民主党政権で不動産投資はどうなるの?

明治維新にも匹敵するといわれる民主党新政権の誕生。政権交代を選択し、リスクを取った国民だが、新政権は「未知との遭遇」であるため、投資家にこの先「経済はどうなるのか」さらには「不動産投資はどうなるの」といった不安がよぎるのは致し方ないのだろう。

前政権は、小泉竹中路線といわれる新自由主義、グローバリズムに立脚していた。つまり市場経済の効率性という立ち位置からグローバリゼ―ションを重視し、外需型のグローバル企業支援を進め、競争力強化で企業業績が伸びれば自ずと社会全体のパイが大きくなり、雇用者も応分の豊さを間接的に享受できるという考えだ。現実には、地方の疲弊や所得格差が進んだため前政権内でも「行き過ぎた市場原理主義」として方向転換を強調する側面もあったが、分配の基本的なシステムに変わりはない。

一方、民主党は、行き過ぎた規制緩和で大手企業だけが経済成長の恩恵を受け、従来の分配システムでは、非正規労働の増加や労働分配率の低下などで家計への分配が十分に行き渡らなかったとして「国民生活目線」という立ち位置から政策を打ち出す。「子育て支援」、「農業の戸別所得補償」、「高速道路無料化」などの諸政策は、直接に家計へ分配するものである。いわばセンターレフトと呼ばれる「中道左派」、「大きな政府」が色濃く出た政権である。そして政策の財源を「税金の無駄遣い」を排することで確保するというものだ。この結果、本予算の歳出で「八ツ場ダム」のような大型公共工事は休止され、マニフェストでは4年間で1兆3千億円公共工事を削減することになっている。他には「アニメの殿堂」などに象徴される今年度の補正予算見直しとか「霞が関埋蔵金」と呼ばれる特別会計の剰余金や積立金などが活用される。

新政権によるドラスティックな公共工事削減で大手ゼネコンをはじめ地元中小建設会社の収益源は相当部分が消えることは想像に難くない。反面、このような民主党の諸政策は長期的には、少子化対策となり、中期的には内需拡大に資する可能性もある。さらに2020年までに1990年比でCO2の25%削減する政策は産業界の負担を上手く乗り越えればエコカーや太陽光発電など日本の環境技術を中核として国際競争力を高める期待もできる。

例えば、日経9月19日記事の積水ハウスの太陽光発電システムを設置したアパートへの参入は、その結果生じた余剰電力を電力会社と入居者が直接買取契約して入居者の世帯光熱費が買い取り価格で減らせるというものだが、環境技術の進化で不動産投資の発想の転換が進む可能性もある。

ポジティブに思考すれば、家計の可処分所得が分配効果で増えると住居系投資物件入居者の賃料負担力が高まる。内需拡大で個人消費が堅調になれば商業店舗の売り上げは増える。環境関連など競争力が高まれば企業業績が伸び、オフィステナントの賃料負担力も高まるはずだ。

しかし新政権の政策の細部や力量が解らないので諸政策間の整合性や実現性、その実現プロセスで生じるかもしれない個別企業へのマイナスなど不確実性がつきまとう。例えば「日本でメガトレンドが始まろうとしている。ドイツ銀行で環境関連ビジネスを統括するカイオ・コフベーゼル氏は民主党政権の環境政策が、日本経済の構造改革を促すと期待する(日経ヴェリタス2009年9月20日号)」のような歓迎コメントがある反面、金融相の就任会見で中小企業や個人への債務返済猶予発言が出たが、翌17日の株式市場でメガバンクをはじめ地銀などの株価が下落し、銀行融資がタイトになるとして不動産株まで下落した。

また民主党の政策は消費者目線なので家計の購買力を高める円高を志向するという見方が多い。財務相が就任前から円高を是認しているとして円高による株価懸念も出ている。

いずれにせよ政権交代で壮大な実験がこれから始まろうとしている。リスクを取って選んだ国民に取って「実りの多い」政権になれば良いのだが…。

■関連記事
  民主党政権と建設、不動産、住宅業界
      

おすすめ記事