遊休化した学生寮・駐車場の再生ビジネス
いま稼働率が低下したり、遊休化している企業や大学の寮や駐車場を対象とした一括運営管理受託や一括借り上げ転貸ビジネスが注目されている。これらのビジネスモデルに共通するのはこれらの施設を一括借受・受託する会社が専門分野に特化し培ってきた運営ノウハウを活用することにより稼働率を向上させ資産価値再生を実現する点である。
1、大学寮運営受託ビジネス
土地活用を考える地主や遊休化した寮を保有する企業にとって大学などの学生寮に当該不動産を活用させるビジネスモデルが注目されている。例えば全国規模で企業・学生寮事業を展開する共立メンテナンスのビジネスモデルはこうだ。アパートや賃貸マンションの経営はどうもという地主が同社との契約で建てた施設や企業などの既存の寮を預かり、専門学校生や大学生に学生寮として提供する。学生寮であるため朝夕2食付の手作り家庭料理を提供し、寮長・寮母が常駐する。各部屋には引越してすぐ一人暮らしがはじめられるように電話をはじめベッド、タンス、机などの家具、さらにインターネット24時間使い放題の接続環境を完備している。首都圏のワンルーム(食事付、風呂・トイレ共同)の場合、学生一人当たりの利用料金は月9万円弱で設定。これからオーナーに賃料を払い、運営経費を控除すると残る1部屋当りの利益率は低いが、現在16,000人の実積があるためスケールメリットで事業採算を取っている。
共同生活によって社会性も身に付き、寮長・寮母の常駐に加え不審者、施錠などを監視する警備体制が整っているため特に女子学生の親達に学生寮は好評のようだ。大学サイドでは建築費の初期コストがなく施設運営のための人件費、維持管理費が削減できるので学校が寮を建築・保有するよりメリットも大きい。遠方の学生や海外からの留学生に対し自校の学生寮として紹介できるので大学の競争力を強化できる。
さらに同社は、早稲田、上智、ICU、明治薬科大などの私大などから指定事業者として寮の一括運営委託を受託し事業拡大している。このほか学校や企業が保有する寮、食堂、保養所、研修センター、社員クラブなど一括して管理・運営も行っている。自社 スタッフを管理・運営する施設に派遣。食材の一括仕入れ、必要人員を適正な人数で配置しコストパフォーマンスを高めている。
同社の井上英介事業部長は、日経産業紙のインタビューに答え「大学の寮運営の課題は委託された施設の老朽化と運営を任せる人材の確保で、築30~40年の施設を抱えるケースも珍しくなく特に国立大学は法人化で大学経営そのもののコスト意識が高まっている。(中略) 大学が集積する大都市圏ではデベロッパーなどとの競合が厳しくなる。物件の料金も重要な要素だが大学の経営課題を解決する提案力の勝負になる。」と語っている。
大学の経営といえば少子化が最大のリスクだが、同社は大学進学率の高まりで一定規模の市場は確保できると予測している。今後、少子化の進行が加速するため厳しく選別される大学側にとって施設充実とコスト削減は生き残りのために不可欠となるが、本来は共存が難しい大学側の施設充実とコスト削減のニーズを同社のビジネスモデルは、うまく汲み取り成長している。当該学生寮ビジネスの当面の課題は、大学の抱える経営問題に対する総合的コンサルテイング力の強化と全国展開による規模の利益を追求していくことになる。
2、遊休駐車場の一括借り上げ転貸ビジネス
ITを駆使した遊休地活用としてコインパーキング全国最大手のパーク24を先にコラムで紹介したが、今回は企業などの既存の駐車場を対象とした駐車場ビジネスを展開している日本駐車場開発のビジネスモデルを紹介する。
同社は、都心部のオフィスビルで稼動していない遊休駐車場を一括借り上げして転貸するサブリースビジネスを拡大している。稼働率が低下もしくは遊休化した駐車場の活用はビルオーナーの切実なニーズとして顕在化してきている。同社のビジネスモデルは「まずオフィスビルオーナーと賃貸借契約を結び遊休の駐車場を一括して借り受ける。その後、借り受けた駐車場の周辺の道路状況などを勘案して月極めや時間貸しなどの形式を設定し駐車場利用者に貸し出す。一括借受価格は駐車場の立地や形式によるが周辺相場より割安だ。オーナーにとっては価格が安くとも遊休資産を有効活用できる。」(日経産業)
駐車場利用者にしても都心部周辺駐車場相場より安く利用でき営業車両を多く保有する企業にとっては都心部で駐車場を抱えるリスクを逓減できる。時間貸しの場合、同社が駐車場の管理業務を引き受けるが、さらに同社の駐車場管理で蓄積されたノウハウをを生かし単なる利ざや稼ぎのサブリースにとどまらず周辺の駐車場立地としての地域特性を見極めながら時間貸し、月極めを柔軟に組み合わせて運営し、稼働率を上げ収益力を改善する努力も怠らない。
オフィスビルは駐車場設置が条例などで義務付けられ、その数は全国で約5万棟といわれるが同社の営業展開する都市部でも約1万棟あるため5年以内にこの30%程度のシェア確保を目標としている。
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