レジャーホテル投資ファンドの研究 その1

近年、オフィスや賃貸マンションなど収益用不動産のJ-REIT、私募ファンドへ組み込みが進んでいるが、ここにきて購入価格の高騰で利回りが低下してきており、投資家にとって投資魅力が次第に褪せてきている。これらに代わる投資として、昨年ぐらいから、利回り10%台半ばの高配当を謳い文句にレジャーホテルを事業証券化(WBS)したファンドが登場し、一般投資家をはじめレジャーホテル経営者の注目を集めている。

「レジャーホテル」は、別称「ラブホテル」。オブラートに包んで「ファッションホテル」などの呼び方はあるが、その歴史は、昭和21年頃、進駐軍相手の街娼が利用した「連れ込み宿」に始まる。

最盛期は、昭和41年から昭和60年までの20年間で、数々の繁盛店を手がけてきたラブホテル専門デザイナー・亜美伊新氏によると、まさに装置産業と呼ぶにふさわしい空間演出の技術革新が重ねられた。「テーマ性」、「装置」、「動き」を駆使した仕掛けが繁盛店の必須条件であり、馬鹿馬鹿しいと思えるような過度の演出ほど関係者の予測を超えて大当たりしたと言われている。

最盛時の業界全体の売り上げは、4兆円とまさに高度成長期にあっても隠れた巨大産業であった。当時のモーテルを含む業界全体のレジャーホテルの数は、約2万1千軒、この数字は、現在では約2万7千軒と増加しているが、建設時には周辺住民の反対が多く、風適法、旅館業法などの規制、許認可もあり、供給過剰が抑制される仕組みになっている。また同業の持つイメージから大手企業は、参入を控えており、その経営者の大半は、個人経営で零細規模であるため、最盛期に比べ収益率は一般に低下しているものの、オペレーション次第では、収益を拡大させることが可能な、意外に手堅いビジネスなのだ。

通常のシティホテルの稼働率は100%を超えることはないが、レジャーホテルの場合、休憩タイムがあるため、回転率400~500%も弾き出すことが可能で、GOP(営業利益率)40%を超えることも可能な高収益の日銭商売なのである。聞くところによると所謂「ラブホテル」という事業モデルは、日本独特のものらしい。最近は、台湾などにもラブホテルが出現し、結構、繁盛しているという。この日本独自事業モデルの高収益性にまず、外資ファンドが目を付けた。次いで国内ファンドがレジャーホテルファンドを組成し、昨年ごろから一般投資家に販売している。

これらのレジャーホテルファンドは、ファンドのストラクチャリングを事業証券化(WBS=Whole Business Securritization)という手法で行つている。WBSは、事業再生などに英国で活用されたファイナンス手法であるが、WBSのレジャーホテルへの適用要件として、下表1のような事項がある。

●表1:WBSの適用要件

1、レジャーホテル投資ファンド

国内ファンドのグローバル・ファイナンシャル・サポートやイーアイホテルシステムズなどがレジャーホテル投資ファンドを組成し、一般投資家向けに販売している。グローバル・ファイナンシャル・サポートによる投資ファンドのスキームを見てみよう。

■「HOPEαシリーズ」(グローバル・ファイナンシャル・サポート社)

対象物件は、中古物件(稼動中のレジャーホテル)を取得後、リニューアルを行ない、投資家に配当する。配当利回りは8.4%~12%を予定。募集単位一口50万円からで、レジャーホテルの匿名組合契約による証券化商品。証券化スキームで取られる倒産隔離のため有限責任中間法人が有限会社SPCを設立し営業者となる。また2年目以降ノンリコースローンを活用することで優先配当の拡大を図っている。

HOPEα4概要

  • 募集単位:一口50万円とする(複数口数申し込み可)
  • 募集優先出資総口数:1170口(一人当たりの限定数なし)
  • 出資総額:6.5億円(内優先出資:5億8千5百万円、劣後出資:6千5百万円)
  • 運用期間:5年間
  • 年利回り:優先配当8.4%~12%(※12%というのは、2年目以降のノンリコースローン活用が実現した場合の予想配当利回り)

(グローバル・ファイナンシャル・サポート社のサイトから引用)

同社の「HOPEαシリーズ」は、1からはじまり、3プロジェクトをファンド化した。現在、HOPEα4を募集中である。事業運営会社をM&Aで買収し、オペレーションの質を高めることで運営効率の向上を目指し、組成物件のバリューアップを図っている。一般個人投資家をターゲットとし、一口50万円と購入しやすい価格設定にしている。同社は、オペレーターを買収し、子会社化したことで他社ファンドのアレンジメント、運用、エグジットまで視野に入れた運営受託、OEM供給を行うとしてる。運営企業コムウエイを通じ、オリジネーターからの物件取得や、出口においてリファイナンスを選択せずに売却する場合、マーケット情報獲得の狙いもあるようだ。

次回コラムでレジャーホテル投資ファンドのメリット、デメリット、投資分析指標などについて書く。

■次回記事
  レジャーホテル投資ファンドの研究2
      

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