空室解消ビジネス / 賃貸マンションの空室解消リメークビジネス
築深老朽賃貸マンションのオーナーにとって空室の発生は頭の痛い問題である。そこで物件のバリューアップを考え、リフォームやリノベーションをしようか、となるのであるが、投資額にみあった賃料値上げができるのか、最低限度で考えても空室が埋まるだろうかとまた思い悩まなければならない。
このようなオーナーの空室の悩みを解消するユニークなビジネスが登場した。インターネットで「こだわり空間」を希望するユーザーの声を集め、リフォーム企画に活用し、入居予備軍を組織化する。さらにオーナーから受託した物件ごとに周辺環境調査や物件の個別調査を行ない、個々の物件にマッチする室内空間づくりのコンセプトを明確にし、同社のサイトに物件案内を掲載。気に入った物件があれば内見させ、入居希望者と賃貸借契約をしてから約1ヶ月でリフォームし、入居というビジネスモデルである。
オーナーは賃借人が決まってからリフォーム費用を負担してリメークするため無駄な投資を避けられる。一方、賃借人にしてもリフォーム後の姿が具体的に描けるし、事前に壁紙や天井の色などのカラーセレクトや床材のオーダーができ、自分が希望するイメージの部屋に住むことができるため、家主・入居者の双方に喜ばれるということになる。
このビジネスを展開しているベンチャー企業がコモドスペース(大阪)である。日経産業新聞や同社のサイトによると築20年以上の賃貸マンションで2DKや3DKが主なターゲットである。このような賃貸マンションが新築された当時は、家族構成が4人家族ファミリーを想定するのが一般的であった。近年は賃貸マンションの主な入居層は単身者や新婚さんになってきているため、間仕切りをせず余裕の1LDKなどでゆったり住みたい、個性的でオシャレな空間にしたいという希望が多い。新築のデザイナーズマンションがこのような層の受け皿となるのだが、リーズナブルな家賃で借りられるリメーク物件の人気も高い。
入居希望者は、コモドスペースのサイトでリフォーム前の物件をみることができ、立地、家賃に加え物件ごとにリフォーム後の間取り、内装のイメージ図がビジュアルに表示されており、カラーセレクトオーダーができる箇所が図示されている。物件の内覧を希望すれば見学フォームで申し込むことができる。その結果、気に入れば契約し、リフォーム期間は約1ヶ月でその間の家賃負担はない。転勤族は急ぐため1ヶ月待ちは厳しいが、賃貸住宅の住み替え族は、物件に対する目が肥えている反面、急ぐことはあまりない。1坪当たり約20万円程度の改装費になる場合、仲介手数料も含む。36ヶ月以内にリフォーム投資額を回収できるよう賃料を高めに設定したりする。
これまで33棟55室を手がけた。インターネットで集めた入居希望登録者は570人で希望者のうち約7割は25~35歳の女性。このビジネスモデルも始めた当初はオーナーからの注文がとれず苦労したらしい。現在は物件の供給が追いついてない状況で、毎月オーナー向けにセミナーを開催し、空室対策に改装が有効であることの啓蒙をしている。さらに今後は不動産投資ファンドの保有するバリューアップモデルに提携していく計画だ。
個人オーナーに加え不動産ファンドが開発型証券化などで賃貸マンションの新規供給まで市場参入し、分譲マンション供給業者もファンド向けに1棟売をしており、物件のレベルアップが進み、供給過剰も深刻になってきているため、空室対策としてリフォームやリノベーションさらには耐震補強まで考えたリファインなどの対応がオーナーに迫られている。オーナーにしてみれば「やったはいいが空室が埋まるの?」という不安がつきまとう。賃貸借契約後にリフォームという安心感がウリであるが、オーナー自身がリフォームの専門業者にCM(コンストラクションマネジメント)などで発注してリフォームした方がコストダウン効果は高い。しかしターゲットである入居希望層の「こだわり」にマッチさせたリフォームができる市場調査力・技術ノウハウと、インターネットサイトで入居希望者の集客を可能にするWebの強力なアクセス力など総合的システムによりビジネスモデルをストラクチュアリングしているため、このようなニッチサービスが成立するのであろう。
■関連記事
オフィスビルの空室対策