不況下の店舗出店にみる変化

長引く不況と個人消費の低迷で飲食、物販・小売業も商況が芳しくない。

日経記事によると上場小売業の09年6~8月期の連結経常利益は前年同期比21%減の2,087億円。3四半期連続で減益となった。業態別では百貨店の不振が目立ち、経常利益は42%減の83億円。スーパーは31%減の1,120億円、コンビニなどその他は1%減の884億円。

日本フードサービス業界によると外食業界の売上高(全店ベース)は9月は対前年比▲1.5%で4ヶ月連続で前年割れ。低価格商品が多く客単価も▲3.2%減った。流通二強のセブン&アイ・ホールディングスとイオンの09年8月中間決算は、イオンが140億円の赤字でセブンは黒字を確保したが大幅減益となった。このような経営環境の悪化で各業種とも店舗出店を抑制し、値下げで集客するのも限界が見え、店舗閉鎖などリストラも増えている。

各業態ごとに店舗閉鎖や新規店抑制を見てみよう。

セブン&アイ・ホールディングスは、初の赤字に転落したイトーヨーカ堂について、2012年度までの30店舗の閉鎖も検討。09~10年度の2年間で12店の閉鎖を決めており、その後も地方の中小型店を中心に、閉鎖店を検討する(東京新聞10.07)。イオンも年5~6店舗出す計画だった国内の大型店を10年2月以降は3店程度に減らす予定だ。昨年公表した店舗閉鎖計画については、店舗閉鎖を拡大すれば建物オーナーに対する違約金の発生や、売上減による運転資金の減少、メーカーからのリベートの減少につながりやすいので今後は完全な閉鎖でなく業態転換が主になる(日経10.23)。日本フランチャイズチェーン協会(JFA)が10月29日まとめた総店舗数は、外食・サービス産業の縮小で前年度比2.1%減少した。足元では店舗過剰と消費不振が進んでおり09年はさらに落ち込む可能性がある(日経10.30)。例えば、吉野家HDは過去最高の120店舗開く予定だったが既存店売上が5%減り、最終損益が赤字となるため、09年度出店計画を下方修正した。またリンガーハットも10年2月期、30店の新店計画を15店に下方修正した。

以上のように商況低迷による出店抑制が各業態で広範に拡大しているが、一方で昨年からの商業地の賃料下落は、郊外ロードサイドを中心に展開してきた大手紳士服や外食の大都市中心部への出店を加速させている。地価下落で賃料が大幅に安くなった都心部への出店で顧客層を広げ、消費低迷下での生き残りを図るためだ。日曜休日にお父さんが車で家族を連れて郊外店で紳士服を買ったり、ファミレスで食事するというビジネスモデルから脱却して、オフィス街のOLやサラリーマンが仕事帰りにショッピングや飲食するというニーズに対応し顧客層を拡大するためでもある。

毎日JPによると、はるやま商事は10月8日、東京・新宿「紳士服はるやま」新宿南口店をオープン。同社は、今後5年間で首都圏店舗を100店体制に倍増する計画である。業界2位のAOKIも5月オープンの銀座店に続き、23日には秋葉原店がオープンする。同社は今後7年間で東京都心に現在の10倍の60店を展開する予定。青山商事も、09年度中に1都3県の商業地域に15店舗を集中出店する。各社とも店舗面積は郊外店より小型化して、ビジネススーツなどに商品構成を絞り、閉店時間も仕事帰りに対応して遅くするなどの工夫がなされている。

一方、主要出店テナントが流出している郊外ロードサイドは、店舗の閉鎖・空洞化が目立っているが、節約型出店として注目されているのが、新興外食企業などが他テナントが撤退した店舗を原状回復しないでそのまま借りる「居抜き」だ。閉鎖店舗の急増を追い風に初期投資を抑えて出店できるので、居抜き需要が増えている。

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