった。J-REIT銘柄のなかで配当利回りが低いNBFでも約3%に上昇、10年国債利回り1.45%とのスプレッドが、145ベーシスポイントで、一時期、株価が高騰して100bpsを割っていた頃から見ると、随分と株価調整が進んでいる。一般に当該スプレッドを200bps程度が妥当と見る投資基準にも近づいているわけだ。一方、ARIの配当利回りは約6%で10年国債とのスプレッドが445ベーシスポイントもあり、利回り的にかなり投資妙味がでていることが解る。
注目すべきは株式市場のPBRに相当する予想純資産価値NAVだ。NBFの株価はNAVに対して1.3>1とプレミアムになっており、ARIは0.8<1でディスカウントになっている。単純にいうとNBFは、ファンダメンタルズである不動産価値に比べ株価が割高で、ARIは割安になっているということである。本来は株価とNAVは一致するべきものだが、現実には一致することが稀だ。NAVには、運用者の巧拙や規模の経済、特化・複合型による差異などが反映しないからだ。米国では投資指標として優先順位が高いNAVであるが、日本では、NAVを算定する手法や精度が十分でなく、いまいちの信頼感であるため、投資家の優先順位は、配当利回りが高い。
上表のようなオフィス系リートとレジデンシャル系リートの市場における格差は、J-REIT市場の株価の高騰から昨年、今年にかけての下落にいたる乱高下のプロセスでより鮮明になっている。その理由としては、オフィス市場が空室率が低下、賃料上昇が進むなどの好調さに比べ住居系投資不動産の低迷しているからである。供給過剰感の重しを背景に賃料や稼働率が改善している気配がなく、むしろ経年劣化による賃料下落が大きい。家賃と相関が高い勤労者所得が伸び悩んでいることもある。
またレジデンシャル系リートの場合、一般論としてスポンサー企業をはじめ運用サイドの知名度が低い。特に私募ファンド系がスポンサーの場合、自ファンドの投資価値が劣化した物件の出口にJ-REITを利用するのでは…など投資家が懸念を持ちやすい諸点が指摘されている。
とはいえレジデンシャル系J-REITも6~7%の配当利回りになってくると、利回りの点から債券投資類似のインカムリターン投資としての魅力が高まるため、リート本来のミドルリスク・ミドルリターンの原点回帰で見直し買いがでてきたといえる。
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