環境住宅の次世代技術HEMSとは

家庭からCO2排出量を低減して環境負荷を小さくすることを目的とした環境住宅の開発が今後、住宅各社が熾烈な競争を勝ち抜くための必要条件となっているが、今回のコラムでは次世代エコ住宅の環境技術として、住宅各社の開発競争が加速している「HEMS」を取り上げる。

環境住宅は、環境技術により次の3つに分類される。

  1. 創エネルギー技術(クリーンなエネルギーを作る技術):太陽光発電
  2. 省エネルギー技術(エネルギー使用量を減らす技術):高効率給湯器、LED照明
  3. 効エネルギー技術(エネルギーを効率よく供給する技術):HEMS、蓄電池

すでに1の太陽光発電や、エネファーム(燃料電池)で電力を創出したりする住宅とか、2の高効率給湯器、LED照明でエネルギー使用量を減らす住宅は、実用化さらには普及の一途を辿っている。 そんななかでいま各社の担当者が開発研究に力を入れているのは、3の効エネルギー技術を使った住宅で、その中核となるのがホーム・エネルギー・マネジメント・システム(HEMS)だ。

HEMSにより1、2の環境技術が個別にバラバラで機能している現状から、個々の環境技術をIT技術でネットワーク化して発電量や、水・電気・ガスなどの使用量、CO2の排出量をモニターなどでビジュアルに明示し、自動制御することで居住者の省エネ意識を高めてエネルギー消費を低減することが可能になる。もう少し詳しく説明するとHEMSはモニターでエネルギーの使用料や機器の動作をモニタリングする機能とエアコンや照明等を遠隔制御して人数に応じて自動的にエアコンの冷房温度を上げたり,室内の人を感知して照明をON・OFFしたりする制御機能がある。

HEMSのモニタリング機能の威力を実証したのが、新日本石油が横浜市で2008年6月に「創エネ」の開発・実証実験を行う目的で立ち上げたモデル住宅「創エネハウス」だ。同社の「創エネハウス」は、高断熱・高気密性能に加え、太陽熱利用や空気循環等による空調負荷の低減を図り、家庭用燃料電池システム「エネファーム」、太陽光発電システム、蓄電池システム等の最先端のエネルギー機器を設置。さらに注目すべきは究極のエコカー「電気自動車」の充電器も設置して、家と車が連携した低炭素住宅を実現したことだ。そしてNECの協力を得てHEMSを導入。液晶モニター付きの操作・表示パネルがダイニングキッチンに設置された。モニターには太陽光による発電量や、複数の家電機器・給湯機器のエネルギー使用量、CO2の排出量、各部屋と屋外の温度などのデータがリアルタイムで表示される。住人はエネルギー使用量などを表示するモニターをみながらエアコンや照明の使い方を工夫すれば、CO2排出量を実質ゼロに抑え、光熱費も大幅に削減できる。

NECのWebサイトによると、NECが今回開発したHEMSは、単なるモニタリング機能だけでなく、エネルギー負荷の大きいガスや灯油を使用する機器の運転制御が可能で、自然エネルギー機器や一部の家電品までをもネットワーク化して省エネ効果を最大化できる。

そしてHEMSの威力だがSankei Bizによると、

創エネハウスではこれまでに、社員の2つの家族がそれぞれ2週間実際に暮らした。最初の家族はエネルギー使用に伴うCO2排出量が普段の30%減にとどまったのに対し、2番目の家族は70%以上も削減できた。その差が生じたのは、HEMSを見る回数の違いだった。70%以上削減した家族は母親だけでなく、娘もHEMSに注目して無駄をなくすようになっていた。宇田川博文ホームエネルギー部長は「多くの家庭では省エネを意識していても、実際に行動に結びついていない。HEMSの省エネ効果は高い」と指摘する。今後、太陽光発電や家庭用燃料電池などをどのように組み合わせれば、費用対効果の高いシステムができるかを研究し、来年度中にもHEMS販売を始める予定だ。宇田川部長は「HEMSは省エネに不可欠な存在として、新築住宅に標準装備となるなど、5年以内には普及期を迎える」と予測する。

HEMSは、これから普及を迎える新しい技術なので現状でコスト面の課題があるが、次世代環境住宅の中核技術であるため、住宅関連企業をはじめエレクトロニクスやエネルギー関連企業が相次ぎこの分野に参入しており、次世代環境住宅のスタンダードモデルとなるのは近いだろう。

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