底地ファンド

ユニークな不動産ファンドが誕生したものだ。その名も「底地ファンド」。

日経産業新聞に紹介されたその仕組みは意外とシンプルだ。地主から底地をファンドが購入し、1年以内に当該底地上の借地人に売却するというもの。運用はTFPコンサルティンググループのTFP不動産コンサルティングが担当。1号を「プラトン不動産ファンド」の名称で03年9月に立ち上げ、個人投資家から資金を集め、一昨年9月から昨年8月にかけ約2億円規模で運用。ファンドの組成物件は、東京都内、神奈川県の底地19物件で、運用パーフォーマンスは、年間利回り約13%の実積値をマークした。1号ファンドの特徴は、投資対象が底地に限定され、運用期間が1年と短期で、ファンドの底地購入価格と、当該底地上の借地人への売却価額の差益(キャピタルゲイン)を投資家に配当するというスキームにある。

以下、筆者が、新聞記事からの勝手な独断でこの投資を想像してみると…

底地とは借地権が付着した宅地の所有権を言うが、不動産のマーケットで底地が売買されることはまず滅多にない。物件仕入れにかなりのレベルの専門知識を必要とするが、更地や賃貸マンションなど通常形態の物件と違い、業者間の熾烈な競合がない。なにしろマーケットと呼べる程度のものが形成されていない。競売でも底地のみの売却は、借地権、底地の生き別れといって、底地割合を乗じたうえ、大幅に市場減価しても、なかなか落札者が出てこない、極めて不動産のなかでも処分が困難な難物である。業界では底地というだけで忌み嫌い敬遠する特殊案件なのだ。ある意味、マニアックな投資家が競売で拾うという代物だった。

しかし、「底で拾って高く売る」という投資の鉄則から言うと、ハイリスク(ファイナンス理論で、リスクとは、予測と実積がブレル振幅度をいう)ではあるが、ハイリターンが狙える投資妙味が高い物件ともいえる。ちょっと話が専門的になるが、底地を当該借地人以外の第三者が買う場合、底地の経済価値は、地代(継続地代は通常、安い)から諸経費を控除した純賃料部分の借地期間に応じたインカムリターンと借地満了で復帰する更地価格を時間割引した現在価値の合計等でしかない。当該借地人が底地を買い取る場合は、購入により、当該建物と敷地が同一所有になることで、生き別れた市場価値が購入後、即時に回復し、経済価値が増分するため、増分に応じた購入価額を負担しても購入者である借地人はOKですよということになる。つまり、国税借地権割合の相関関係が成立し、現実の当事者間取引もその近似値に収斂するらしい。生き別れ後、底地のみを安く買い、敷地・建物を同一所有権に復縁させることで実現価値相応に高く売るというキャピタルゲインが発生しやすい投資構造になっているのだ。底地の地主と借地人間で人間関係が修復できないようなトラブルが過去にあった場合、両者間で売買契約が成立することはまず難しいため、TFP不動産コンサルティングが交渉の労をとるシナリオも描ける。

ただし、あくまでも底地上の借地人が購入するという前提があって、ハイリターンが成り立つ。底地のまま運用しても、配当原資の継続地代は、一般にかなり安いため、アパートなどの収益物件に比べ低利回りになりがちだ。投資家が満足するベンチマークを達成できるかは、ファンド運用者の経験と力量にかかつている。

第二号ファンドは、首都圏の底地を中心に資産規模が3~5億円で2年間運用し、一般から広く投資家を募る予定らしい。

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