ビル、マンションの空室対策 / トランクルーム
■トランクルームとは
ビルやマンションの空室対策や遊休地対策として近年、注目されているのがトランクルームである。トランクルームとは、法人、個人の普段使わない家財道具、書籍、衣類、楽器、企業の事務機器、書類などを収納するための貸し倉庫である。
最近は個人向けの需要が増えている。もともと転勤者らの家財道具を一定期間預かるイメージの強いサービスだが、多くなってきたのは利用者自らが足を運び、荷物を出し入れする都心の小型ルームで押し入れや物置代わりという利用だ。
■急増する背景
都心マンションの場合、限られた収納スペースで収まりきれない家財道具に加え、高級マウンテンバイクなど普通のマンションでは収容できない品物とか、海外赴任となったので家財道具一式を個人がレンタル収納スペースに預けるケースなどが増えているという。法人が利用する場合は、小人数で経営するリフォーム業者とか塗装業者が資材を預けることが多いらしい。
家族構成の変化や子供の成長でファミリーの家財道具等は当然ながら増加する。高度経済成長時代は住宅スゴロクで、アパート→分譲マンション→戸建といったプロセスで居住スペースをより広くしてきた。しかし、デフレ経済下で雇用・賃金の先行き不安感が増幅されるなか、多額のローンを借りて次の拡大プロセスへ移行することや多額の支出を伴う引っ越しを回避する傾向が高まっている。それよりトランクルームを利用して手軽に居住スペースを実質的に広げる方がコストも比較的かからないというわけだ。
日本経済新聞によると、
エリアリンクの場合、0.5畳・高さ約2メートルのスペースの月間賃料は6,500円。小田急は1畳分で月9,450円で「スキー板やゴルフバッグなどを入れている」。家の外に物置や押し入れを借りたと考えれば、引っ越しよりも低コストで荷物を整理できる。不動産コンサルタントの岡本郁雄氏は「ライフステージのどこかでマンションは手狭になる。都心にこうした設備ができたことが、家を広く使いたい人を動かした」とみる。都心でオフィスビルの空室率が上昇し、ビルオーナーが有効活用を迫られたことも小型ルームが増える下地になった。
■事業モデル
トランクルームの経営は、自分で行なう自営型と、専門業者への業務委託型の2種類がある。サービス形態として①ケース・箱単位で保管、②ルーム・コンテナ単位での保管があるが、温度、防塵、防湿などの管理をはじめ管理人の常駐、定期点検とか警備会社による24時間体制などセキュリティ対策の面でその品質にバラツキがあるようだ。施設形態としては倉庫施設で提供されたり、テナントビルやマンションの1室を改装してトランクルームとしたり、敷地内にコンテナを積み上げているものなどがある。事業形態として見ると次の2通りがある。
- 倉庫業法による国土交通大臣の登録を受けた倉庫業者が、寄託契約で利用者の物品を一定期間預かり保管する倉庫施設しての形態
- 倉庫業者以外が賃貸借契約により物品を収納するスペースを提供する形態
上記1の倉庫業者が寄託契約で物品を預かる場合は、預かった物品について保管責任があるが、賃貸借契約で物品収納スペースを提供する場合は、賃貸借でスペースを提供しているだけなので保管責任が一般に発生しないとされている。
オーナーの空室対策としてテナントビルやマンションの1室を改装してトランクルーム事業を行うケースも増えているが、運送会社の配送センターや地下駐車場など屋内の空きスペースを利用して施設を設けるケースも出てきている。
日経産業新聞によると、
トランクルームを手掛ける押入れ産業(東京・港、黒川久社長)は5月、コンテナに保管する収納サービスに乗り出す。運送会社の配送センターや地下駐車場など屋内の空きスペースを利用して店舗を設ける。屋内でのコンテナ収納は珍しい。都市部で収納の小さいマンションに住む人が増えており、初年度は首都圏を中心に20拠点の開業を目指す。今回始める「コンテナデポ」はコンテナを月決めで借りるレンタル収納スペース。利用者はコンテナの鍵を貸与され、自分で荷物の出し入れをする。縦、横、高さが各2メートルの標準タイプの賃料は月1万5,000円前後。営業時間は朝8時~夜8時になる見通し。住宅地付近に拠点を設けて、本や衣類など生活用品を預ける家族客の利用を見込む。
■建築確認が必要なケースも
注意すべきは、敷地内にコンテナを積み上げてトランクルームとしている形態をよく見るが、平成16年12月6日付国住指第2174号「コンテナを利用した建築物の取扱いについて(技術的助言)」により、コンテナを倉庫として設置し、随時かつ任意に移動できない場合は、建築基準法第2条第1項に規定する建築物に該当するので建築確認が必要となる。倉庫に限らず、その他の用途(例えばカラオケルーム)に使用する場合も同様である。また第1種住居専用地域など倉庫建築が認められないといった用途規制も留意しなければならない。
■今後の展望
トランクルーム事業は、最近になってやや業績の増勢が鈍ったとはいえ、日経MJによると、
トランクルームの売上高は5.2%伸びた。ビルの空室にテナント入居する施設が好調だった。都市部のマンション住人を中心に個人需要が拡大。オフィスビルの空室率上昇を好機とみて拠点数を増やす企業もある。またトランクルームの施設数は、今後も増加傾向とみられる。向こう3年間の拠点数を聞いたところ、首位が「現状維持」(57.9%)。次が「増加させる」(23.7%)で、「減少させる」と答えた企業は無かった。
今後の事業展開としては、施設の増加が予想され、益々競争が激化するので、利用料金の低廉化と保管環境の品質やセキュリティ対策が問われるだろう。施設設置エリアとしては、住宅の都心回帰が加速しており、都心マンション居住者が増加しているが、マンションの手狭なスペースに起因して需要が発生するため、利用者自らが足を運び、荷物を出し入れするための利便性から、居住エリアである都心部やその近辺が望ましい。しかし、トランクルーム提供者が自ら預かり物を利用者宅まで取りに行ったり、宅配するというサービス形態も検討されており、今後の事業展開如何でその好適立地が広がる可能性も考えられる。
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