不動産鑑定士188人に聞いた足元の体感地価
日経ヴェリタスが「大都市地価夜明け前」~有力鑑定士188人が語る変化の兆し~という特集を掲載している。日経ヴェリタスが三友システムアプレイザルと共同で全国188人の不動産鑑定士に全国的に「体感地価」を聞いたというものだ。「体感地価」という表現は、「世情の風次第で刻々と姿を変える変幻自在の生き物」のようで、臨場感溢れる上手いキャッチフレーズだ。
ところで不動産鑑定士が全国的規模で地価を調査する公的評価として「地価公示」や「地価調査」があるのだが、足元の地価に調査時期が近いのは7月1日時点の地価を公表する地価調査基準地価格だ。今回の基準地価格では、住宅地、商業地ともに下落幅が縮小した。大都市の住宅地の地価は下げ止まりつつあるのに比べ、商業地の底入れはなお時間がかかりそうだという結果になった。
今年で3回目になる体感地価でも総じて明るさを示すデータが増えている。以下、日経ヴェリタスの記事に沿って紹介する。
住宅地の価格動向について「やや上昇」または「横ばい」と答えた人は33%に達し、昨年の6%を大きく上回った。3大都市圏に限ると50%を超えており、底入れが鮮明になっている。一方、商業地は「やや下降」または「下降」が8割を越え、厳しい見方が多い。ただ東京圏の先行きは「やや上昇」または「横ばい」が53%に達した。東京圏にはアジアや国内富裕層のお金が流れ込み、5億~10億円規模の物件は品薄感が強いという声もある。
商業地は都市間、地域間格差が大きい。東京23区でいうと六本木で外資系弁護士事務所やヘッジファンドの入居が増えているが、表参道の人気が低下するなど地域間でまだら模様だ。地方都市ではゲゲゲの女房で有名になった境港市は観光客が増えて地価が横ばいというのもあるが、総じて需要が低調で下落している。
住宅の買い時については、「1年以内」(「今すぐ」「半年以内も含む」)との回答が51%で昨年の42%を上回った。しかし、購入自体に慎重な鑑定士も少なくない。「購入しない方がよい」という回答はマンションで18%、戸建で10%と昨年よりも増加している。特に人口減少が進む地方都市のマンションでは価値が上昇することはほとんどなく与信枠を広げることになり、いざという時の機動的な対応が難しくなる、という意見も聞かれる。
国内政治で代表選挙も終わり、円高には無為無策で遅いと酷評された菅氏が総理となった。早速、マーケットの意表をつく為替介入をやるなど、円高と株価下落の負のスパイライルが一息つき、「菅クンやるね」とちょっと見直した矢先、尖閣沖での中国漁船の衝突事件で国内経済の対中国依存リスクが異常に高まるなど、経済、政局共に波乱含みの秋となってしまった。
そんななか政策効果もあって回復基調の住宅地だが、贈与の非課税枠拡大は11年で切れ、非課税枠は通常の500万円枠から今年1,500万円に拡大したが、11年には1,000万円に縮小、金利優遇も来年度中に終わる。
首都圏のマンション価格は新規、中古共に上昇しており、雇用情勢や可処分所得の厳しさが当分の間は続きそうなユーザーの寒い懐事情で果たして政策効果も切れると次回の体感地価という生き物はどのように姿を変えるだろうか。
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