中国不動産バブル崩壊へ
中国国内の不動産価格は、09年春頃に下げ止まりを見せ始め、09年3月の主要70都市の不動産販売価格は前月比0.2%上昇、昨年7月以来、8ヶ月ぶりにプラスに転じた。さらにその後も月を追うごとに上昇幅が拡大した。朝日新聞デジタル2月12日記事では、
中国国家発展改革委員会が11日発表した1月の全国70都市の不動産価格指数は、全国平均が前年同月より9.5%上昇した。昨年6月、前年同月比でわずかにプラスに転じ、1年たたずに上昇率は10%に迫る。リゾート地の海南省三亜で3割近く値上がりするなど多くの都市で「バブル」が懸念される。
中国の不動産価格は「バブル」的な上昇が全国各地で続く。北京の1月の不動産価格は前年同月比10.2%の上昇。市当局が実施する土地使用権の入札でも、「地王」と呼ばれる過去最高額での落札が昨年から相次ぐ。中国を代表する観光地の一つ、西湖で知られる浙江省杭州市。1月の不動産価格は同12.7%上がった。
中国南端の海南島にある海南省三亜市は同29.2%の急上昇。投機的な資金が省外から集中し、市当局の担当者は今月、マンション購入を「1人5戸まで」に制限する方針を中国紙に示した。
中国国内の不動産価格は完全にバブルモードに突入している。不動産バブルの背景にあるのは、09年前半の急激な金融緩和や、人民元の対ドル相場を抑制するため実施しているドル買い元売りの為替介入により、国内に投機資金が拡大生産されているからだ。
80年代後半から90年代初頭に起きた日本のバブル生成・崩壊のプロセスをあらゆる角度から分析し、日銀、当時の大蔵省が犯した政策ミスを検証していると言われる中国政府は、当然ながら自国の状況に危機感を抱きバブル抑制策を打ち出した。国内景気が急回復して、12月に消費者物価が1.9%上昇するなどインフレ懸念が高まっており、経済の持続性を高めるため、巡航速度を安全運転モードへ落とすための必要措置でもあった。
昨年12月9日、中国本土当局は、購入した住宅を売却する際にかかる営業税の非課税期間を従来の保有2年以上から5年以上へ延長し、住宅価格の高騰を抑制させる措置を打ち出した。また中国政府は1月11日までに、投機的な住宅購入の抑制を指示する通知を全国に出した。2軒目の住宅購入について、頭金として初めに購入価格の40%以上を支払うことを義務付けるほか、銀行に金利を高めに設定するよう促すというものだ。さらに1月18日に1年7ヶ月ぶりに預金準備率を0.5ポイント引き上げ、大手銀行の預金準備率は16%となった。続いて2月12日に預金準備率をさらに0.5%引き上げた。相次ぐ預金準備率の引き上げは、1月最初の2週間で新規の銀行融資が1兆1,000億元伸びるなど金融緩和や為替介入によってオーバーフローした人民元が不動産や株へ向かうのを吸収、バブルを抑制する狙いがある。
一連の中国政府のバブル抑制策効果か経済の自然の摂理か解らないが、中国国内の不動産市場はすでに潮目の変化を迎えているという見方もある。ブルームバーグ2月12日によると、
中国の不動産と銀行についてプライベート・エクイティ(PE、未公開株)ファンドやヘッジファンドに助言を行うグローバル・ディストレスト・ソルーションズ(北京)の社長であるロドマン氏(63)は、北京の商業用不動産スペースの約半分は空室状態にあると推測する。これはドイツの5大オフィス市場で09年に貸し出された総面積を上回るという。
北京のオフィス空室率は09年7-9月(第3四半期)に22.4%に達し、米不動産ブローカー、CBREが調査対象としている世界の103市場の中で第9位だった。同集計には、総工費66億元(866億円)、74階建ての「チャイナワールドタワー3」など、オープン予定のビルは含まれていない。
中国の銀行が昨年実行した1兆4000億ドル(約126兆円)に上る新規融資で資金を得た企業が高層ビルを建設するなか、空きビルが目立ち始めている。米モルガン・スタンレーでアジア担当チーフエコノミストを務めた謝国忠(アンディ・シエ)氏やヘッジファンド、キニコス・アソシエーツの創業者ジム・チャノス氏も、中国では不動産バブルが発生しており、それは崩壊する恐れがあると警告している。
中国の09年10-12月期の実質GDPは前年比+10.7%と7-9月期の同9.1%から伸びが加速している。このような中国経済の急回復のなか投資家のなかには政府による不動産価格抑制や株式市場への引き締めが強まるのではないかといった懸念が強まっている。世界経済の牽引役の中国が今後、景気対策を失敗すると株や不動産市場の暴落を招き日本をはじめ世界経済に深刻な影響を与えることになるだろう。
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