福岡オフィス市場の将来見通し
三鬼商事発表による直近2011年8月の福岡ビジネス地区のオフィス平均空室率は13.83%で前月比で0.17ポイント上昇。前年同月比でみると1.39%低下した。リーマンショックと市内のオフィス大量供給が重なり、2010年に14~15%台で推移していたのに比べると、ここにきてやや改善傾向が見られるものの、依然として回復の足取りは重い。
今年3月の九州新幹線開通や駅ビルJR博多シティ開業で、博多駅前地区の動向が注目された。同地区の平均空室率は17.28%で前月比0.05ポイント上昇、前年同月比で0.48ポイント低下にとどまり、福岡ビジネス地区内では高い空室率となっており、開業効果は見られない。
ニッセイ基礎研究所は、2011年9月20日に発表した不動産投資レポート「福岡オフィス市場の現況と見通し」で、このような足元での福岡のオフィス市況を踏まえ、福岡オフィス市場の将来推計を行っている。その内容を1部紹介すると、
今後の福岡のオフィス賃料を予測にあたり、福岡オフィス市場の供給面積と需要面積を、GDP成長率、生産年齢人口、前期までのオフィス賃料、都心3区のオフィス賃料などから求め、それを基に福岡オフィス市場の賃料関数を推計した。これに、今後の経済見通しや人口予測、オフィスビルの新規供給見通しなどの数値を代入することで将来のオフィス賃料を予測した。推計の結果、福岡のオフィス賃料(上期の賃料を基準とする)は、2011年を底に上昇し、2014年まで上昇した後、2015年にはわずかに下落すると予測された。2011~2014年の上昇率は、標準シナリオで+14.2%(楽観シナリオで+19.0%、悲観シナリオで+9.6%)であった。なお、空室率は、2013年まで下落(回復)が続き、その後上昇に転じると予測された。
同レポートをまとめると、福岡のオフィス賃料は、2011年を底に反転し、2014年まで継続的に上昇するとしており、その要因として、
- オフィスの新規供給計画が非常に少ない
- 福岡は、現在まで生産年齢人口が増加を続け、オフィス市場を支える人口の増加がみられる
- アジアとの近接性や九州新幹線開業に伴う福岡の拠点性の高まり、九州エリアの製造業集積、福岡空港の利便性の高さなど、オフィス市場が成長する多くの可能性がある
を挙げている。一方で、生産年齢人口が減少に転ずるため、要因の一つとなって2014年から2015年にかけてわずかな賃料下落となると見ている。
同レポートの将来予測は、若干ポジティブな見方となっているが、同レポートも指摘する足元での福岡オフィス市況回復の遅れは、直近の地価動向に反映されている。福岡都心部商業地の地価動向を、9月21日発表された2011年7月1日価格時点の福岡県地価調査基準地価格で見ると、JR博多駅周辺の3地点と、外資系衣料品店の進出が相次ぐ天神西通りの1地点で地価が上昇した。
地価上昇をもたらしたのは、博多駅周辺では九州新幹線並びに巨大商業施設「JR博多シティ」の両開業と「JR博多シティ」のその後の売上の好調さで、天神西通りは、2012年のH&M、フォーエバー21など外資の大手衣料品店の相次ぐ出店等だ。しかし、その回復の遅れからオフィス市況は、これら上昇地点の地価上昇要因となっていない。
足元で世界同時不況の暗雲が漂うなか、オフィス市況の行方も視界不良となってきた。福岡都心部の地価を左右する主要要因の一つとして、今後の展開が注視される。
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