ITで付加価値を高めるマンション

マンションの高付加価値化のキーワードはインターネットの常時接続とマンション販売後の生活関連サービスを主体としたネットビジネスの展開である。

■常時接続環境

三井不動産、大京などのマンション最大手は、常時接続環境を専用線やCATVをマンションに予め引き込んで実現している。インターネット利用料金は専用線でインターネット利用如何に関わらず月額2,000~2,500円程度が管理費に含まれるケースが多い。CATVは月額5,000~8,000円で、住民が個別にCATV会社に利用申し込みする。

マンションの場合、購入後、数年経過して常時接続環境を構築するには、管理組合の同意が必要なため面倒だが、予め引き込んである常時接続はその点の懸念が不要である。

メリットの反面、将来の課題もある。マンションのようなRC造の集合住宅は設備の更新が困難である。「例えば現在、マンションの棟内配線は、電話線を良く使うHomePNA1.0(通信速度1Mbps)が良く使われている。しかし既に通信速度10Mbpsの上位規格HomePNA2.0の実用化が始まっている。ルータなどの装置の交換は管理組合の同意が必要で、光ファイバーの導入も同様である(日経パソコン)」。マンション購入の際には急速に進化する通信環境の更新の可能性を視野に入れておくことが必要である。

■ネットビジネスの展開

ネットビジネスの展開として大京は、NTT-MEと共同でマンション・住宅向けの高速インターネット会社FNJを開設した。事業はインターネットプロパイダーとして接続サービスと情報配信である。FNJとマンションの間に光ファイバー通信網を敷設し、マンションを中継局として半径400mの周辺住宅との間を無線通信で結ぶ。

通信容量はISDNの15倍。この大容量回線を利用してインターネット電話、映像、ゲーム配信、介護、医療などの生活サービスを提供する。マンションを中核拠点とする意義は1戸当り回線料金を安くでき、高層の屋上から無線電波を周辺住宅に飛ばせることにある。大京の持つ28万世帯の顧客ストックを従来は管理会社に任せるだけであったがフロー経営を見直し顧客サービスで二次的収益をあげるストック経営を目指す。

ネット通販などの子会社を設立、新築全物件にインターネット設備を標準化し、電子決済付の宅配ロッカーをマンションに設置するなどの環境整備中である。大京とNTT-MEは03年度に100万世帯に利用拡大し800億円の売上高を目標としている。

ネット、スーパーマーケットと共同で大京グループのマンションの入居者を対象にインターネットによる通信販売を始めている。ライオンズファミリーのホームページ上に食品、台所用品など3,000品目を掲載し、年中無休、24時間体制でネットとFAXで注文を受け付ける。

大手業者だけでなく地場業者もマンションに保育所を併設したり24時間体制で医療サービスを提供するなど、質の高い住民サービスを売り物にした高付加価値マンションを福岡市とその周辺に相次ぎ登場させている。

ネットビジネスの展開は、不動産会社の顧客資源抜きで考えられない。住人の家族構成、年齢、収入などの顧客属性データは豊富に蓄積されている。質の高い生活関連サービスを主体としたネットビジネスの展開が充分に可能な環境を有する。

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