市場関係者のオフィスビル市況予測

日経不動産マーケット情報が市場関係者の東京都心オフィスビル市況予測を掲載している。大規模ビル(基準階面積300坪以上)と中小規模ビルに分けて2010年~2012年の市況をしているのだが、大規模ビルは総じて稼働率が上昇に向かうという見方が多い。なかでも強気な予測がクレディ・スイス証券大谷洋司氏で、「2010年年初から大規模ビルの稼働率は回復に向かい、賃料の本格的な回復は2011年になる」としている。一方、ディックエンタープライズ増田富夫氏は、「市況の底打ちは2012年後半で、2010年は稼働率が緩やかに低下し、成約賃料が下落する。年末に向けて都心5区の空室率は10%に徐々に近づく」と厳しい予測だ。中小規模ビルは、大規模ビルに遅れて市況回復するという見方が多く、大規模ビルの予測の違いによって回復時期は異なるため、上昇、横ばい、下落にそれぞれ見方が分かれた。

2011年以降で注目すべきは2012年のオフィスビルの大量供給が予定されていることだ。この影響をどう見るかで予測が分かれる結果となっている。いずれ計画の延期や中止が増えるだろうし、臨海部や周辺の供給が多く都心部への影響は限定的とする見解と、延期や中止が増えても一定量の供給があり、また大量供給を吸収できるほどの需要はないので市場が戻るのは想定しづらいとする見方に分散している。

また、ジョーンズ ラング ラサールの東京オフィスマーケット市況を概観したレポート「2009年概観と2010年見通し」では、東京Aグレードオフィスの賃料が底を打つのは2010年で、賃料レベルは2004年の底に比べ10~20%程度高いと予測する。

日本のマーケット規模は大きく、テナント属性も多様であるため、海外投資家の投資意欲は強く、彼らは常に投資機会をうかがっているし、一部ビルの賃料水準は、2003~2004年頃の水準に達しており、割安感が出ている。業績が比較的好調な一部の企業が拠点統合による業務効率化を目指し、この割安感から移転や増床へ動いてくるのではという期待も予測の背景にあるようだ。

国内景気を現状までの流れで見ると回復基調にあることは大方の異論がない。企業の賃料負担力を決定する企業業績も09年10~12月期の経常利益が3期続けて直前四半期に比べ拡大している。一方で、設備投資の回復は鈍く、オフィスワーカーの雇用を決定する完全失業率や有効求人倍率も低空飛行のままといったネガ要因もある。

マクロ経済指標がこのようにまだら模様なのでオフィスビルの今後の市況予測が難しいのである。例えば、ランダムウォークする株価の習性で1年以上先の日経平均を予測するのは徒労に終わることが経験上多い。

オフィス市況も収益還元価値に収斂する金融商品化が進み、国内政治やマクロ経済は基より、ボーダレスで国際情勢の影響下にもあるなど多くの変数が複雑に絡み合っており、予測不能なブラックスワンな出来事も制御不能で発生するので、株価と同様に予測がますます難しくなっているのである。

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