3極リスクで株価も調整局面か
2010年の年明け後、日経平均株価は好調な滑り出しで上昇し、1月15日には11,000円にもう少しでタッチするとこまで押し上げられた。
市場関係者の中には出遅れ感が強い日本株の2010年のパーフォーマンスの高さを推奨する声もあるようだが、「日本株が主要工業国で最も上昇する」とする米投資ファンド、ブラックストーングループの著名ストラテジストのバイロン・ウィーン氏の「2010年10大びっくり予想」が現実味を帯びてきたかと思った矢さき、先週(1月25日~29日)の世界の株式相場は、主要20市場の全てで前週に続き下落し、日経平均も3.7%(392円)下落するなど軟調な展開となった。
日経平均のチャートの動きでは短期的に5日移動平均線に沿って下落しており、中長期では75日、100日移動平均線の節目が10,100円台に集中、ここを割り込むかが当面の株価の注目点である。
軟調な地合いの元凶は、株価の重しとなる3極リスクの浮上だ。
まず、米オバマ大統領が1月21日に発表した金融規制案。大手銀行の規模と事業活動を制限する新たな規制案で、預金を取り扱う商業銀行各行が自行の資金で投資する「自己勘定トレーディング」の禁止と、金融機関各社の規模と業務集中に対する新たな制限を求めるものだが、詳細はまだ明らかでない。当該規制で商業銀行はヘッジファンドやプライベート・エクイティ(PE、未公開株)投資会社の所有や、それらの会社への投資や助言が禁止される。その結果、ヘッジファンドが売却されてその保有する証券の価格が下落する懸念がある。また銀行が自己勘定でのハイリスク投資を制限することも盛り込まれ、銀行の収益力の低下も懸念されている。ただ紆余曲折して法案として成立してもかなり緩やかな規制に落ち着くという観測もある。
次のリスクは過剰流動性から不動産、株のバブルが懸念される中国の金融引き締めだ。中国人民銀行は、市場の余剰資金を吸収して過度の貸し出しの伸びを抑制する狙いで金融機関の預金準備率を18日から0.5%引き上げた。さらにインドが中国に続く預金準備率の予想を超える引き上げを行うなど、他の新興国でも金融引き締めが近いのではとの投資家の憶測を生んだ。金融引き締めは、日本の輸出関連企業にとって中国市場を失速させ、さらに円高から業績の下ブレを招く懸念がある。
3つ目がギリシャの財政危機に代表される欧州の財政不安だ。ギリシャの財政赤字は対GDP比で12%に上り、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場ではギリシャ国債の保証コストが高騰している。さらにEU内でアイルランド、スペインの財政問題に加え、欧銀行の不良債権問題も意識されている。
これら米・アジア・EUの3地域の3つのリスクが、世界的に投資家のリスク回避姿勢を強め、世界株価復調のシナリオに暗い影を落とした。
来週(2月初め)に相次ぐ米経済指標発表のなかで、注目の1月の米サプライマネジメント協会(ISM)景況感指数や、1月の米雇用統計の改善が確認できればドルを支える要因となるものの、ドル/円では世界的に投資家のリスク回避姿勢が強まりつつあることから、高金利の資源国通貨が売られ、円買い基調となって、対ドルでも円が強含み、円高から日本株の売りが膨らんで軟調となる展開も予想される。
これから国内主要企業の4~12月期決算発表が相次ぐが、業績改善が見られれば相場を支える要因とみられるものの、すでに業績改善期待がかなり株価に織り込まれており、3極リスクなど外部環境が悪いため、予想を相当程度上回る好決算が示されないと日経平均株価の1万円割れも視野に入ってくるのではないだろうか。昨年11月のようにTOPIXの100日移動平均線を株価が割り込むようだと中期的な調整局面に入る可能性もでてくる。
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