隣地や近くに空地がある不幸について

もし、住まいの隣地が空地だとしたら住んでる方の住宅地の価格にどのような影響があるだろうか。

例えば第1種低層住居専用地域のような建設される建物の高さやボリュームの制限がきつい場合と、建設予定建物の高さや容積率が比較的緩和されている用途地域では、将来、公法制限をMAXまで使って隣地に建設がなされた場合、日照阻害や建物が発する圧迫感等の度合いが違う。

高さや容積率、用途制限が緩和された用途地域であるほど、この観点からの将来に発生するリスクは高い訳だ。一方、すでに隣地に取り壊し更地化されるまで相当期間があるような建物がある場合、その居住者も含めた所与の建物状態で買主はさまざまな角度から受ける影響を考慮し、購入価格の値決めや購入判断をできる。

隣地が空地である住宅地は、「将来、どのような建物が建つかわからない」というリスクがある分の価格低下が考えられる。このような不確定要因による価格低下分を具体的に計量するのは難しいが…。

また隣地に限らず空地が近くにある場合、放置され雑草が生い茂るなど管理されていないなら、いわゆる「迷惑空地」となって隣地や近所に被害をもたらす。迷惑空地は雑草などが視界を遮るため犯罪の温床になったり、ゴミが不法投棄されたり、タバコのポイ捨てで火災が発生したり、隣近所に害虫が飛来したりと実に困った存在になっている。

行政が迷惑空地の苦情を住民から聞いて所有者を登記簿などで調べ、所有者へ電話や手紙で知らせて改善を要請するというのが一般的だが、なかには登記上の住所が現住所に変更されず、解らなかったり、所有者が死亡し、相続登記がなされてないなどで連絡ができないケースもある。

このような迷惑空地は全国的広がっており、特に郊外で目立つそうだ。とはいえ住宅の周りが農地や未利用地ばかりの田舎では「迷惑」になりようがないので、郊外でも住宅地と呼べるほどの住宅の集積があるエリアに限られるのだろう。

国土交通省によると、全国の宅地の空き地面積は約13万ヘクタールあり、5年間で約6,000ヘクタール増加した。空き地が増える一因は所有者の高齢化だ。空き地への苦情が毎年30~40件舞い込むという東京都板橋区の担当者が所有者について調べたところ、高齢で、遠方にある子どもの家や介護施設に移り、更地のまま放置している土地が多い。子世帯が相続したものの所有意識が乏しかったり、権利関係が複雑になったりして管理されなくなる土地もある。

かつての高度経済成長で都市が人口膨張し、郊外へ住まいが拡散していった時代が続いていれば空地に買い手がつき放置されることも少なく土地利用されただろう。この時代には地方都市の郊外でも需要が多い地域では商売熱心な不動産業者が空地をチェックし、所有者へ売却の意向を尋ねたりもしたものだ。いまは人口減少・少子高齢化、低経済成長時代になったので「将来、家を建てるために買った土地」や「投機目的で買った土地」がそのまま個人の「不良資産」として所期の目的を遂げることなく周りから疎まれて放置されているわけだ。

有効な改善策が見つからない現状に踏み込んだ対策を講じたのは三重県名張市だ。

「名張市あき地の雑草等の除去に関する条例」を改正し、08年4月から行政代執行による強制除草をできるようにした。毎年6月、空き地の所有者に適正管理を促すはがきを発送。複数回にわたって勧告や命令をしても改善されない場合、所有者の住所や氏名を公表し、市が強制的に除草する。代執行の導入には異論が残る。草刈り費用を土地所有者が払えない場合、自治体が負担を背負うことになるという声や、私有財産である土地に行政が介入するのは望ましくないという意見だ。(日本経済新聞)

解決に住民が乗り出す例もある。日経同紙によると、

大阪府吹田市の特定非営利活動法人(NPO法人)「千里すまいを助けたい!」は住宅メーカーと空き地所有者をつなぎ、千里ニュータウンの空き地に新築の戸建て借家を建てる取り組みを始めた。「民間事業者は新たな賃貸住宅が建てられ、土地所有者には賃料が入る。地域は空き地問題が解決でき、新しい住人も見込める」と代表理事の片岡誠さん(53)は期待する。まだ建設に至った事例はないが、「長い目で続けたい」と語る。

時代の変遷や個人的事情などで「不良資産」となり、住宅地に放置されている「迷惑空地」だが、地域住民が地域のための施設や有効スペースとして所有者が提供しやすいように借地借家法などの制限を外して使用するなどの方策が考えられないものだろうか。

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