ARESによる機関投資家の不動産投資アンケート調査
ARES(社団法人不動産証券化協会)の第9回「機関投資家の不動産投資に関するアンケート調査」が平成21年5月20日~6月24日に行われた。その集計結果のいくつかを紹介しよう。調査対象は年金、生保、損保、信託銀行、地方銀行等の機関投資家である。
- 不動産投資を行う投資家の割合が2年連続で減少
- 運用資産の資産配分で不動産の割合
- 投資目的
- 投資を検討する際に重視する項目
- プロパティタイプ
- 投資期間
- 不動産投資のための課題
昨年度との比較で年金が35%→31%、一般機関投資家は90%→81%にいずれも2年連続で減少した。サブプライム、リーマンショックと続き世界的リスク資産回避の動きから不動産投資は当然ながら低調になっているが、集計結果にも表れている。
年金は昨年度に引き続き減少した。政策的(目標)資産配分は1.0%(昨年度1.4%)、現在(実際)の資産配分において1.2%(昨年度1.3%)と低い水準の中でさらに減少。政策的(目標)資産配分についてはかねてから指摘されていることだが、カルパースなど米国の年金が不動産投資の割合が比較的高いのに比べ、日本の場合、投資割合は低くJREITなど不動産投資市場拡大や安定的市場成長のネックになっていることが解る。
「ポートフォリオのリスク分散」、「収益率の向上」、「安定的キャッシュフローの獲得」の比率が高い。年金は特に「ポートフォリオのリスク分散」を重視し、長期安定運用を目的として収益性よりリスク分散を重視している。
「収益の安定性」、「保有不動産の質」、「運用会社の実績及び能力」が上位を占める。特に年金のリート投資では「運用会社の実績及び能力」の重要度が高い。
年金で「オフィス」と「商業施設」の割合が昨年度より減少、「賃貸住宅」の比率が増加。景気の影響を受けやすいオフィスや商業施設から賃料収入が景気に左右されにくい賃貸住宅にシフトしている。一般機関投資家は依然としてオフィスを中心とした投資である。
年金は従来通り3年以上の中長期運用を想定。一般機関投資家はやや短期運用になる。JREIT、海外リートで1年未満とする一般機関投資家が今回の調査で現われている。JREITの株価の暴落で値ごろ感がでた銘柄などの短期的キャピタル狙いと推測される。
年金、一般機関投資家とも2年連続で「不動産評価の信頼性の向上」が1位となった。不動産価格が下落し、今後の市場も不透明なため、不動産評価に対する強い関心がうかがえる。他には「市場規模拡大」、「個別の不動産情報開示の向上」などがある。
金融商品取引法の施行で不動産私募ファンドの淘汰・浄化が進み、JREIT投資でも官民共同ファンドなど政府の資金支援策や投資法人の再編統合など市場の構造的問題が解消されていく方向にあるのでベンチマークとなるインデックスなどが整備されていけば機関投資家の投資拡大の方向性も期待できるのではないだろうか。
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