外国人ビジネスマン狙うサービスアパートメント

2002年10月、東京都港区麻布10番にルーム数83戸、間仕切りなし43㎡から2寝室を備える106㎡までの10タイプ、家賃49万-99万5,000円、三井不動産による地上14階建てのサービスアパートメントが出現した。エントランスには24時間常駐の専門スタッフ、室内は高級分譲マンション仕様でソファーベッド、システムキッチンまでついており、フロントサービス、リネンサプライ、清掃等のサービスも含む、あたかも都内の高級ホテル並みのサービスと設備を満喫できる高級賃貸マンションだ。

2003年3月、三菱地所は、東京都港区東麻布に全79戸のサービスアパート「サマセット麻布イースト」を完成させた。住戸内には家具はもちろんのこと、洗濯乾燥機、食器洗浄機、冷蔵庫など家電製品も備えているほか、建物内には共用施設として、スポーツジムや屋内温水プール、屋上バーベキューテラスを組み込んでいる。住戸は42.91㎡~54.79㎡、STUDIO(ワンルーム)タイプとワンベッドルーム(1LDK)タイプ。賃料は月額で426,000円~666,000円で契約は数ヶ月単位からとなっている。

三井不動産、三菱地所に共通しているのは、メインターゲットが外国人ビジネスマンという性格から強力な事業運営ノウハウを持つ外資と提携、合弁していることだ。三井不動産はオークウッドアジアパシフィック社と合弁しているが、同社は,米国を本拠地とするオークウッドワールドワイド社と、国際的な投資会社であるコロニーキャピタルによる合弁会社でシンガポールに所在する。本拠地をロサンゼルスにおくオークウッドワールドワイドは20,000戸以上のサービスアパ ートメントを北米、アジア、ヨーロッパ等で展開している実績を持つ。

三菱地所は、シンガポール法人のアスコット社と共同でサービスアパートの運営管理業務を行う(株)アスコットジャパンを設立し、サービスアパートビジネスに本格参入した。運営管理業務は、(株)アスコットジャパンが行い、フロントにはバイリンガルスタッフが24時間常駐し、きめ細やかなサービスにより日本の生活に慣れない滞在者をサポートする。アスコット社は世界20都市で約8,000戸のサービスメントアパートを運営しており、三菱地所はアスコット社の世界的ネットワークを駆使して顧客を呼び込む算段だ。

これらサービスアパート(SA)のメインターゲットは外国人ビジネスマン。グローバル化の加速で金融・証券・コンサルティング業界等の企業を中心に日本に滞在する欧米6カ国(米・英・仏・加・独・伊)の外国人ビジネスマンは増加している。ホームパーティや自宅で商談する彼らの慣習に加え、外資の日本支社幹部の滞在期間は限られるため、広い居室空間の都心賃貸住宅が最適の選択となる。月刊不動産フォーラム誌によると、

日本における外国人登録者巣は1982年で17,000人、1996年には約2倍の32,000人、そして2001年には約4万人となり、外国人の東京一極集中が加速している。外国人マンションの立地条件は、東京では3A地帯(麻布、青山、赤坂)が好まれるが、最近の賃料の高額化から周辺の新宿区、渋谷区、品川区、世田谷区、目黒区、大田区等に拡大する傾向にある。外国人の赴任期間は金融関係では半数が2年以下、メーカー関係では9割が3年以上となっている。住宅の選定で重視するのは、ファミリー世帯では通学の利便性→通勤の利便性→公園・緑地に近いの順で、単身世帯では通勤の利便性→繁華街・盛り場に近い→買い物の利便性の順になる。

国内におけるこれらの需要層をターゲットとした居住空間の提供であるがこれまでは、SAが4,000‐5,000戸はあると言われる香港、シンガポールなど東南アジア地域に比べ質・量で劣っていた。今後も国際化の流れを受け、中長期の外国人滞在(出張)者が着実に増加していくと予想される。分譲マンションの伸びが鈍化するなか供給不足の状況にあるSAは今後の国際化の進展で需要増が期待される成長分野であるため国内大手不動産をはじめシービー・リチャードエリスなど外資系不動産もこの分野へ参入している。高収益物件としてREITへの取り込みも進んでいるからだ。

高賃料が払えるターゲットは外国人だけでない。日経紙によると最近、都心の高額賃貸マンションの借り手の主役が様変わりし「日本人の医者、弁護士や外資系企業社員、オーナー経営者が利用している。」と言う。さらに30歳前後のニューリッチ層がこの市場を支えているともいわれている。30代のオーナー経営者、ニューリッチといえばITベンチャー経営者が真っ先に思い浮かぶが、なぜ富裕な彼らが購入でなく賃貸を選ぶのか…

勝ち組負け組みの熾烈な競争社会、勝ち組もいつ負け組みに転落するか予測ができない、将来が不安ないまの社会ではその時々の収入にあわせ可変的なライフスタイルが選択でき、資産デフレに怯えることがない賃貸を志向するという意識変化が醸成されている社会背景がある。

■関連記事
  外国人労働者・留学生向け賃貸住宅市場
      

おすすめ記事