レジャーホテル投資ファンドの研究 その2

1、最近の業界傾向

家業的、個人経営的な色彩が濃い業界であったが、近年、他業種からの参入が増え、所有と経営の分離も進んでおり、近代的業態への脱皮が急速に進行している。いままでレジャーホテルは、不況期においても高収益を稼ぎ出す事業といわれてきたが、新規参入や業態の近代化により、競合がより厳しくなっており、従来のような装置産業としてハードにのみ依存したホテルづくりでは、現在の利用客を長期間にわたって集客することは困難な状況になっている。ハード・ソフト・オペレーションをトータルに駆使した視点から総合経営体としてホテルづくりをしなければ、高収益を確保するどころか生き残りも難しい時代を迎えたといえる。

2、投資特性

■立地条件

シティ型と郊外型に分けられる。シティ型は、既成市街地のレジャーホテル集積エリアで、所謂、「ラブホテル街」といわれている地区である。競合する同業施設の集積がある程度あるエリアでないと単体では、認知度で集客力が劣るとされ、競合を排除する一般的な他業態との相違点となっている。近年、大都市に比べ地方都市の繁華街はエリアパワーが衰退しており、集客力に陰りがみられる。郊外型は、大都市圏から車で30分~1時間の高速道IC付近に立地する。半径15~20km圏内で人口10~20万人以上の居住人口が必要といわれている。

■規模

部屋面積は1室当たり25~40㎡、部屋数は1棟当たり25~30室程度が経営効率面からみて適正規模とされてきたが、ビル型の50~100室規模のものも増加傾向にあり、業態が家業的形態から、他業種参入などで大型化しており、事業スケールの大規模化傾向がみられる。

■店舗構成

新風営法の施行後、室内設備などの規制が強まったため店づくりは、これまでの過剰演出を反映した淫靡でデコラティブなものから、シティホテルをある部分意識したシンプル、お洒落志向に転換した。反面、画一的で無個性化し、アミューズメント性が希薄になり、客離れを招いているとの指摘もある。

装置産業といわれるだけあって、設備機器面では、通信カラオケ、TVゲーム、CS放送7ch、プラズマテレビで5.1サラウンド、プロジェクター、マッサージチェア、水中照明付ジャクジー、浴室TV、露天風呂など豊富であり、設備機器の技術進化に敏感な業界となっている。

運営を効率化するため、ITが導入されており、館内LANで全室のパソコンにホテル利用システム、飲食メニュー、イベントの告知などを配信したり、顧客管理システムを構築し、リピーターの確保を狙っている。特に運営受託会社は、ITの導入に意欲的で、館内音声、映像で従業員を指示なしに動かす「サブマネージャーシステム」などが株式会社トータルプランニングにより開発された。

店舗施設の取得は、新規開業より、既存の稼動物件を取得し、数ヶ月営業して問題点・改善点を洗い出し、リニューアルするといった手法が取られることが多い。

■収支・キャッシュフロー

「季刊レジャーホテル」の経営者アンケート調査や業界ヒヤリングによると、

  • 営業利益率(GOP):40~50%
  • 人件費率(人件費/総売上):20~25%
  • 月平均1室売上:53万円
  • 平均客単価: 6,300円
  • 月1室利用組数:75組
  • 平均回転数:2.5回転

キャップレートはレジャーホテル投資ブームを反映し、目下、低下しており15~20%であるが、ビジネス、シティなど他のホテル業態と比較するとリスクプレミアムを反映し、高めとなっている。

3、レジャーホテル投資の特徴

■メリット

  • 旅館業法、新風営法などの規制や風評が、参入障壁となり、供給過剰による収益低下が起きにくい
  • GOP(営業利益率)40%以上が過半を占める高収益産業である
  • 人間の基本的欲望に基づく産業であるため、時代のトレンドや風潮、好不況に需要量が比較的、左右されにくい
  • 個人経営規模の家業的形態が多いため、業界全体が後進的な側面もあり、適切なマネジメントによる運営の効率化により、収益拡大が期待できる。この点で投資ファンドなどによる近代的オペレーション、集約・規模の利益が発揮されやすい
  • ㈱アイネスシステムによる各種情報をディスクローズしてのレジャーホテル「公開入札」や、㈱グローバル・ファイナンシャル・サポートなどによるレジャーホテルファンドの組成で経営スキルに乏しい個人投資家が参入しやすい市場環境が醸成されつつある

■デメリット(リスク要因)

  • アミューズメント性を追求する装置産業であるため、定期的なリニューアルを行わなければ、稼働率が低下し、収益が悪化しやすい。近年、リニューアル効果の持続期間が短くなってきている
  • 金融機関の融資がつきにくく、融資がなされても返済期間が通常、短いため、キャッシュフローでのDCR(借入金償還余裕率)がタイトとなり、リニューアル投資が困難となり、収益低下→従業員のモチベーション、質の低下→サービス低下→収益悪化という負の連鎖に陥りやすい。資金力による勝ち組負け組みの二極化が進行
  • 高客単価の上客は、飲食サービスや客室スペースに優るシティホテルに流出しており、今後、シティホテルの供給が増えるため、競合が厳しくなる
  • 一般不動産に比べ、売買当事者が限定され、市場規模が小さく、閉鎖的で、未成熟なのが現状
  • 一般の収益不動産に比べ物件の収益力を適正に分析するためのデータや資料が複雑になるが、これらが十分にディスクローズされず、物件の適正価格が把握しにくい局面が多い

4、投資想定モデルとDCF収益価格(※現実のものではありません)

■想定モデル

  • 敷地面積:1200㎡
  • 延床面積:1800㎡
  • 形態:ビル型
  • 規模:地上6階
  • 客室数:25室
  • 1部屋平均面積:37㎡
  • 売上げ(室/月): 650,000円

■初年度収入・経費構成(単位:千円)

■キャッシュフロー表(単位:千円)

■収益価格(単位:千円)

  • 転売価格:517,985
  • 転売費用(仲介手数料):15,540
  • 復帰価格:502,445
  • 復帰価格現在価値:285,101
  • 収益価格:582,447

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