海外マネーが日本国内不動産投資に戻ってきた

海外投資マネーが日本国内の不動産投資へ戻ってきている。世界的な金融緩和策で発生した過剰流動性で投資資金が、株やコモディティ、不動産へ還流し始めた。昨年来の国内不動産価格の下落もそろそろ底打ち近しといった観測から海外投資家が日本不動産を買い時と判断している。

リスク選好を強める外国人の姿勢は、メリルリンチによる8月の世界ファンドマネジャー調査でも明らかだ。8月上旬の調査で「保有比率を高めている」から「下げている」を差し引いた値は「株式」が7%から34%、「商品」が8%から12%、「不動産」がマイナス24%からマイナス15%にそれぞれ改善。「現金」は9%から3%、「債券」がマイナス12%からマイナス28%に下がった。メリルリンチ日本証券の菊地正俊チーフ株式ストラテジストは「世界経済の回復見通しが出始め、世界の投資家はリスク資産の比率を高めようとしている」と指摘する。(日経ヴェリタスマーケットオンライン09.08.27)

住信基礎研究所による「不動産私募ファンドに関する実態調査2009年7月」では、ファンドの出資者であるエクイティ投資家の投資意欲が09年1月調査の2%から調査時点7月で20%に高まっている。また不動産投資に前向きな回答が合計で37%を占めるなど投資機会を模索している状況がうかがえる結果となった。因みに同調査ではキャップレートの上げ止まりについては「2009年7月~12月」とする回答が多く、賃料の底については「2010年1月~6月」が多く、キャップレートの上げ止まり時期より遅れて賃料の下げ止まり時期がくるとした回答が過半を占めた。

具体例を挙げると、大手運用会社のケネディクスは総額1000億円規模で新ファンドの設立に着手し、セキュアード・キャピタル・ジャパンは8月、海外投資家から約510億円の出資金を集め終わった。借入金を加えたファンド総額は1400億円程度となる見通しで、今後は新規投資を本格的に再開する。不動産担保付きの不良債権への需要も多く、今後1~2ヶ月で200億円弱の出資金を追加で集める。

このタイミングにきて海外投資マネーが日本不動産投資へ舵を切ったというか、昨年から投資のタイミング(=価格の底)を狙っていた海外ファンド等が少なくなかった。また調達するローンの手当てが難しい環境が続いていたが、金融危機が後退し、金融機関による選別が依然として厳しいものの幾分かは緩やかになったのかもしれない。

出遅れ感がある日本株やJ-REITの外国人投資家の買いが4月以降目立ち始めたが、外国人投資家のシェアが足元で株やJ-REITの売買高全体の50%超を占めており、東証が8月14日公表した投資主体別売買動向では、外国人は7月にREITを128億円買い越した。買い越しは4ヶ月連続となり、月を追って額も増えている。

海外投資家が日本国内不動産投資に戻ってきた背景には、世界経済の回復期待が高まり、世界同時株価反騰で、海外投資家がリスク資産比率を高めようという動きからだが、不動産市況が本格的に回復してくるのは2010年以降になるという見方が多い。足元では賃料下落や空室率の増加など収益物件のファンダメンタルズに改善の兆しもない。オフィス市況はさらに1年ぐらい遅れるのではないか。

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